底をつく前に
《サイド:御堂龍馬》
…はあぁぁぁ。
今日もダメだったか。
燃え上がる炎。
「…うあ…っ!?」
繰り返される悲鳴。
「く、ぅぅ!!」
必死の努力も虚しく。
武藤君は再び試合場に倒れ込んでしまったんだ。
これで何度目だろうか?
すでに両手で数え切れないほどの試合を行っている武藤君だけど。
今日も敗北記録が更新され続けていた。
「試合終了!!」
対戦相手が立ち去る試合場で、
入れ替わりに武藤君に歩み寄ってみる。
「残念だったね」
「いえ!まだまだ、これからです!!」
倒れながらも力いっぱい叫ぶ武藤君の意思は今日も固くて、
決して心が折れることはなさそうだ。
それでも倒れている武藤君に回復魔術を発動しておく。
これでもうしばらくは大丈夫なはず。
そう思って声をかけようとしたんだけど。
「次こそはーーーーーっ!!」
怪我の治療を終えた武藤君は、
僕を置き去りにしたまま受付に向かってしまったんだ。
…うーん。
彼は今日も元気だね。
もはや驚かれることさえなくなった武藤君の言動はそれが当たり前かのように誰も気に止めなくなってきている。
それはそれで気が楽なんだけど。
裏を返せば誰にも相手にしてもらえないほど敗北を重ねているという証でもあるんだ。
…このままではまずいね。
武藤君が試合を重ねるほどに、
対戦の義務から解放される生徒が増えていくことになる。
新しい生徒が来てくれればいいけれど。
そうでなければいずれ対戦相手がいなくなってしまうんだ。
ただでさえ初心者しかいないこの会場で、
参加率を考えれば200人程度しか対戦相手がいない。
そのうえで他の生徒同士での試合を考慮すれば、
義務で試合を受けてくれる生徒は確実に減っていくはず。
義務を終えてもまだ挑戦を受けてくれる生徒もいるとは思うけれど。
そうそう何度も試合を受けてくれるとは思えない。
だからまずは対戦相手の底をつく前に何とか番号を底上げしたいんだけど。
僕が考え事をしている間にも、
武藤君は次の対戦相手を選んで試合場に向かっているようだ。
今日はこれで何戦目だろうか?
急いで武藤君のあとを追ってみる。
何か手を打たないといつまでたっても先に進まないどころか、
試合そのものが出来なくなってしまうんだ。
どうすればいいのかな?
そんな僕の悩みなんて一切気にしてないと思う武藤君は全力で試合を行っている。
さて、どうしようか?
悩んでいる間にも時間が流れ、
気がつけば午前11時45分になっていた。
もうすぐ正午だ。
このままだと午前中の努力は全戦全敗で終わってしまうだろうね。
せめて一勝だけでもと願うけれど。
結局、武藤君は一度も勝利できないまま、
時間だけが虚しく過ぎて行った。




