微妙な回答
「どうかしましたか?」
「…え?あ、ううん。何でもないの。ただ、ちょっとだけ仲が良いんだな~って思っただけよ。」
懸命にごまかしてみる。
上手くごまかせたかどうかはわからないけどね。
「そうですよ~!優奈は親友ですからっ!」
悠理ちゃんは優奈ちゃんと腕を組んでから嬉しそうに微笑んでくれたのよ。
力いっぱい宣言する悠理ちゃんの行動のせいで、
優奈ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤く染めているわね。
…うわぁ~。
照れる仕草がすっごく可愛いわね。
年下の女の子っていう基準で見ればもう完璧じゃない?
こうなると同世代と年下のどっちが好みなのか、
総魔に聞いてみたい気がするわね。
って、思うんだけど。
…でもまあ、怖くて聞けないわ。
もしも年下って言われたらそこでジ・エンドなのよ?
私の想いは木っ端微塵なの。
…そんなの嫌。
絶対に嫌!!
だから聞かないし、聞きたくもないわ。
本気でそう思うから総魔の気持ちを保留にして、
優奈ちゃんに訪ねてみることにしたの。
「ねえ、二人は好きな食べ物とかってあるの?」
当たり障りのない会話から情報を引き出すのよ。
それが私の特技っ!!
なんて思っていると、
悠理ちゃんから答えてくれたわ。
「好きな物っていうか、ネバネバしたものは苦手です。」
「納豆とか?」
「最悪ですね。あれはゴミです。」
…うん。
本気で嫌いみたい。
その思いだけはすっごく伝わってきたわ。
まあ、匂いがちょっと…とは、私も思うけどね。
味は悪くないのよ?
だけど、匂いは気になるわよね。
って、まあ、今は悠理ちゃんの好みは重要じゃないのよ。
私が知りたいのは優奈ちゃんのことなの。
「優奈ちゃんは?」
「わ、私ですか…?その…特に好き嫌いはないんですけど、お母さんの作ってくれるご飯が一番好きです。」
あ~。
なるほど。
そんな感じなのね。
素晴らしい回答だと思うわ。
文句の付け所がないからよ。
「優奈ちゃんのお母さんは料理が上手なのね。それじゃあ、優奈ちゃんも得意だったりするの?」
最も肝心な部分をさりげなく聞き出す!
この話術は龍馬や沙織にだって負けないわ!
「優奈ちゃんの手料理とか、期待できそうよね~。」
…なんてね。
遠まわしに褒めてみたら、
優奈ちゃんは控えめに答えてくれたわ。
「…どうでしょうか?お父さんとお母さんは褒めてくれますけど、お家以外で作ったことはないので自分ではわかりません。」
…う〜ん。
この返事は判断が難しいわね。
結構ね。
微妙な回答なのよ。
出来ることは出来るけど。
誰も知らないってことよね?
実際に食べてみないと分からないけど。
ご両親が甘い評価をしてるかもしれないし。
実際に美味しい料理が作れちゃってる可能性もあるのよね?
こうなると、さすがにこれ以上の情報を引き出すのは難しいわ。
実際に作ってもらわないことには評価できないからよ。
…だけどね。
お願いした結果として本当に美味しかったら、
私の行動は優奈ちゃんの評価を上げちゃうだけじゃない?
もしも総魔が食べて美味しいなんて言っちゃったりしたら、
私は家庭科室に閉じこもって3ヶ月は修行することになるでしょうね。
それこそ沙織に土下座してでも料理を極めてみせるわ。
…って、話がそれてるわね。
ひとまず聞き込みは出来たんだから。
重要なのは手に入れた情報をどう活用するかなのよ!
現時点で分かってることは優奈ちゃんは料理が得意かもしれないし、
そうじゃない可能性もある…かもしれないというほぼ願望に近いあいまいな情報だけね。
だけど、対する私は料理ができないという現実。
この状況から考えられる最善策は一つしかないわ。
さっさと料理を覚えるべきなのよ!
最低限、お弁当を作れる程度にはなっておく必要があると思うの。
難しい料理を覚える前にね。
簡単なことからできるようになる必要があるの。
…でもね~?
わかってはいるんだけどね~。
はぅぁぁぁぁぁ…。
考えるだけで憂鬱になれるわ。
わりと本気で苦手なのよ。
やったことがないからなんだけどね。
…はぁぁぁ。
面倒だけど。
沙織にお願いしてみようかな?
さすがに家に帰ってお母さんに教えてもらうとかは理由を聞かれそうで恥ずかしいから無理。
だからね。
とりあえずはあれよ。
成美ちゃんに食べさせてあげたいっていう口実で沙織に教わるのが一番無難でしょうね。
まあ、実際に成美ちゃんの喜ぶ顔も見たいし。
料理を勉強するいい機会かも知れないし。
とりあえず、今晩から勉強してみようかな~?
なんて、考えていたらね。
「優奈の手料理か~。私も食べてみたいな~」
悠理ちゃんが余計なことを言いだしたのよ。




