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THE WORLD  作者: SEASONS
4月8日
340/1354

失言

《サイド:美袋翔子》



う~ん。


ちょっと疲れてきたわね~。



午前中から試合を繰り返し続けて、

気がつけばもう午後3時になっていたわ。



ざっと6時間よ。


こんなに必死に戦い続けるなんて何ヶ月ぶりかしら?


一人で黙々と頑張るのなんて相当久しぶりだと思うわ。



でもまあ、そのおかげで試合回数だけは凄まじい記録になってるけどね。


ざっと数えても100は超えてるんじゃないかな?



午前中に3000台を乗り越えた私は、

次の会場でも試合を続けたのよ。


すでに私の生徒番号は2123番まで上がってる。


もちろん全戦全勝の無敗よ。



初日の優奈ちゃんとの試合だけは例外としても。


まだまだ私が苦戦するような生徒なんていないから、

あと何回か試合をしたら次の会場に向かおうと思ってる。



だけどその途中でね。


背後から呼び掛けてくる人物がいたのよ。



「あれ?翔子じゃない!」



聞こえてきたのは驚くような声だったけれど。


その声にはちゃんと聞き覚えがあるわ。



さすがにね。


そうそう何度も忘れたりしないわよ。



誰がいるのかなんて考えるまでもなく、

さっさと振り返ってみる。



うん。


やっぱりそうよね。



視線の先には予想通りの女の子がいたわ。



友達というか?


知り合いというか?


天敵というか?


表現が難しいところだけど。



鈴置美春すずおきみはるがいたのよ。



ただ、ね。


実を言うとね。


会えるんじゃないかな?って思って、

この会場に来た時からずっと捜してたのよ。



「美春じゃない。あなたも試合をしにきたの?」


「まあ、そんな感じだけど、どちらかと言えば様子見かしらね?翔子が会場に来てるって聞いたから見に来たのよ。でもね~。翔子がここにいるっていうことは、噂じゃなくて本当に降格してたのね。」



ん~。



「信じてなかったの?」


「普通は信じないでしょ?こんな話」



美春は当然とばかりに頷いてた。


まあ、ね。


信じないと言って胸を張る美春の気持ちは分からなくもないわ。



だけど自慢するようなことでもないと思うのよね~。



「わざわざ私に会いに来てくれたの?」


「ええ、そうよ。まあ、どうしてそうなったのかはどうでもいいんだけどね。」



理由なんて気にせずに、

美春は私の生徒番号を確認していたわ。



「2123…って、降格したばかりなのに、もうその番号なの!?」



驚く美春だけど。


私は苦笑してしまったわ。



個人的には驚くような成績じゃないからよ。



「この程度なら楽勝よ。」


「………。」



気楽に答えた私を見て、

美春は気まずそうな表情を浮かべてた。



もしかして、怒ってるのかな?



「はぁ…。ったく、もう…。仮にもこの会場に所属する私に向かって、よくそんなことを堂々と言えるわね~。」



え?


あ、あ~。



「ごめんごめん。」



ちょっと失言だったわね。


笑ってごまかそうとしたんだけど。



「………。」



美春は冷たい視線で私を見つめながら激しくため息を吐いていたわ。



「まあいいけどね。それで?これからどうするつもりなの?とぉ~~~~~っても、お強い翔子様は次の会場に向かうのかしら?」



嫌みたっぷりな言い方よね?


これって完全に怒ってるよね?


とりあえず謝っておこうかな?



「だから、ごめんってば…。」


「はいはい」



冷たくあしらわれてしまったわ。



う~ん。


どうしよう?



放っておいても害はないんだけど。


仲の悪い生徒がいるっていうのはちょっぴり楽しくないわよね?



後々のことを考えると、

ここは素直に謝っておいた方が無難だと思うのよ。



「ごめん!美春!言いすぎたわ。」



全力で頭を下げて謝ってみたんだけどね。



それが良かったのかな?



美春の機嫌が元に戻ったような気がしたわ。



「もういいわよ。別に怒ってないし。まあ、知らない仲でもないしね。」



微笑みを取り戻してくれた美春のおかげで、

ひとまず重苦しい雰囲気は消え去ったと思う。



…ちょっと面倒くさいとは思うけどね。



こういうのってちゃんと解決しておかないと、

後々もっと面倒なことになっちゃうのよ。



「ごめんね。」


「いいわよ」



ちゃんと笑ってくれたわ。


もう怒ってないみたい。


これでちょっと一安心、かな?



「そう言えば、美春って今は何番なの?」



今の成績を尋ねてみると。



「昨日の試合で2033番までは戻って来れたんだけど、そこから先がなかなか難しいのよね~」



美春はため息交じりに答えてくれたわ。



ふ~ん。


2033番ね。


今の私と比べると90番差になるわ。



肩を落とす美春だけど。


現状ではまだ私より格上なのよ。



でもね。



よくよく考えてみると、

1週間くらい前に総魔に敗北したことで1000番落ちっていう不名誉な降格を受けていたのよね?



それを思えばこの数日の間にここまで帰ってきただけでも美春にすれば相当な努力があったと思うわ。



「美春も苦労してるのね~」


「………。」



私の言葉を聞いた美春は、

再び冷たい視線を私に向けてた。



もしかして今のも失言だったのかな?



美春をバカにするつもりなんてこれっぽちもないんだけど。



「翔子にしてみれば、些細な通過点でしょうけどね。」



嫌みの効いた言葉が返ってきたわ。



…う~ん。



やっぱりまだ怒ってるんじゃないかな~?



そんな疑問を感じるけれど。


解決する方法は見つからなさそうに思うのよね~。



こうなったら、

これ以上こじれる前に次の会場を目指そうかな?



そんなふうに考えてみたけれど。


何故か美春は突然、

楽しそうな笑顔を見せたのよ。



「な…なに…?」



美春の笑顔を見て後ずさってしまう。


そんな私と向き合う美春は妖しい微笑みを浮かべてる。



「ねえ。せっかくだから私と試合をしてみない?」


「はぁっ!?」



驚く私を気にもせず。


美春は楽しそうに言葉を続けてく。



「なかなかあることじゃないし。翔子がどの程度まで実力を付けたのか知る良い機会だと思うのよね~」



私の実力を知る?


何の為に?



「今の翔子って本来の力を失ってるわけでしょ?」



まあ、ね。



「ええ。そうよ」


「だったら今は結構強い生徒…ぐらいなわけよね?」


「う~ん。そうなるのかな?」



曖昧に答えてみる。


自分でもよくわからないのよね~。


それでも美春は満足したみたいで勝手に話を続けてく。



「だから今ならそれなりに勝負になると思わない?」



は?


思うわけないじゃない。



美春の質問を心の中で全力で否定したわ。



全く勝負にならないからよ。



仮にも私は上位100人に入れるだけの実力があるのよ?



能力を封じてもその程度の実力はあるの。


だけど美春は2000を切ることさえ出来ずにいるのよ?



この差は歴然よね?



どう考えても私の勝利は確実だし。


わざわざ美春と戦う必要なんてないわ。



「多分、私が勝つと思うわよ?」


「まあまあ。」



控え目に否定してみたんだけど。


美春は笑顔で私の発言を聞き流してる。



「意外とね。予想外なことだって起きるかも知れないじゃない」



う~ん。


ないと思うけどね~。



悩む私を見ても、

美春は微笑みを絶やすことなく言葉を続けてく。



「それにね。翔子は私に一敗してるわけだし、それを取り返してみたら?」



一敗?


あ~。


確かに


そういえばそんなこともあったわね。



でもね~?



何でそんなに私と試合がしたいのかな?



色々と疑問を感じる私に、

美春は説得を続けてくる。



「まあ、負けても降格する番号はたいしたことないし。とりあえずは興味本位ってところかしら?」



う~ん。


それってどうなの?


いまいち理解できないけれど。



私にしても美春に勝てば番号が上がるわけだから文句はないわ。



だけど、ね?


美春のこの自信は一体何処からくるの?



ひたすら疑問を感じるけれど。



本人がやる気になってるから美春の挑戦を受けることにしてみたわ。



まあ、あとで面倒なことにならなければいいんだけどね。



心の中でため息を吐いてみる。


とりあえず受付に行かないとね。



そう思って歩き出す私の隣を、

美春も機嫌良く歩きだしたのよ。



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