勘違い
《サイド:深海優奈》
…うわぁ〜~。
すごかったです。
私とは違って最初から最後まで余裕が感じられる試合でした。
やっぱり総魔さんは別格です。
これまで見てきたどの生徒よりも、
圧倒的な実力があるように思えてしまいます。
「…す、凄いです。」
「いや、まだまだ実験段階だ。真の能力が発揮されるのはもう少しあとになるだろう」
総魔さんが何を目指しているのか分かりませんが、
まだまだ満足していない様子でした。
はうぅぅ~。
今でも既に凄いのに、
総魔さんはどこまで強くなるのでしょうか?
今まで以上に気になってしまうのですが。
ルーンを解除した総魔さんは里沙先輩の前へと歩みを進めました。
「頼みがある。」
「…えっ!?な、な、な、なになにっ?まさか、私と試合したいの!?無理よっ!?無理、無理、無理、無理、無理、無理、無理ぃぃぃぃっ!!!私じゃ相手にならないわっ!!」
全力で拒絶している里沙先輩ですが、
総魔さんの目的は別にあるようです。
「今更、お前達と試合を行うつもりはない。頼みは別だ」
「え…っ?そ、そうなの?だったら早く言ってよ〜。物凄く焦った私が馬鹿みたいじゃない…。」
「勝手に勘違いしただけだろう?」
「それはまあ、そうだけど…。本気で死ぬかと思ったのよ?」
安心して笑いだす里沙先輩ですが、
総魔さんは特に気にした様子もないまま話を続けていました。
「一応、確認するが。現在3位は和泉だったな?」
「ええ、そうよ。」
「学園2位は常盤沙織で間違いないな?」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
「当然、試合を申し込む」
「「「!?」」」
総魔さんの発言に驚く私達。
そんな私達の戸惑いさえ気にせずに、
総魔さんは話を続けました。
「沙織とは俺が戦うつもりだが、その前に優奈と和泉を戦わせたい。」
「えっ!?わ、私ですか!?」
学園3位の方と試合?
4位になったばかりなのにもうですか!?
驚きのあまりに何から話せば良いか分からなくなる私に視線を向けた総魔さんが尋ねてきます。
「出来るな?」
…う、うぅ。
総魔さんに聞かれて出来ないなんて言えません。
総魔さんはいつだって私のことを考えてくれているからです。
だからきっと。
この試合にだって何か意味があるはずです。
そう思うからこそ、
断ることなんて出来ません。
「…は、はい。」
小さく頷く私を見て満足してくれたのでしょうか?
総魔さんは里沙先輩へと視線を戻しました。
「すでに結界の準備は整っているから次の1時間を待つ必要はないはずだ。見つかり次第、試合を継続する。その為に二人を呼んできてもらいたい」
「本気で言ってるの?」
「もちろんだ。」
戸惑う里沙先輩に、総魔さんはしっかりと頷きました。
その様子を見て里沙先輩も覚悟を決めたようです。
「分かったわ。呼んで来る。だけど、距離があるからそれなりに時間がかかるわよ?」
「ああ、問題ない。ここで待つ。」
「分かったわ。急いで呼んで来るからちょっと待っててね!」
二人を呼びに行くと言って、
里沙先輩は会場を飛び出して行きました。
「それじゃあ、私も行ってくるわ。」
百花先輩も里沙先輩の後を追って走り去って行きました。
手分けして探すのでしょうか?
どうするのか分かりませんが、
あとに残されたのは私と総魔さんだけです。
だからでしょうか。
総魔さんは所長さん達の方へと振り返って歩きだしました。
「報告ですか?」
「ああ。黒柳達がいなければ試合が成立しないからな。」
…そうですね。
歩み出す総魔さんの後を追って、
私も移動することにしました。




