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THE WORLD  作者: SEASONS
4月8日
333/1354

これぞ、試合

「うーん。何がダメなんでしょうか?」



正午になってさすがに武藤君も頭を抱え始めた。


それもそのはずだ。


最も危惧していたことが、

現実となって起きてしまったからだ。



ただひたすらに突撃を続ける武藤君の努力の成果によって、

とうとう対戦相手がいなくなってしまった。



ほぼ全ての生徒が義務を終えた為に、

試合を挑める生徒がいなくなったしまったんだ。



「うーん。待ってればいいのかなー?」



試合が出来なくなって困り果てている。



だけどね。


こうなると僕の出番もない。


さすがに対戦相手を用意するなんて出来るわけがないからね。



「もう少し落ち着いて行動した方がいいと思うよ?」



何度目かの忠告をしてみるけれど。


武藤君は不思議そうな表情で首を傾げていた。



「うーん。そういうものですか?僕が思うに正面から堂々と突破する方が、かっこいいと思うんですけど…?」



かっこいい、だろうか?



そもそもその前提すら僕には理解出来ないけれど、

武藤君なりに考えがあるんだとは思う。



「向かって来る魔術を粉砕して、自分の魔術を叩き込む!それが、これぞ試合!!って感じだと思うんですけど…。」



いや、まあ、確かにね。


それが出来ればかっこいいと思わなくもないよ?



実際に真哉は実践しているしね。



…けれど。



現実に行われているのは魔術の粉砕ではなくて『魔術での玉砕』だ。



武藤君の思い描く試合内容とは程遠いし。


はっきり言うなら真逆の状況だよね。



「まずは勝ちに行くことを優先した方が良いんじゃないかな?」



問い掛けてみたけれど。



「うーん。番号なんてどうでもよくないですか?」



武藤君は当たり前のことのようにごくごく自然に答えていた。



「自分の望む戦いをして、それで勝つことが大事だと僕は思います。」



………。



はっきりとした意見だね。


普段の暴走ぶりからは想像出来ない冷静な発言だと思う。



だけど、どうしてかな?



彼の言葉は不思議と僕の心の中に入ってきたんだ。



自分の望む戦い。


彼は正面から立ち向かうことを望んでいる。



全てに向き合って、

困難を乗り越える力を求めているんだ。



だとしたら僕は…僕の望みは何だろうか?


強くなる為に僕の目指す力はなんだろうか?



武藤君と向き合いながら、

自分自身に問い掛けてみる。



僕の力。


僕の求める力。



それはやっぱり『力』だと思う。



言い方は悪いかも知れないけれど。


暴力という名の破壊の力。



全てを押さえ込むほどの圧倒的な力。



吸収も…操作も…全てを認めない圧倒的な暴力。



そういう力だ。



『支配』に続く『暴力』



まるで暴君のような表現だけど。


何故かその言葉がもっとも自分にあっているような気がした。



…だとすれば。



それが僕の力なんだろうか?



良く分からない。


ただの思いつきにすぎないから。



だけど何故か心がざわつくような気がする。



今まで感じた事のない胸騒ぎだ。



もしかしたら僕は可能性を手にしたのかもしれない。



武藤君の言葉によって、だ。



「師匠はどうしたいんですか?」


「…全てを越える力が欲しいと思ってる。」



彼の問い掛けに対して僕は…僕の想いを答えた。



「どんな相手にも正面から向き合える力が欲しい…。」


「だったら僕と同じですね!」



確かに。


僕と武藤君は似ているのかもしれない。



何故か自然とそう思えたんだ。



だけど。


笑顔を見せる武藤君の表情が少しだけ変化した。



「師匠!」



笑っているように見えるのに。


何故か彼の眼差しに強い悲しみを感じてしまったんだ。



「師匠は好きにして下さい!」


「えっ?」



武藤君が何を言いたいのか分からなかった。



「僕ならもう大丈夫です!色々なことを師匠から教わりましたからっ!!だから師匠は先へ進んでくださいっ!」



突然、武藤君が頭を下げたんだ。



「無理言ってばかりですみませんでしたっ!でも僕、楽しかったんです!誰にも相手にされなかった僕に、優しくしてくれたのは師匠だけだったから!!だから、だからこれ以上、師匠に迷惑をかけることは出来ませんっ!!!」



地面に頭をこすりつけて、

懸命に想いを言葉にしている。



「師匠!ありがとうございますっ!!そして、お世話になりましたっ!!!」



お礼の言葉を残してから全力で駆け出した武藤君は、

そのままどこかへ走り去ってしまった。



僕の返事を聞くこともなく、

どこかに行ってしまったんだ。



その結果として。


一人残されることになってしまった。



うーん。


困ったね。



僕はこれからどうするべきだろうか?



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