余裕の表情を
そうしてたどり着いたのは試合場Aー1。
入口からもっとも遠い場所にある試合場で、
私は対戦相手を待ってる。
閉鎖間際の会場だから、
残ってる生徒はほとんどいないわね。
今ならちょっと見回しただけで確認できるくらい人数が少ないわ。
そんな状況で。
一人の男子生徒が試合場に歩み寄って来た。
もちろん桑原良輔よ。
私の選んだ対戦相手で、
この会場を乗り越える為に必要な犠牲者。
彼を倒せなければ次の会場を目指す資格はないわ。
でもね。
逆に言えば彼に勝てれば次への道が見えてくるのよ。
そういう試合なの。
あと数分で8時を迎える会場で、
彼はゆっくりと試合場に歩み寄ってきたわ。
「きみが対戦相手なのか?」
不思議そうに私を見つめてる。
「きみの番号で僕に挑むのは無謀だと思うけど?」
私を格下だと判断してる発言よね?
実際にそうだから怒るつもりはないけどね。
「格上の生徒がどれくらい強いのか知りたくなっただけよ。」
若干の皮肉を込めて言葉を返してみると、
桑原はため息混じりに話を続けたわ。
「怪我をしないうちに降参することを薦めるよ」
桑原の言葉が優しさなんかじゃないことはすぐに分かる。
雑魚に用はないって言っているように感じるからよ。
だけどね?
雑魚にも雑魚の意地があるの。
完全に私の実力をなめきってる桑原だけど。
私は全力で立ち向かうだけよ。
そして勝ってみせる。
私の目的は遥か先にあるんだから!
こんなところで負けるつもりはないのっ!!
「お好きにどうぞ。」
会話を打ち切って、試合の開始を待つ。
「…ふっ。」
桑原は私をあざ笑うかのように歩みを進めてく。
その態度は気に入らないけどね。
いちいち反論するつもりはないわ。
…その余裕の表情を絶望に変えるだけよ!
密かに拳を握り締める。
そして向き合う。
私にとって、今日最後の試合が始まるのよ。




