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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
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雑な扱い

うつ伏せに倒れている北条先輩。


その背中に触れる総魔さんの手が微かな光を放っています。



回復魔術を使用しているようですね。



全身血まみれでボロボロとしか言えないほど大怪我をしていた北条先輩でしたけれど。


総魔さんの回復魔術によって全ての傷が綺麗に消え去っていきました。



本当にあっという間です。


たった数秒で治療を終えたみたいです。



その光景を見ているだけで、

総魔さんの凄さが分かります。



私には絶対に真似できません。


そしてきっと。


他の誰にも出来ないのではないでしょうか?



そんな気がします。



「もう…治療は終わりですか?」


「ああ、これ以上は必要ない。」



治療は終わったそうです。


ですが北条先輩が目覚める様子はありません。


怪我が治ってもすぐには目覚めないみたいです。



「意識は戻らないんですか?」


「出来なくはないが、北条は俺の手助けを必要としないだろうからな。俺が治療したという事実をわざわざ気づかせる必要はないだろう。」



ああ、なるほど。


性格の問題ということでしょうか?



私はまだ北条先輩のことを知りませんが、

そういう事情もあるんですね。



「それに強制的な覚醒は精神的な負担が否定できない。今までの経験上、どうしても目覚めてすぐの段階では多少の混乱状態が確認できているからな。沙織もそうだが、基本的には自然に目覚めるまで待つ方が後遺症を抑えられるはずだ。」



…後遺症。



ちょっと怖い言葉ですね。



だからでしょうか。



「ふ~ん。なるほどね~。」



翔子先輩は心当たりがあるみたいです。



「私も経験してるから分かるけど、何がどうなってるのか分からない感じだったかも。」



翔子先輩も経験があるんですね。



…そう言えば。



初めて翔子先輩と試合をしたあとに、

総魔さんが翔子先輩の治療をしていました。


その時のことは今でも覚えています。



始めての試合後に休憩所まで追いかけた時です。



その時に見た翔子先輩の様子は少し戸惑っているように思えました。



あれが後遺症の混乱状態だったのかもしれません。



「すぐに治まるとは言え、強制的な覚醒は一時的に記憶障害を起こす可能性があるからな。精神的な負担があると分かっている以上、無理に起こす必要はないだろう。」


「まあ、そうね。後遺症は否定できないわ。だけど…精神的な負担ね〜。反省っていう言葉を知らない馬鹿でもそういうのってあるのかしら?」



翔子先輩は北条先輩のほっぺをぺちぺちと叩いています。


そっとしておくという考えはないみたいですね。



「さっさと起きなさいよ~!」



北条先輩の耳元で叫んでいましたが、

それでも目を覚まさないようです。



「…う~ん、起きないわね~。」



翔子先輩がため息を吐いていると。


今まで様子を見ていた総魔さんが話し掛けました。



「おそらく、復帰したばかりで無理をしたために本来よりも精神に負担がかかっているのだろう。」



…ですよね。



以前の総魔さんとの試合後から今日までずっと眠っていたはずです。



それなのに。



寝起きで食事後?にここへ来ていたそうなので病み上がりだったはずです。



「魔力を失って昏倒した程度なら魔力の供給で対処出来るが、単純な気絶を無理に治そうとすると意識や思考能力に悪影響を与えかねないからな。このまましばらく待って自然と目覚めるのを待つほうが良い。」


「ん~、そっか~。そういうことなら仕方ないのかな?まあ、馬鹿の自業自得だしね~。」



…えっと〜。



自業自得…なのでしょうか?



それって試合を始めた北条先輩が悪いという意味ですよね?



確かに試合を言いだしたのは北条先輩だったと思います。



ですが。


そんなふうに言ってしまうと、

何となく可哀想な気がします。



できればもう少し心配してあげたほうが良いと思うのですが、

翔子先輩にそのつもりはないようです。



「まあ、とりあえず放置決定ね。」



意識のない北条先輩の手を掴みとってから容赦なく引きずり始めました。



「あ~、ったく、もう~。重いわね~」



ずり…ずり…と、引きずられていく北条先輩の扱いが物凄く雑です。


せっかく総魔さんが治療をしたのに、

余計な擦り傷が増えてしまいそうな気がします。



「あ、あの…。私も手伝いましょうか…?」



黙って見ているわけにはいかないと思って駆け寄ってみたのですが。



「だいじょぶ、だいじょぶ♪」



翔子先輩は一度北条先輩の手を離してから、

私に小さく手を振ってくれました。



…えっと。



これは手伝わなくても良いという意味でしょうか?



「こいつには、これくらいで丁度いいのよ。」



翔子先輩は笑いながら北条先輩を試合場の外まで引きずり出しています。



「で、この辺りで一旦放置!」



あっさりと手を離して、

北条先輩を放り出しちゃいました。


仮にも怪我人だと思うのですが、

扱いがとても雑ですね。



「あ、あの…。ちゃんと医務室に運んだ方が良いと思うんですけど…?」


「いいの!いいの!どうせすぐに起きるでしょ?医務室まで運ぶのは面倒なだけよ」



笑顔で放置した翔子先輩は本気でこのまま放っておくつもりのようです。



私としてはこのままにしておくのはとても気が引けるのですが、

どう頑張っても私の力では医務室までなんて運べません。



引きずっていくわけにも行きませんし…。


どうすれば良いのでしょうか?



「どうしよう?悠理ちゃん…。」


「怪我してる訳でもないんだし、別に良いんじゃない?」



傍にいてくれる悠理ちゃんに尋ねてみたのですが、

悠理ちゃんも全く気にしていない様子です。



…はうぅぅ~。



本当に良いのでしょうか?



私としては良くないと思うんですけど。


一人ではどうすることもできません。



なので。



ちょっぴり悩んでから、

さりげなく総魔さんに視線を向けてみました。



…ですが。



「しばらく待てば目覚めるはずだ。」



総魔さんも運ぶつもりはないようです。



こうなると、他の人にお願いしてみたいですよね。



「えっと…。」


「「………。」」



里沙先輩も百花先輩も手を貸してくれそうにはありません。


振り向いただけで視線をそらされてしまいました。


軽く拒絶されてしまったんです。



…あぅぅぅ。



なんだかとっても可哀相な扱いだと思います。



それでも何とか出来ないかな?と考えていると、

役目を終えた所長さん達と理事長さんが私達に近付いてきました。



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