普通の水晶玉?
《サイド:深海優奈》
「試合終了!!」
審判員さんの合図によって私の勝利が確定しました。
「勝者!深海優奈っ!!」
また一つ、試合が終わったんです。
小さく息を吐いてから時計を見てみると。
気が付けばすでに午後5時を過ぎているようでした。
「これで残る会場はあと一つだな。」
「…あ、はい。」
新しく手に入れた番号を眺めながら、
再び溜息を吐きました。
生徒番号113番。
昼食のあとも数え切れないほどの試合を繰り返した私は今日一日だけでここまで来てしまったんです。
今朝の開始時点から見て、
あっという間に4000番近く勝ち上がってきたことになります。
その結果として。
残る会場は最後の一つだけです。
99位から1位の方がいる会場だけになってしまいました。
総魔さんの番号も現在107番で、
会場内では最高位になります。
それにより。
私も総魔さんもこの会場で戦える生徒がいなくなってしまいました。
「これから次を目指すんですか?」
尋ねる私に総魔さんは小さく頷いてくれます。
「ああ。そのつもりだ。」
「最後の会場には常盤先輩がいるんですよね?」
昨日のお昼に一度だけ会って話をした方です。
先輩の番号は2番だと言っていました。
だから次の会場でも戦い続けるということは、
当然ですが常盤先輩とも戦うことになります。
もちろんそこまで勝ち上がれればの話なのですが。
どうなるのでしょうか?
「…何だか緊張してきました。」
小さく呟く私の頭の上に手を置いた総魔さんは優しく頭を撫でてくれました。
何だかそれだけで心が落ち着いていくような気がしましたが、
総魔さんはすぐに手を離してしまいました。
「悩むよりも実際に行ってみた方が早い。誰と戦うにしても経験だと思って挑戦してみることだ。」
どの試合も経験だと言ってから総魔さんは歩きだしてしまいます。
…そう、ですね。
急いであとを追い掛けました。
…ですが。
今までもずっとそうだったので分かってはいるのですが。
それでもやっぱり不安は消えません。
はぅぅぅ~。
心配です。
学園で最強争いをしている人達が集まる会場ですよね?
そう考えると今まで以上に不安になってしまいます。
本当に私なんかが参加してしまって良いんでしょうか?
いまだに自分の力に自信が持てません。
このまま勝ち上がって頂点を目指せたとしても、
素直に喜べないような、そんな気がしています。
だから私はずっと気になっていたことを総魔さんに尋ねることにしました。
「もしもまた頂点に立ったとして、総魔さんはどうするつもりなんですか?」
心の中で、ずっと抱えていた疑問です。
2度目の頂点に立った時に。
総魔さんはどうするつもりなのでしょうか?
そんな私の疑問に答えるために。
足を止めた総魔さんはポケットから小さな水晶を取り出して私に差し出してくれました。
「綺麗ですね。」
それが素直な感想です。
初めて見る水晶玉を手にとって、
色々な角度から眺めました。
一見、何の変哲もない普通の水晶玉に見えるのですが。
これに何か意味があるのでしょうか?
首を傾げる私を見て、
何の変化も示さない水晶玉に総魔さんが手を伸ばしました。
その数秒後に。
総魔さんの手の上で転がる水晶玉が強い光を放ったんです。
「え…っ?これ、どういうことですか?」
戸惑う私を見た総魔さんは、
ゆっくりと話し始めました。
「…そうだな。次の会場に向かう間に説明しよう」
「…は、はい。」
会場を出てからも歩みを進めていく総魔さんの隣に並んだ私は、
総魔さんの言葉に耳を傾けることにしました。




