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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
391/1366

噂よりも

少し離れた場所にいる里沙先輩と百花先輩も様子を見守る中で。


私達に近づいてきた理事長さんが総魔さんに話し掛けていました。



「ひとまずはご苦労様、とでも言っておいたほうが良いかしら?」



笑顔で接する理事長さんですが、

純粋に総魔さんの勝利を喜んでいるわけではないと思います。



たぶんですけど。


総魔さんを戦力として見ているのではないでしょうか?



魔術大会で総魔さんの力が必要だと言っていましたので、

その確認が出来たことを喜んでいるように思えます。



実際にどうなのかは分かりませんし、

理事長さんがどんな方なのか私は何も知りませんけれど。


何となくそんな気がするんです。



総魔さんはどう考えているのでしょうか?


総魔さんの考えも、私には分かりません。



「ここで話し合うのは二度目だな。」



総魔さんは理事長さんと静かに向き合っていました。



「予想は出来るが、話があるのなら聞かせてもらう。」


「ふふっ。ありがとう。そう言ってもらえると話が早くて助かるわ。」



理事長さんは感謝の言葉を告げてから、

私達全員に『例の話』を始めました。



「天城君と御堂君にはすでに話を進めてあるんだけど、今週末の『魔術大会』にあなた達全員に参加してもらいたいのよ。」



『全員』と言ったあとで、

理事長さんは悠理ちゃんと向き合ってから話を付け加えました。



「…あ~、えっと…。あなたには関係のない話なんだけどね。近藤悠理さん。」


「…ですよね。」



やっぱり…と、呟いて肩を落とす悠理ちゃんでしたけど。


理事長さんは微笑みながら言葉を続けました。



「深海さんに関連して、あなたの成績も報告を受けているわよ。思ったよりも成長しているみたいね。」


「…え、えぇ…まぁ、はい…。」



話をしているはずなのに、

悠理ちゃんは理事長さんと視線を合わせようとしません。


意識的に視線をそらしているような、

そんな感じです。



なんとなく、気まずい雰囲気がします。



…もしかして。



理事長さんとは仲が悪いのでしょうか?



会話を聞いている感じだと知り合いのようにも思えるんですけど。


理事長さんと知り合いだったという話は今のところ聞いたことがありません。



理事長さんと悠理ちゃん。


二人の関係は分かりませんが、

理事長さんは少しだけ困っているような、

そんな感じに見えました。



「あ~…その~…ごめんね。別にあなたを責めてる訳じゃないのよ?ただ、噂で聞いていたよりも優秀な成績を出してるから、ちょっと驚いただけなの。」



…えっと?


…噂?



どういう意味でしょうか?



理事長さんは噂よりも優秀だから驚いたと言いました。



ですが、噂って何でしょうか?


悠理ちゃんにどんな噂があるのでしょうか?



悠理ちゃんの顔を覗き込んでみても答えは分かりません。


ですが少し辛そうな表情を浮かべているような気はします。



「…悠理ちゃん?」


「…だ、大丈夫。」



心配になって声をかけてみたのですが、

悠理ちゃんはぎこちない笑顔で微笑んでくれました。



「私は大丈夫だから…気にしないで…。」



無理に笑顔を浮かべる悠理ちゃんの表情は、

なんだか余計に辛そうに思えます。



何かあったのでしょうか?



私の知らないところで、

悠理ちゃんを苦しめるような何かがあるのでしょうか?



色々と考え込んでしまったのですが、

悠理ちゃんはずっと微笑み続けてくれています。



「私は大丈夫だよ。優奈」



何度も大丈夫だと言ってくれる悠理ちゃんですが、

無理に微笑む悠理ちゃんの表情が私の心を締め付けます。



どう考えても。


大丈夫には見えないからです。



無理をしているようにしか見えないんです。



「悠理ちゃん…?」



どう声をかければいいのかがわからなくて。


そっと悠理ちゃんの手を握ってみると。



「…あとで、話すね。」



悠理ちゃんもほんの少しだけ力を込めて、

私の手を握り返してくれました。



ですがそのあとはうつむいてしまって、

悠理ちゃんは一言もしゃべらなくなってしまいました。



「………。」



黙り込んでしまった悠理ちゃんを見ていた理事長さんも、

どうしていいか分からずに悩んでいるような表情です。



詳しい事情はわかりませんが、

わざと悠理ちゃんを追い詰めているわけではないみたいです。



「…ごめんなさいね。余計なことを言ったかしら?」



どう対応したら良いのか戸惑う様子の理事長さんですが、

私もどうすれば良いのかなんて分かりません。



…だからでしょうか?



話の流れを変えるために。


翔子先輩が理事長さんに話しかけてくれたんです。


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