勝てるかも
試合場にはすでに対戦相手が待っていて、
彼はそのまま試合場の中へと足を進めて行ったわ。
そして審判員の合図と共に試合が開始されたのよ。
「フリーズ・アロー!!」
彼の魔術が発動して、
数え切れないほどの氷の矢が対戦相手へと放たれる。
「フレア・ストーム!」
相手の魔術が完成して、
発動した炎によって氷の矢がほぼ全て溶けて消滅したわ。
それでも彼の攻撃は止まらない。
「バースト・フレアっ!!」
炎の炸裂弾よ。
彼は対戦相手に向けて勢いよく炎を撃ち出してた。
「ちっ!…フレアっ!!!」
炎の塊を作り出した相手は彼の魔術にぶつけながら衝撃から逃げようとして後退してる。
一瞬の攻防によってぶつかり合う二つの炎。
炸裂する炎の影響で、
熱風と衝撃が試合場を吹き抜けていったわ。
だけど。
二人とも特に被害を受けた様子はないわね。
格上同士の戦い。
私なんかじゃどう足掻いても太刀打ちできない。
そう思えるほど高位の魔術の応酬。
だけど。
次に放つ彼の魔術によって試合が終了したわ。
「コールド・ストーム!!!!」
極寒の冷気の竜巻が対戦相手の体を包み込んだのよ。
連続で魔術を発動させた彼と、
回避に気を取られて詠唱の遅れた対戦相手。
どちらが優勢かなんて、
初心者の私でも分かるわ。
冷気に取り囲まれたことで逃げることさえ出来ない相手は、
もうどんな魔術の詠唱も間に合わないはずよ。
この時点で試合の結果は明らかになったわね。
「く…っそ…ぉ……!」
対戦相手は極寒の冷気を浴びて倒れた。
「勝者、遠山栄治!!!」
試合終了。
彼は新たな番号を手に入れたのよ。
5094番。
それが彼の番号になったわ。
…強いわね。
強いと思う。
思うんだけど、ね。
試合場を離れようとする彼を視線で追ってみる。
今の試合を見た限りでは、
それほど疲れているようには見えないわ。
それでもあれだけ大規模な魔術を連発したんだから、
少しくらいは魔力が低下してるはずよね?
今の試合だけでは判断しきれないけれど。
彼の試合を見た限りで言えば、
得意とする属性は『炎』と『氷』よ。
どちらにしても威力は私よりも遥かに上。
私の魔術なんて、
彼には何の意味がないかもしれないわ。
だけど。
相性だけで見ればそれほど悪くない気がするのよ。
上手く立ち回れれば、
勝てるかも知れないの。
…不安はある。
けれど。
最後のコールド・ストームさえ逃げ切れれば勝てる可能性はあるかもしれないわ。
フリーズ・アローなら風で吹き飛ばせる範囲だと思うし。
バースト・フレアなら誘爆を狙えるからよ。
他にも魔術はあると思うけれど。
それはその時に対処するしかないわね。
…問題はコールド・ストームをどうやって回避するかよね~。
その方法を考えながら受付まで戻ってきたわ。
急いで受付で名簿を受け取ってみる。
彼はまだ会場内にいるわね。
「この人でお願いします!」
私が示したのはもちろん『遠山栄治』よ。
手続きを済ませた私は急いで試合場に向かうことにしたの。




