思うだけで
《サイド:美袋翔子》
…やっと!
やっと着いた〜〜〜〜〜~っ!!
真哉のせいで一時的に食堂で足止めされちゃったけど。
ようやく第1検定試験会場にたどり着いたのよ。
何だか懐かしささえ感じるわね。
ついさっきまではここに来てもいいのかどうか悩んでいたんだけど。
淳也のおかげで自分の能力に気付けた今なら悩む理由なんて何もないわ。
今なら誰と出会ったとしても恥ずかしくないって思えるの。
そう思えるようになったのよ。
…だから。
気持ちを落ち着けるために呼吸を整えてみる。
久し振りにたどり着いた会場を前にして、
何度も深呼吸を繰り返してみたの。
…って。
別に不安があるわけじゃないわよ?
怖いとかそういう感情はないわ。
そうじゃなくて。
自然とこみ上げてくる興奮を抑えるためよ。
ここが最後の会場で、
この会場に総魔がいると思うだけで、
ドキドキが止まらないからよ。
体が勝手に緊張してしまうの。
総魔と再会できたらどうしようかな?って考えちゃうのよ。
だからなかなか一歩が踏み出せないでいるんだけど。
そんな私を真哉が無理矢理押し込もうとしていたわ。
「何を突っ立ってるんだ?さっさと行くぞ!」
「…で、でもまだ、心の準備が…っ!」
「…んなもん、あとでしろ!」
はあ!?
それだと順番がおかしいでしょ!!
…って、思わず心の中で叫んでしまったわ。
でもね?
そんな私を気にせずに。
真哉は会場内へと駆け込んで行っちゃったのよ。
…はぁぁぁ。
一人で残されてしまったわね。
…ったく、もう!
馬鹿には愛想が尽きるけれど。
ここまで来た以上。
立ち止まっているわけにはいかないわよね?
だから決心して足を進めることにしたわ。
「…分かったわよ!行くわよっ!行けば良いんでしょ!?」
真哉を追い掛けようと思って走り出したんだけどね。
だけど入口を通り過ぎてからすぐに『どんっ!』って、
真哉の背中にぶつかってしまったわ。
「痛っい~!!もう~!急に立ち止まらないでよっ!!」
不満を叫んでみたけれど。
「………。」
真哉は私に振り返る様子もないまま前方の一点を見つめてる。
「…ん~?何を見てるのよ?」
立ち止まってしまった真哉の視線の先を追ってみると。
「…って?ええっ!?沙織っ!?っと、総魔ぁ!?」
二人が試合場で向かい合っていたのよ。
試合場に立って真剣な表情で向かい合う総魔と沙織。
何故か二人の間で、
里沙が審判を行っているのが見えたわ。
これってどういうこと!?
どういう理由でこうなっているのかが分からない。
…だけど。
話を聞く暇もないまま、
里沙が試合開始を宣言してしまったのよ。




