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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
404/1330

3人の強敵

会議室に訪れたのは諜報部門の長野淳弥ながのあつやだ。



「よう!」



笑顔を浮かべながら近付いて来る淳弥だけど、

こうして会うのは久しぶりかもしれないね。



「御堂に沙織に里沙に桃花か。今日はまた一段と豪勢な会議だな」



気さくな態度で近づいてくる淳弥だけど。


すぐ側まで歩み寄ってきたところで、

真っ先に里沙が話しかけていた。



「あれ?どうしたのよ、淳弥。制服がボロボロだけど何かあったの?」


「ん?あー、これか?これはあれだ。試合でボロ負けした『証』ってところだな。」



…は?



淳弥が負けた?



これまで『勝率100%』を維持していた淳弥が敗北?



「本当なのかい?」


「ああ、嘘じゃない」



………。



淳弥は嘘じゃないと言ったけれど、

それでもすぐには信じられなかった。


これまで淳弥は勝てない試合なんて一度もしなかったからだ。



あ、いや、こういう言い方は違うかな?



戦いを避けてるとかそういう意味じゃなくて、

無理に勝とうとせずに力を隠しながら行動しているんだ。



だから淳弥は今まで一度も本気を見せたことがないし、

僕も淳弥の本当の実力を知らずにいる。



だけどね。


それでも淳弥はこれまで無敗を貫いてきたんだ。



自分から戦いを挑むことは少ないけれど。


挑まれた試合は全て勝利を収めている。



だからこそ僕や真哉に匹敵する実力者だと囁かれてもいた。



そんな人物なんだ。



どうして未だにサード・ステージに留まり続けているのかは僕も知らないけれど。


今まで一度もフォース・ステージに踏み込もうとはしなかった。



だから淳弥よりも強い生徒なんてサードにいるはずがないんだ。



それなのに。


淳弥が負けた?



それも彼の言葉を信じるなら『惨敗』と言うことになるはずだ。



「一体、誰と試合をしたんだ?」



詳細を知りたいと思った。


どうしても信じられなかったからだ。



だけど淳弥自身は負けたことを悔しがるどころか、

むしろ楽しそうな表情を見せている。



「ははっ。聞いて驚け」



微かに唇を歪めながら『相手の名前』を宣言した。



「美袋翔子だ。」


「「「「…っ!?」」」」



翔子の名前を聞いた瞬間。


みんなの驚きと共に。


緊張感が部屋中に広がっていった。



僕だけじゃない。


里沙も、桃花も。


沙織でさえも。


驚きを隠せずにいたんだ。



「…何があったんだ?」


「まあ、別に大したことじゃないけどな。翔子がサードに上がってきたって噂を聞いたから、ちょっと様子でも見ようかと思って会場に行ったんだが、予想以上に能力の覚醒に手こずっているように見えたからな。少しだけ力を貸してやることにしたんだ。」



翔子と戦ったというよりも、

翔子に協力してきたと淳弥は言った。



「…で、まぁ、力を貸した結果がこの有様なんだけどな。」



理由を告げて笑い出した淳弥は、

あまり試合の結果に関しては気にしていないように見える。


無敗記録が崩れたことさえ、

どうでもいいと考えてるんじゃないかな?



だけど僕は微かな不安を感じてしまったんだ。



淳弥は普段なかなか本気を見せないところがあるけれど。


決してボロボロになるような戦い方はしない男だと思ってる。



いや、言い換えるならボロボロになるようなヘマはしないと言うべきかな。



本当の実力を隠して表向きにはあまり強くない生徒を演じている淳弥だけど。


その実力は決してサードに留まるレベルではないはずなんだ。



真哉や沙織と戦ってもほぼ互角に戦える実力を持っていると僕は判断している。



その彼が惨敗というのは本人の口から聞いても信じ難い話だった。



「翔子の能力は分かったのかい?」


「ああ、一応な。」


「…何だったんだ?」



僕だけじゃなくて、

沙織も里沙も百花も、

静かに淳弥の言葉を待っている。



みんな気になるんだろうね。


僕達全員の視線を受ける淳弥が、

翔子の能力を教えてくれた。



「翔子の特性は『融合』だ。詳細まではわからないが、似たような能力は他にもあるからな。」



融合ゆうごう



あまり聞き慣れない言葉だね。


だけど沙織は何かを思い出したらしい。



「それなら聞いたことがあるわ。確か似たような能力が文献にあったはずよ。」



今度は聞き覚えがあると言った沙織に全員の視線が集まった。



「私の記憶が間違ってなければ、複数の魔術を掛け合わせる能力じゃなかったかしら?」



複数の魔術を掛け合わせる?



…それって、まさかっ!?



沙織が説明してくれた瞬間に、

僕は『とある力』を想像してしまったんだ。



「まさか、それは…っ!」


「…え、ええ。彼の得意とする力であり。かつて私達を苦しめた最強の魔術。それを翔子も使えるということよ。」



最強の魔術『アルテマ』



数十もの魔術を同時展開する究極の魔術だ。


その破壊力は込めた魔術の数に比例して威力が飛躍的に上昇する。



それこそ、掛け算のようにね。



…それほどの大魔術を翔子が使えるようになった!?



もしもそうなら。


淳弥がボロボロになるほどの攻撃を受けた理由が納得出来てしまう。



「淳弥。きみはあの魔術を?」


「ああ。全く同じかどうかは知らないが、俺もあの魔術を受けたのは確かだ。」



………。



疑う余地はなかった。


最強の魔術『アルテマ』を翔子が使えるようになっている。



その事実は驚愕に価するだろうね。



僕の特性である暴力と言えども、

あの魔術を破壊出来るかどうかは試して見なければ分からない。



だけどもしも破壊に失敗したら?


僕は翔子にさえ負けてしまうのかもしれない。



「翔子も覚醒したのか…。」



恐れるべき相手という意味では翔子も注目すべき相手だと思えた。



魔術を操作する天城総魔。


魔力を吸収する深海優奈。


最強の魔術を扱える美袋翔子。



どれも簡単に勝てる相手ではないと思うからだ。



だとすれば。


能力に覚醒した今でも僕はまだ力が足りないのかもしれない。



そんなふうに感じてしまう。



もっと強くならなければ…。


もっと自分自身を鍛えなければ…。



彼にはまだ、届かないのかもしれないね。



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