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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
383/1368

最も頂点に近い場所

《サイド:御堂龍馬》



………。



なんだ?


何が起きているんだ?



これは偶然なのか?


それとも必然なのか?



そんな些細なことにさえ疑問を感じてしまうくらい驚くべき瞬間に立ち会ったんだ。



試合場に視線を向ける僕と悠理。



その視線の先で。


深海さんと由香里が試合をしていた。



現在3位のはずの由香里と。


数日前まで初心者だった深海さんが戦っている。



そして『二人の手』にはルーンがあった。



由香里のルーンは僕もよく知っている短剣『グラディウス』だ。



一撃の威力よりも手数重視の暗器。


『風』と『氷』の属性を持つ強力な武器なのは知ってる。



まともに一撃を受ければ一瞬で氷像になってしまうほど危険な能力があるんだ。



…だけど。



深海さんのルーンを僕は知らない。



いや、それ以前に。


深海さんがルーンを使えるようになっていること自体、知らなかったんだ。



一体、あのルーンにはどんな能力が秘められているのだろうか?



深海さんの手にあるのは、

彼女の身長を大きく上回る漆黒の長弓ちょうきゅうだ。



翔子の金色のパルティアとは全く違うけれど。


深海さんもルーンを弓として作り上げたようだね。



薄っすらと光り輝いて見える弓。


だけど決して邪悪な気配だとは思わない。



光でも闇でもない狭間の輝き。



…これは。



これは彼と同じだ。



冷たくもあり、温かくもある輝き。


この不思議な感覚を僕はすでに知っている。



…深海さんはやっぱり。



彼と同じ能力に目覚めたんだ。



神風かみかぜっ!!」



由香里の短剣から全力で放たれる衝撃波が深海さんに襲い掛かる。



だけど、深海さんは一歩も退かない。



「…負けませんっ!」



弓を構えた深海さんは、

銀色に輝く光の矢を放って由香里が生み出した衝撃波を迎撃した。



『神風』と『銀光』



二つの力がぶつかり合った。



その衝撃だけで会場内の空気が震えるほどだった。



だとすれば。



実際に試合場内に立っていたら、

かすり傷では済まない痛みを感じていただろうね。



それほど強力な力がぶつかり合っているんだ。



…だけど。



優奈さんの放った光が由香里の風に競り勝ったらしい。



風を突き抜けた光の矢が由香里に襲い掛かろうとしている。



「…くっ!押し負けるなんて…っ!」



光の矢を防ぐために。


由香里は次の行動に出た。



氷壁ひょうへき!!」



足元に短剣を突き刺して、

巨大な氷の壁を生み出したんだ。



おそらく光の屈折を狙っていたんじゃないかな?


下手に防ぐよりも受け流したほうが安全だと思ったんだと思う。



氷の壁によって光の矢を遮ろうとしていたようだけど。


神風を突き抜けた光の矢が氷の壁に突き刺さった瞬間に。



氷の壁はあっさりと砕け散ってしまったんだ。



「…そ、そんなっ!?」



驚愕の表情を浮かべる由香里に光の矢が突き刺さる。



防御に失敗したから仕方がない。


回避は難しかったと思う。



「…く、ぅ…っ!?」



由香里の胸に突き刺さる光の矢。


銀色にきらめく光りの矢は、

由香里の背中を突き抜けてから消失した。



「…う、嘘でしょ?ま、魔力が…!?」



苦痛を感じる由香里が表情を歪めた瞬間に異変が起きた。


由香里の体から微かな光が放出されたのと同時に、

深海さんの体が光を帯びて由香里の魔力を吸収したんだ。



「まさか…?あ、あなたも、なの…?」



薄れ行く意識の中で、

由香里は深海さんに手を伸ばしながら力尽きた。


その瞬間に、決着がついたんだ。



「試合終了!!」



宣言したのは百花だった。



今まで気が付かなかったけれど。


百花が審判をしていたらしい。



試合を終えて笑顔を見せる深海さんが彼に振り返っている。



その様子を眺めながら考えてみた。



僕の記憶が正しければ、

これで彼女は3位へ勝ち進んだことになるはずだ。



彼女の上にはもう真哉と沙織しかいないはず。



だとすれば。


現時点で最も頂点に近い場所にいるのは深海さんということになる。



…うーん。



ようやく彼に追いつくことができたけれど。


彼は今、何番なんだろうか?



疑問を感じながらも、

ひとまず彼に歩み寄ってみようとすると。


再び僕に呼び掛ける人物がいた。



「…り、龍馬…っ?」



背後からの呼び声。


だけどそれが誰かなんて考えるまでもない。



聞き間違えるはずのない声だからね。


彼女の声だけは絶対に間違えない自信がある。



…試合を見に来たのかな?



そう思って即座に振り返ってみたんだけど。


その瞬間に。


ここでまた新たな疑問が生まれてしまったんだ。



「…沙織?」



僕を見つめる沙織の隣には里沙がいた。


そして何故か沙織は里沙に強引に引きずられていたんだ。



どういうことだろうか?



状況が飲み込めない。


何が起きているのかが分からないんだ。



「沙織!里沙!」



二人に呼びかけようとしたけれど。



「ごめんね!御堂君。今、ちょっと取り込み中なのっ。」



里沙は僕を放置して突き進んでしまう。



「もう〜!ほらぁっ!!沙織が急がないから、終わっちゃったじゃない!!」


「ちょ、ちょっと、待ってよ、里沙…っ。あっ、ちょっ、龍馬っ!?」



沙織は強引に引きずられていってしまった。



…何が起きているんだろうか?



状況が理解出来ないままだけれど。


このままここで立っていても仕方がないとは思う。



「とりあえず、僕達も行こうか?」


「はいっ。」



悠理と共に里沙と沙織の後を追って、

彼の元へと歩みを進めることにしたんだ。



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