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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
409/1318

趣味に合わない

結局ね。



私は何もしないまま、

お昼過ぎから夕方までず〜っと実験室にいたわけだけど。


今回の総魔の実験は色々と検証が難しいみたいで、

いつものようにさくさくとは進まなかったわ。



たぶん、調べることが多すぎるんでしょうね。



どんな魔術でも作り出せるということは、

ありとあらゆる実験を行うということでもあるからよ。



数百、数千の魔術の全てを実験して検証していくとすれば、

それはとにかく時間のかかる作業でしょうね。



既存の魔術の全てを発動させて効力を測定。


次に総魔の独自の理論で作り上げた魔術の効力を測定。


その両方を比較して二つの魔術の違いを調べあげる。



そんな単純な作業の繰り返しだけで、

あっという間に時間が過ぎて行ったわ。



私としてはこんな回りくどいことをせずに、

ささっと総魔の魔術を調べてどんなことが出来るのかを実験した方が早いと思うんだけど。


それだけだと『構呪』の実証は出来ないみたい。



それが既存の魔術なのか?


総魔の魔術なのか?


両者の違いが分からないと意味がないらしいわ。



まあ、実際の能力がどうと言うよりも、

構呪という能力が実証出来るかどうかというところが重要だったみたいだけどね。



だけどもしも本当に実在するのなら。


総魔は本当の意味で最強の魔術師になれるのかもしれないわ。



『理論』も『定義』も『詠唱』さえもいらない。



ただ自分の思う魔術を自由自在に操ることが出来る。


そんな『最強の魔術師』になれるかも知れないからよ。



…でもね~。



終りが見えない作業。


延々と繰り返されるだけの実験は大変だと思うわ。



総魔は魔術を発動させるだけだけど。


観測された記録を分析する側は大変なのよ。



黒柳所長や西園寺さん。


藤沢さんや峰山さんや大宮さん。


その他大勢の観測班や分析班の職員の人達が集結して。


総勢50名を越える数を揃えて総魔の分析を行っていたのよ。



それだけの人数を集めていたのにね。


それでも全然総魔の分析が追い付かなくて、

何度も何度も実験を中断していたわ。



私にとっては単純に退屈な時間だったけれど。


所長達にしてみれば戦場だったかもしれないわね。



そんなふうに思えるぐらい大騒ぎだったのよ。


実験室の各地であ~だこ~だと議論し合う所長達は冗談抜きで大変そうだったわ。



次々と積み重ねられていく膨大な実験記録の書類の山が、

総魔に使える魔術の数と比例して分刻みで増えていくのよ?



あれはもう、一種の拷問よね。



一体何百種類の魔術が使えるの?って驚くくらいの書類の山なのよ。



今までは千の魔術が使える沙織もすごいと思っていたけど。


もしかしたら総魔はそれ以上かもね。



軽く数千に達してる?って思うくらいの実験記録が積み上げられていったのよ。



まあ、既存と構呪の二通りの魔術を展開してるから実際の魔術数は半分なんだろうけど。


それでもね。


沙織に匹敵する勢いだったと思うわ。



そのせいで膨大な実験資料の分析に思考が追い付かなくて、

数時間の間に力尽きて頭を抱える職員が続出していたのよ。



頭痛を訴えて実験を離れる職員の数はざっと見ても半数以上。


人数が減るほどに一人当たりの負担が増えていって、

午後6時を迎えるまでにはほとんどの職員が体調不良を訴えて強制的に実験室から運び出されていたの。



それでもまだ主要な職員は実験室に残っていて、

増え続ける実験記録を元に検証を続けている様子だったわ。



黒柳所長に西園寺さん。


藤沢さん、峰山さん、大宮さん。


そして僅か数名に減った残りの職員の人達。


もちろん総魔も実験室に残って検証に参加してるはずよ。



呆れるほど多くの魔術を連発させたにもかかわらず、

平然と会議に参加出来る総魔は素直にすごいと思うわ。



私なら確実に力尽きて倒れている自信があるのに、

総魔は表情一つ変えずに魔術を使い続けていたのよ。



一体、今の総魔の魔力の総量はどれくらいなのかな?



今日見た限りでは、全く底が見えなかったわ。



この数日の間に『総魔自身』も成長していたのかもしれないわね。



そう思えるほど総魔の実力は計り知れないと感じたのよ。



そして今でもまだ会議は続いてると思う。



だけど私は最後まで付き合うつもりはないから、

一足先に実験室をあとにしたの。



もちろん沙織と合流したいっていう気持ちもあったけれど。



それ以前に、あの場所に留まっても私には何の意味もないって感じたことが一番の理由になるわね。



総魔と二人きりになれないどころか、

総魔と話し合う時間さえないわけだし。



無駄だとは思わないけれど、

私が望む答えは出ないと思ったのよ。



だから実験室を出ることにしたの。



今の私が望む答え。


それはルーンを使えるようになること。



それが何よりも優先するべきことなのよ。



もちろん私だってただ意味もなく実験を眺めていた訳じゃないわ。



きっかけになるものがないかと考えてずっと総魔の様子を眺めていたの。



だけどね。



具体的な答えはでないまま時間だけが過ぎてしまったのよ。



…まあ、能力どうこう以前の問題で。



どんな形にしようか悩んでるだけなんだけどね。



剣や槍や弓。


それに杖や鞭や斧。


短剣に鎌に投擲(とうてき)



色々と考えてみたけれど。


どれもイマイチ趣味に合わないのよね~。



武器に限らずに淳弥のような防具的な形も考えてみたけれど。


どれも納得の行く想像が出来なかったわ。



手袋、帽子、腕輪、指輪、服。



どれだけ考えても『これ』っていう形が思い浮かばないのよ。



何か良い物がないかな~?って考えること、数時間。



それでも結局、何も決まらなかったわ。



だから私は今もルーンの形を考え続けてる途中なの。



何がいいのかな~?



なんて、考えている間にね。


不意に足音が聞こえてきたわ。



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