仮説へと至る理論
「今回の実験の目的は3つある」
「うむ。聞かせてもらおうか」
話を聞く体勢を整える黒柳に続いて、
西園寺を含めた何人かの職員が俺に視線を向けている。
隣にいる翔子も独り言を続けながら俺の話に耳を傾けているようだ。
それぞれの視線を感じつつ。
黒柳に視線を戻してから実験の説明を始めることにした。
「まず最初に、俺の潜在能力の確認がしたいと思う。」
「…ん?潜在能力だと?」
「まだ操作の実験が必要なの?」
眉をひそめる黒柳に続いて、
翔子も疑問を問いかけてきた。
首を傾げる二人を見れば一目でわかることだが、
どうやら根本的な勘違いをしているようだな。
まずはそこから説明するべきだろうか。
「先に言っておくが、俺の潜在能力は操作ではない。」
「…えっ!?」
「な…っ!?」
驚く二人に説明する為に原始の瞳をポケットから取り出す。
そして手の平の上で転がる水晶玉を見せる。
これまでと同様に光り輝く水晶玉を、だ。
「…水晶が光ってる?」
「まだ潜在能力があるのか!?」
戸惑う二人に水晶を見せながら話を続けていく。
「驚くことではない。そもそも俺の潜在能力はまだ明らかになっていないからな。操作という特性は以前からあったものだ。そう考えた方が正しいはずだ。」
「…そうか!」
前提を話しただけで、
黒柳はすぐに理解が追いついたらしい。
納得したかのように何度も頷いてくれていた。
「なるほどな。操作は潜在能力ではなくて元々あった能力ということか、それならば納得出来る。原始の瞳が示す『潜在能力』は別にあるということだな?」
「ああ、そうだ。そして俺はすでにその能力について仮説を立てている。」
「面白そうだな。聞かせてもらおうか。」
「俺の立てた仮説は『構呪』。魔術そのものを構築する能力だ」
「「「!?」」」
俺の話を聞いて、全員の表情が凍りついた。
だが真っ先に思考を立て直したのはやはり黒柳だった。
「聞かせてもらおうか。その仮説へと至る、きみの理論を…。」
「ああ。」
黒柳に問い掛けられて俺は説明を始めることにした。
構呪へとたどり着いたその理論を。
「操作という能力に気付いた時からずっと考えていたことがある。魔術や魔力を自在に操れるのなら、魔術そのものを作り出すことも出来るのではないか?とな。」
水晶をポケットにしまいながら説明を続けていく。
「そもそも吸収にしても、高速化にしても、本来ならば存在しない理論だ。俺は独自の理論を元にして実現しているが、その理論を誰かに伝えたところで成功するとは限らない。いや、むしろ使えないと考えるべきだろう。そうでなければすでに同様の理論や定義が存在しているはずだからな。」
「ああ、そうだな。」
俺の言葉を真剣に聞き続ける黒柳に、
さらなる説明を続けていく。
「存在しないという時点で、それらは他人には使えないと推測出来る。そう考えれば別の疑問が生まれてくる。つまり、俺の使う魔術は単純な操作の結果ではなく、魔術そのものを構築しているのではないか?という部分だ。」
「…なるほどな。」
俺の説明を聞き終えた黒柳が深く思考を始めた。
「なんとなくだが理解出来る。間違いなくきみは操作の能力を持っている。だが、それだけでは説明出来ない力があるのも事実だろう。つまりそれが魔術の構築というわけか」
ああ、そうだ。
現段階ではまだ仮説に過ぎないが、
その可能性を考えている。
「まずはその仮説が正しいのかどうか?という検証を行いたい。そして次に俺の特性が構呪であったとしたら、どれだけのことが出来るのか?それが第2の実験だ。そしてそれらが全て上手くいった場合にルーンの能力は何なのか?それが第3の実験になる。」
潜在能力の確認と能力そのものの確認。
最後にルーンの確認が出来れば、
その時にようやく俺は潜在能力に覚醒したといえるだろう。
だがもしもどこかで綻びが出たとしたら、
もう一度考え直さなければならない。
今は仮説でしかない潜在能力が本当は何なのか?
それを知る為に実験を行いたいと考えていた。




