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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
372/1354

発動

「どういうつもりかは知らないが、手加減はしないぜ!!」



試合開始と共に岩永さんの両手にルーンが現れました。



理沙先輩とは全く違う戦うための武器。


真っ赤に燃え盛る炎を帯びた長い槍です。



たぶん3メートルくらいでしょうか?


私の身長のほぼ倍はありそうな気がします。



…あれに当たったら?



痛いだけでは済まない気がします。



一振りする毎に炎が舞い踊り、

残像すら見えるくらい勢いよく燃え盛っているからです。



危険度は全く違いますが、

花火を振り回した時のような感じでしょうか。



炎自体はそれほど危険だとは思いませんが。


いくら魔術が吸収出来るといっても、

あの槍に刺されたら怪我では済まないと思います。



「全力で行くっ!降参するなら急ぐことだなっ!!」



全力で駆け出す岩永さんの槍の矛先はものの数秒で私へと届いてしまいそうです。


試合場という限られた範囲では槍の攻撃範囲からは逃げるのは難しく思えます。



…で、でもでもっ。



じっとしていたらすぐに距離が縮まってしまいます。



慌てて逃げようとしてみましたが、

運動が苦手な私では足の早さで勝てるはずがありません。



慌てて逃げる私の体を何度も槍の炎がかすめてしまいました。



ですが。



予想通り、炎そのものの影響はないようです。



槍の攻撃が安全かどうかは受けてみないことには分かりませんが、

炎によって怪我をするということはなさそうでした。



だからといって自分から槍に飛び込む勇気なんて私にはありません。



自分で言うのもどうかと思いますが、

物理的な攻撃はどうしようもないからです。



試合場内での物理的な暴力は無効化されるはずですが、

ルーンによる殴打や斬撃は有効らしいです。


魔術と同等の攻撃だと聞いています。



なので。



物理攻撃なのか魔術攻撃なのかは、

実際に受けてみなければわかりません。



…む、無理です…っ。



吸収出来れば安全ですが、

出来なかった場合を考えたら怖すぎます。



どうにかして槍から逃げないといけないのですが。


いつまでも逃げ切れる自信なんてありません。



だから必死で考えてみようと思います。



まずは魔術で反撃したいところですが…。


今は槍から逃げ回るだけで精一杯ですので、

とてもゆっくりと詠唱している暇はありません。



どうにかしないといけないのですが、

岩永さんは容赦なく槍を振り回してきます。



『ブンッ!!』と風を切る音が聞こえる度に、

背筋が凍りつくような恐怖を感じてしまうんです。



武器を持って迫って来る岩永さんが怖くて、

まともに集中することさえ出来ませんでした。



当たりたくない、と心の中で叫びながら試合場を逃げ回るのが精一杯です。



ですが、そうそういつまでも逃げ続けられるほど、体力にも自信がありません。



転げ、倒れ、逃げ回る私に迫り来る槍の恐怖。



なんとか…。


なんとかしないと…っ。


槍の届かないところから…。



…反撃出来れば…っ。



そう思った瞬間に。



…え?


…あれ?



意識の片隅で何かが形作られて行くのを感じました。



これはなんでしょうか?


一瞬だけ悩んでしまいましたが、

その答えはすぐに思い浮かびました。



…もしかして?



不意に思い浮かんだ『形』



両手を前に突き出すことで、

ついに発動させることに成功したんです。



『ガキィィィン!!』と鳴り響く激突音。


動きを止めた私を貫こうとして槍を突き出した岩永さんの攻撃を…


私のルーンが受け止めていました。



「ちっ!お前も所持者かっ!!」



一旦後方へ下がる岩永さんが距離をとってくれたおかげで少しだけ気持ちに余裕が出てきました。



じっと見つめてみる私の手元には薄っすらと輝く弓があります。



長さは2メートル以上でしょうか?


私の身長よりもずっとずっと大きいです。


細身でとても長い弓なのですが、

里沙先輩の杖と同じように、

不思議なくらい重さが全く感じられません。



これが私のルーンなのでしょうか?。



初めて手にする力。


私自身の魔力の結晶を手にして、

不思議と暖かい気持ちが感じられました。



どうしてかは分かりませんが、

何も言わなくても分かるんです。


何も聞かなくても分かるんです。



この弓は私自身と同じだから。



だから今なら出来る気がします。



生まれて初めて手にしたはずの弓。



それなのに体が自然と動いているからです。



まるでそれが当たり前のように。


今まで何千回と繰り返してきたかのように。



自然と体が動いていたんです。



左手で弓を構えて、

右手で弦を引き絞ってみる。


ただそれだけで。


両手の間を繋ぎ止めるかのように光り輝く大きな矢が現れました。



「何をするつもりだっ!!」



戸惑う岩永さんは槍の矛先を私に向けて炎の力を発動させました。



(ほむら)!!」



突き出した槍の先から炎の塊が生まれて巨大な炎が放たれたんです。


それは目を覆いたくなるほどの迫力を持った巨大な炎です。



渦を巻き、

目の前まで迫る炎。



ですが私は逃げることなく、

せまりくる炎に向けて光の矢を放ちました。



一瞬にして手元を飛び出した光の矢。


その矢が迫り来る炎に突き刺さりました。



試合場のほぼ中心でぶつかり合う『炎』と『光』。



それは一瞬の出来事だったと思います。



光の矢が炎を貫いた瞬間に、

私の体を丸ごと飲み込めそうな巨大な炎があっさりと消滅したんです。



そして、その直後に。



炎を突き抜けた光の矢が岩永さんの体に突き刺さりました。



「ぐ、はぁ…っ!!ば、馬鹿な…っ!?」



矢に貫かれたお腹を両手で抑える岩永さん。


体の中心を貫いた光の矢が、

まばゆい輝きを放って消失しました。



その次の瞬間に。


私の体が微かに輝いて、

岩永さんの魔力を全て吸収していました。



光の矢が、岩永さんの魔力を奪い取っていたんです。



全ての魔力を失ったことで試合場に倒れ込む岩永さんを見て、

私はルーンの本当の力を知りました。



遠隔からの『魔力吸収』



それが私の力だったみたいです。


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