はぐれないように
《サイド:深海優奈》
もうすぐ午後7時ですね。
私は悠理ちゃんと一緒に食堂に訪れました。
さすがにこの時間帯は食堂の周辺にも沢山の生徒が集まっていて、とても混雑しています。
「毎日思うけど、とんでもない人込みよね~。どこに行くか決めないと前に進めないかなぁ?」
そうですね。
食堂の中で考えたいと思っても、
人が多すぎて考える余裕はなさそうです。
「う~ん。優奈は何がいい?」
「私は何でも良いよ。悠理ちゃんと同じので良いから。」
「そう?まあ、私も特に決めてないんだけどね~。」
どうしようかなって呟きながら、
悠理ちゃんはキョロキョロと周りの人達が食べている物に視線を向けていました。
「何がいいかな〜?」
周囲を見渡しながら食堂を進んで行く悠理ちゃんですが。
私ははぐれないように追い掛けるだけで精一杯で考える暇なんてありません。
もしもこれだけ混雑している状況ではぐれてしまったら合流する方が大変だからです。
「優奈、大丈夫?」
「…う、うん…っ。」
はぐれないようにそっと手を握ってくれる悠理ちゃんの優しさだけで私は十分幸せでした。
「ありがとう。」
「あはは…。お礼なんていいよ。」
照れくさそうに微笑む悠理ちゃんと手をつないだまましばらく食堂内を進んでいくと。
突然、悠理ちゃんが足を止めました。
「ねえ、優奈。あれ良くない?」
悠理ちゃんの視線の先にあるのは、
まだカットされていない円盤のままのピザです。
「どうせ同じのを頼むなら、あれで丁度良くない?」
「うん。私は良いよ。」
「おっけ~!じゃあ、あれで決定ね。」
目的の売店に近付いてから、
悠理ちゃんがピザを注文してくれました。
「これくださ~い!」
「はいはい。これでいい?」
「お願いします。」
「はい。どーぞー。」
売店のおばさんがピザを差し出してくれました。
焼き立てのピザを受け取る悠理ちゃん。
お金は二人で半分ずつ出し合って、
具材とチーズたっぷりの大きいサイズのピザを一枚購入しました。
「ねえ、悠理ちゃん。熱くない?大丈夫?」
「ん~まあ、大丈夫かな?でも、冷める前に食べたいよね。」
「うん。」
売店を離れてからすぐに空いている席を探しました。
「あ、優奈!ここ空いてるわよ。」
空席を見つけてすかさず席につく悠理ちゃんの向かい側の席に私は座りました。
「それじゃあ、いただきま~す!」
「いただきます。」
嬉しそうな笑顔でピザに手を伸ばす悠理ちゃんと二人で、
仲良く半分ずつ分け合うことにしたんです。




