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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
378/1366

拉致

《サイド:常盤沙織》



…う〜ん。



なかなか進展がないわね。



治癒魔術研究室の一画で、

私は今日も研究を続けています。



研究内容はもちろん成美の目を治す方法です。



新たな理論を組み上げたことで、

幾つかの仮説が検証出来ればと思い。


これから試作段階に移ろうとしていたのです。



ですが。



実験を始めようとしたその矢先に突然研究室の入口の扉が『バンッ!』と激しく開かれました。



…えっ!?



あまりの勢いにびっくりしてしまいました。



…な、何があったのかしら?



私のいる場所からは入り口が見えないのですが。



「失礼しますっ!!」



勢いよく研究室に飛び込んできた人物のせいで手を止めることになってしまったのです。



…騒がしいわね。



何をそんなに急いでいるのでしょうか?



誰が来たのか知りませんが、

さすがに今の扉の開け方は失礼すぎると思います。


もう少し静かに開けられなかったのでしょうか?



そんな不満を感じながらも、

乱入してきた人物に視線を向けてみると。


そこにいたのは知り合いでした。



「…あら?里沙よね?どうかしたの?」



特風の同僚であり、

私の補佐官でもある人物です。



ここへ来るのは珍しい…というよりも初めてだと思います。


だから気付かなかったというのもあるのですが、

理沙は随分と慌てている様子でした。



普段のだらけた雰囲気とは全く違います。



…何かあったのでしょうか?



「どうかし…」


「あっ!!見つけたわよ、沙織〜!!」



私に視線を向けた里沙は、

周りを気にせずに勢いよく駆け寄ってきて強引に私の手をつかみとりました。



「えっ?理沙…?」


「質問はあと!」



…え?


…ええ!?



これでは話を聞く余裕すらありません。



「さあ、行くわよっ!!!」



…えっ!?


…ちょっ!?



突然、行くと言われても困ります。



「ね、ねえ、ちょっと、待って…!」



せめて理由くらい聞かせて欲しいです。


そう思うのですが。



「話してる暇なんてないの〜〜〜〜!!」



容赦なく私の手を引っ張る里沙は、

問答無用という雰囲気で私を引きずって部屋を出ようとしていました。



「り、里沙…っ!?…ちょっ…と、ま…っ…!」



抵抗しようと思っても、

里沙の勢いには勝てません。



体力的にはそれほど大きな差はないのですが。


室内で暴れるわけにはいきませんので、

強引に里沙を振りほどくことができなかったのです。



「行くわよ、沙織!早く〜〜〜っ!!」



…い、いえ。



早くと言われても困ります。


せめて事情を説明して欲しいのですが、

里沙は私の話を聞いてくれそうにありません。



どこへ向かうつもりなのか知りませんが、

かなり急いでいる様子です。



「は~や~く~〜〜っ!!!」


「…で、でも、まだ…っ!」



研究資料が出しっぱなしで、

整理すら出来ていない状況なのです。



この状況で出て行くのは良くありません。


研究室の一画をお借りしている立場としては非常に申し訳なく思ってしまいます。



「…り、里沙っ。お願いだから、片付けだけでも…っ。」


「無理無理無理無理~〜〜〜〜っ!!時間がないのよっ!!いいから急いで〜〜っ!!」


「ちょ、里沙、痛い…っ。」



慌てて部屋を飛び出そうとする里沙は、

私のささやかな願いさえも聞いてくれませんでした。



こうなったら仕方がありません。


あとでもう一度出直すしかありませんよね?



「あ、あのっ、その、あのっ!神崎室長!す、すぐに、戻って来ますから…机の上は、そのままで…っ。」



せめて神崎さんにはしっかりと挨拶をしたいと思ったのですが。


結局、最後まで言い切ることもできないまま、

里沙に引っ張られて研究所を出ることになってしまいました。


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