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THE WORLD  作者: SEASONS
4月8日
336/1374

馬鹿の手が

「はっはーっ!!取り合えず、押さえ込もうかなーっ」



うわぁぁぁ~っ!!!



言い切っちゃった。



…気持ち悪っ。



大喜びで駆け寄って来る馬鹿に絶望的な嫌悪感を感じつつ。


詠唱を終えた魔術を馬鹿に向けて発動させてみる。



「ウインド・クラッシュ!!」



突風が吹き荒れて、

前進する馬鹿を吹き飛ばしたわ。



絶対に近づけさせないためよ!



それだけを心の中で願ってる。



そのおかげか、風を受けた馬鹿は試合開始位置よりも少しだけ後ろに押し戻されていたわ。



だけどね。


それだけなのよ。



今の魔術は直接的な威力はほとんどないから、

効果自体はあまり期待出来ないの。



ホントに吹き飛ばしただけで終わったのよ。


それでも距離をとれたぶんだけ精神的には楽になれたかな?



そう思うけれど。


馬鹿の突進は止まらないみたい。



「まだまだーーーっ!!」



めげずに駆け寄って来る馬鹿のせいで、

何処までも果てしない嫌悪感が私の心を埋め尽くしてく。



ううああ~。



寒気が止まらない~っ。


本気で近づいて欲しくないって思うのよ。



だからもう一度吹き飛ばしてみたわ。



「ウインド・クラッシュ!!!」



再び巻き起こる突風に煽られて吹き飛ぶ馬鹿。


それでも気にした様子のない馬鹿は私への接近を試みようとし続ける。



…うぁあぁ。



どこまで馬鹿なのよ、こいつは!?



激しくため息を吐いてしまうわね。



このまま馬鹿を地獄の果てまで吹き飛ばしたい気持ちになったわ。



だけどそんな力は私にはないの。


吹き飛ばす以上の攻撃ができないのよ。



せいぜいかすり傷をつける程度が限界でしょうね。



そんな私の思いを気にせずに、

諦めずに駆け寄って来ようとする馬鹿。



私の実力をなめてるのかな?



それとも本気で接近だけを目指してるのかな?



何を考えているのかなんて分からないけれど、

どちらにしても馬鹿の接近は食い止めたいのよ。



「ウインド・クラッシュ!!!」


「…ちっ!」



三度吹き飛んだ馬鹿だけど。


実害がないせいで余裕の笑みを浮かべながら立ち上がってる。



…まずいわね。



こんなくだらないことを繰り返してたら、

馬鹿の弱点を突く前に私の魔力が底を突くかもしれないわ。



そうなれば、あとに待っているのは?



…ぅあぁぁ…っ!?



考えるだけでも死にそう。



あんな嫌悪感の塊のような男に触れられるなんて考えたくもないわ。



「ウインド・クラッシュ!!!」


「…くっ。」



懲りずに吹き飛ぶ鎌田だけど。


私の魔力には限界がある。



…何とか手をうたないとっ!?



必死で考えながら魔術を詠唱してみる。


そしてもう。


馬鹿を吹き飛ばすことは諦めたわ。



喜々として迫り来る馬鹿は今回も風の魔術と思い込んでるのか、

私の詠唱に耳を傾けようともしてないみたい。



迫り来る馬鹿。


その手が…私の胸へと伸びてる。



…って!?



いきなりそこなのっ!?



堂々と!?


それも試合場なのに!?



欲望丸出しで迫る馬鹿。


その馬鹿の行動に全力で嫌悪感を抱きつつ、

取っておきの魔術をぶち込むことにしたわ。



遠ざけるんじゃなく、近接で…ね。



「ファイアー・ボール!!!!」



馬鹿の伸ばした手に向けて、

全力で炎を放ったのよ。



「しまっ…!?」



馬鹿の右手に直撃する炎。


魔術が直撃したことで歪む表情を眺めながら、

私はすかさずしゃがみ込んで馬鹿から全力で逃げ出したわ。



その直後に。


火柱が立ち上って馬鹿の体を飲み込んだのよ。



「…ぐっ…あっ…!!」



苦痛に顔を歪めながらも炎から脱出した馬鹿が私を睨みつけてくる。


その表情は怒りに満ちていたわ。



「くっそーーーーーっ!!!意地でも押し倒してやるっ!!」



欲望全開の怒りに燃える表情で、

馬鹿が『得意』の魔術の詠唱を始めてくれたのよ。



…やったっ!!



心の中で喜んでしまう瞬間だったわ。


馬鹿が予想通りの魔術の詠唱を開始したことで、

ついに勝利を確信したからよ。



これで勝てるっ!!!



すかさず反撃の為に魔術の詠唱を開始したわ。



簡単な魔術だからこそ、

あとから詠唱しても十分に間に合うのよ。



「バースト・フレア!!」



馬鹿の魔術が完成したことで、

両手の間に炎の塊が発生してた。


私の炎なんかよりも、

さらに威力を向上させた破壊の為の炎よ。



着弾と共に爆発する炎の炸裂弾は、

まともに受けなくても私の体が焼け焦げるくらいの威力を秘めた炎系の上級魔術。


その炎が私に向けて放たれるその前に、

私も魔術を発動させたわ。



「ウインド・カッター!!!」



ただの突風なんかじゃない、

一点集中型の風の一撃よ。



私の一撃は狙い通りに馬鹿の炎に突き刺さった。



炎を突き抜ける風の刃。


その光景を見た馬鹿の表情が凍りつく。



「…なっ!?」



馬鹿が驚愕を浮かべた次の瞬間に。


手元の炎が炸裂したのよ。


超至近距離で爆発した炎はうねるように燃え広がって馬鹿の体を飲み込んだわ。



「ぐあああああああああーーーーーーーーっ!!」



まさに絶叫ね。



馬鹿は自分の炎に焼かれて倒れることになるの。


この状況こそが私の狙っていた作戦なのよ。



着弾によって炸裂する炎に衝撃を与えることによって自爆させる。


考えていた作戦通りに、

馬鹿は自分が得意とする魔術によって自らの体を滅ぼしたわ。



「試合終了!勝者、近藤悠理!」



審判員の合図と共に、

ゆっくりと立ち上がる。



予想通りの作戦勝ちだから、

自分でも満足できる結果だったと思う。



…だけど今は。



「馬鹿はもううんざりなのよっ!!」



倒れた馬鹿を見下してから、

次の会場に向けて歩きだすことにしたわ。



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