次の試合で
《サイド:深海優奈》
「…試合終了!勝者、深海優奈!!」
はふぅ。
なんとか今回も無事に勝てました。
これでこの会場で3度目の勝利になります。
彼方さんに続いて、
村越邦夫さんと、
遠藤早苗さんに勝ち続けたことで私の生徒番号は33番まで上がりました。
「…終わりました。」
「ああ。」
急いで総魔さんの側に戻ってみると優しく微笑んでくれました。
「順調に勝ち進んでいるな。」
「は、はい。ここまではなんとか…。」
特に怪我もなく勝ち続けているのですが。
それでもまだ肝心のルーンに関しては進展がありません。
一体、どうすれば良いのでしょうか?
頭を悩ませてしまいますが。
総魔さんは気にしていないようで、
何度も時計に視線を向けて時間を確認していました。
…今は時間が気になるようですね。
私も時計へ視線を向けてみると、
時刻は午前11時4分でした。
もうすぐお昼ですね。
私はそう思っただけなのですが、
総魔さんは何かを考えている様子です。
「そろそろ時間だな。」
時間?
何の話でしょうか?
聞いてみようと思う前に総魔さんが歩き出してしまいます。
そしてそのまま一緒に試合場E-3へと移動することになってしまいました。
…ここで何をするのでしょうか?
今まで自分のことばかり考えていて詳しい話を聞くのをすっかり忘れていたのですが。
確か、今朝の段階で総魔さんは受付のお姉さんと話をしていたはずです。
あの時は試合の予定を話し合っているのかな?と考えていたのですが。
もしもそうだとすると、
これからここで総魔さんの試合が始まるのでしょうか?
『事前告知』と『選択権』の条件があるせいで今まで試合が出来なかった総魔さんでしたが、
これからここで試合をするつもりなのかもしれません。
…だからでしょうか?
私達のすぐ側には里沙先輩と百花先輩もいます。
おそらくこれから始まる試合を観戦するつもりなんだと思います。
「えっと…。試合場に来たということは…ここで試合をするんですよね?」
「ああ、そうだ。だが、戦うのは俺ではない。」
…あれ?
違うみたいです。
何故か総魔さんの試合ではないそうです。
…えっっと??
ちょっぴり混乱してしまいました。
「…どういうことですか?」
「俺も試合をするが、その前に優奈に戦ってもらうつもりでいる。人探しのついでに呼んでおいたからな。」
ついでに?
誰かを呼んでる?
…と、言うことは。
総魔さんの試合前に、
もう一度私が試合をするということでしょうか?
現時点での私の成績は33位です。
まだ私よりも強い人が32人いるのですが…。
その中の誰かと戦うということでしょうか?
私は先ほど試合を終えたばかりなので4連戦になるのですが、
総魔さんは誰を呼び出したのでしょうか?
首を傾げてしまいます。
「…誰と戦うんですか?」
「それは…」
総魔さんが話し始めた直後に。
「…邪魔してすまない。」
見覚えのある男性が歩み寄ってきました。
私の対戦相手…ではありませんね。
と言うよりも。
そもそも生徒でもありませんでした。
「二人共、元気にしているか?」
笑顔で歩み寄ってきたのは、
ルーン研究所の所長さんの黒柳さんです。
「…あっ、はい。おはようございます…。」
「久しぶりだな。」
頭を下げて挨拶をする私とは違って、
総魔さんは軽く返事を返しただけでした。
「ははっ。そうだな。丸々二日ぶりか?」
そうですね。
二日前の午前中に研究所にお邪魔して以来ですから、
丁度二日前になると思います。
「今日は俺も結界要員として呼び出されたんだが、一応、試合前に挨拶くらいはしておこうと思ってな。調子はどうだ?」
「問題ない」
「ははっ。それは良いことだ。今回もきみの試合を楽しみにして来たんだが、その様子だと予想以上のものが見れそうだな。」
満足そうに頷く所長さんを見て、
総魔さんはほんの少しだけ楽しそうな表情を見せてから頷いていました。
「そうだな。予想以上の展開という意味では、おそらく次の試合で面白いものが見れるはずだ。」
…え?
次の試合?
それって…?
「ほう。楽しみだな」
えっと、えっと…?
楽しそうに話し合ってる二人ですけど。
今の会話には気になる部分がありましたよね?
所長さんはきっと勘違いしてるはずです。
『次の試合』は、
総魔さんではなくて私だからです。
つまり。
総魔さんは私の試合で面白いものが見れると言っているんです。
それがどういう意味なのか私には分かりません。
確認したいことは幾つもあるのですが。
総魔さんとの会話に満足した所長さんは、
笑顔を浮かべながら立ち去ろうとしていました。
ですがその前に。
後ろ姿の所長さんに向けて、
総魔さんが話し掛けていました。
「全力で結界を展開する事を勧めておく。『全力』で、な。」
警告するかのような口調です。
何もかも見透かしているような、
そんな圧迫感を感じるほどでした。
「…もちろん、そうさせてもらおうつもりだ。」
振り返ることもなく返事をした所長さんは、
来た道を戻ってしまいます。
…え~っと。
ちゃんと説明しなくていいんですか?
ものすごく不安を感じてしまうのですが。
どうしていいか分からずに混乱してしまう私の耳に…。
『ドタバタ』と、駆け足で近付く足音が聞こえてきました。




