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THE WORLD  作者: SEASONS
4月9日
369/1354

総動員

《サイド:米倉美由紀》



…さて、と。



予想していたよりも、

事態が進むのは早くなかったわね。



…と、言うよりも。



むしろ予想よりも遅かったかしら。



そんなふうに思ってしまうわ。



まあ、勝手な予想だったけどね。



本来ならもっと早くに連絡が来ると思っていたのよ。



だけど現実はそうはならなかったわ。



改めて時計に視線を向けてみる。


時刻は午前11時丁度。



検定試験会場が開かれてからすでに3時間が経過しているわ。



ここまで遅くなるなんて思ってなかったんだけど。


この時間になってからようやく私は検定会場に到着したのよ。



…予想なら9時頃と考えていたんだけどね。



だけど彼は…天城総魔は何故か時間を遅らせていたのよ。



何か意味があるのかもしれないけれど。


特に思い当たる理由は何もないわね。



現時点で受けている報告は美袋翔子が128番まで勝ち進んでいることと、

潜在能力に覚醒した可能性があるという情報。



それと御堂龍馬が急速に成績を伸ばしながら現在サード・ステージまで勝ち進んでいることと、

こちらは完全に潜在能力に覚醒したという情報だけね。



その二人の報告くらいなのよ。



だから天城総魔に関してはまだはっきりとした情報が掴めていないわ。



彼に課した条件。


試合の『事前告知』と『選択権』



朝8時に会場入りしたという報告を受けた時。


1時間後の9時頃には召集が来ると考えていたんだけど。


実際に天城総魔が指定した時刻は午前11時だったのよ。



この3時間の間に何がしたかったのかは知らないけどね。


彼がこの時間を指定したから、

私達は結界の準備の為に検定会場に集合したの。



「結界の準備はどう?」


「順調だ。いつ始めて構わない」



大悟は自信を持って頷いてくれたわ。



「そう。それなら良いけれど…。」



確認しながら作戦の流れを整理してみる。



やるべきことは簡単よ。



天城君の試合限定で結界魔術の使える魔術師を総動員して結界を展開すること。



ただそれだけだからよ。



もちろん御堂君が申請した場合も同じように駆けつける予定にはなっているんだけど。


まだここまで来てないから後回しになっているわね。


まあ、どちらにしても二人の試合だけは禁止中だから考える必要はないし、考えたくもないけどね。



ひとまずは絶対防御魔術『シールド』を展開できる職員を片っ端から集めたのよ。



天城総魔自身も得意とする魔術だけどね。


全力で戦う彼の攻撃の全てを完全に抑えるためには、

こちら側は『総動員』の準備を行ってでも対応する必要があると思ったからよ。



…これでもギリギリだけどね。



絶対防御魔術でも彼の魔法は防ぎきれないから。


その根本的な問題を解決する方法はただ一つ。


天城総魔の魔法を防ぎ切れるだけの『数』を揃えること。



質よりも量ってことよ。



物量という最も簡単な方法で試合場を防護して、

会場への被害を最小限に抑えること。



それが学園の下した決断なの。



その為に集まった魔術師は私を含めて総勢60余名。



さすがにね。


ここまでする必要はないのかもしれないけれど。


これでもまだ不安は消えないわ。



少なくとも天城総魔と御堂龍馬の試合は、

これだけの頭数を揃えても許可できることではないのよ。



それほどの要注意人物。


それが天城総魔なのよ。



今回の試合で彼が指名した対戦相手は学園4位と5位の二人の生徒だったわ。



その両方と戦うのか。


それとも一人ずつと戦うのか。


そこまでは誰も知らないけどね。



ただ指名された生徒を呼び出しただけだから到着を待つしか出来ないのよ。



…最小限の条件にしたから詳細まで聞き出せないのが面倒よね。



そうは思うけれど。


あの天城君が素直に細かな手続きまで従ってくれるかどうか分からないから、

時間と対戦相手の情報しか聞き出せなかったのよ。



…まあ今までの対応を考えれば、もう少し具体的な条件をつけても良かったかもしれないけどね。



今更反省しても手遅れだけど。


現状としてはこれからどんな戦いが始まるのか分からないってことよ



でもね?



私達の結界がちゃんと通用するのかどうかを計る為にも程よい人選だったとは思うわ。



いきなり北条君と試合をされて結界が崩壊した挙げ句に、

会場もまた『全壊』では私の責任問題にも繋がりかねないからよ。



私達の練習という意味も含めて、

この試合は都合のいい展開だったりするわ。



「…そろそろ始まるかしら?」


「ふむ。どうせなら試合前に挨拶でもしておきたいところだな。」


「別にいいけど、作戦の指揮は大悟に任せてるんだから、調子にのって間近で観戦とかしないでよ?」


「ああ、分かってる。任せておけ」



…う〜ん。



「…不安ね。」


「…そうですね。」



小さく呟いてみた私の声に同調するかのように、

西園寺さんが静かに頷いていたわ。



「所長に何かを任せること以上に心配なことなんて他にはありませんから。」



ん~。


何だか刺のある言葉ね。



だけど西園寺さんの言葉に研究所の職員達は無言で頷いていたわ。



みんな口に出さないだけで、

考えてることは同じなのかもしれないわね。



「余計な仕事が増えそうで困りますね。」


「むしろ増やさないと気がすまないのかも?」



西園寺さんに同調してるのは確か藤沢さんだったかしら。



「研究所最大の仕事中毒者だしね〜。」


「なんて迷惑な…。」


「…おいおいおい…。」



彼女達の言動によって、

大悟が一筋の汗を流していたわ。



「お前等な…。」



ため息を吐きながらも大悟は歩みを進めて行く。


どうやら今は挨拶を優先したようね。



「もういい。好きに言え。」



天城総魔に挨拶をする為に?



…と言うよりも。



彼女達から逃げる為に?



大悟は私達から離れて行ったのよ。



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