恐怖と不安
《サイド:近藤悠理》
ふんふふ~ん♪
検定会場を出た私達は次の会場へと向かってるところよ。
天城総魔と翔子先輩。
そして優奈と私でね。
でもね?
でもね!
最初の会場を抜け出せたことで、
私の心は色々な意味で開放感に満ち溢れていたわ。
だってさ~。
やっとよ…?
やっと…!!
やっと、なのよ!?
やっとあの馬鹿から解放されたのよ!!!
ただそれだけのことが尋常じゃないくらい嬉しかったわ。
…だけど、ね。
一つだけ心残りがあるの。
それはね?
御堂先輩が会場に残ってしまったことよ。
それ自体は仕方がないことなのかもしれないわ。
それぞれの想いとか考えとか、
難しい問題もあるから仕方がないと思うの。
でもね?
先輩が残ってしまった理由が、
私の恐怖を煽るのも事実なのよ。
どうしてか理由は分からないけれど。
先輩はあの馬鹿への協力を続行するつもりみたいで、
一人で会場に残ってしまったのよ。
辛うじてようやく1勝できただけの底なしの馬鹿。
あの馬鹿が試合を勝ち進んで私を追い掛けて来るなんて考えられない夢物語だけど。
先輩が手を貸すとなると、
決して油断なんて出来ないのよ。
あり得ないとは思っているけれど。
絶対に無理って思ってはいるけれど。
…出来れば考えたくもないんだけどね。
次の検定試験会場まで追い掛けて来る可能性が否定出来ないのよ。
だから手放しで喜べる状況じゃないの。
…ううぅぅ~。
まさか次の会場まで追いかけてこないわよね?
絶対に有り得ないと言い切れないところが面倒くさいのよ。
だから、どうか…。
どうか…。
どうか…!!!!!!!!
間違っても馬鹿が成長しませんようにっ!!
…って、全力でね。
祈りに祈って祈り倒してみたわ。
まあ、どうなるかは分からないんだけど。
とりあえずは馬鹿が追い掛けて来る前に先行したいとは思ってる。
さっさと試合を勝ち進んで逃げ切りたいの。
でもね?
そうは思うんだけどね。
そこまで考えてから。
私はひっそりとため息を吐いてしまったわ。
…だってね?
ちゃんとね。
自分でも分かっているからよ。
…ううん。
違うわね。
最初から気付いてるって言うべきかな?
たった一つの事実。
そして覆せない現実。
それはね。
私は決して強くないっていうことよ。
天城総魔のような天才でもなければ、
翔子先輩のような実力もないわ。
それに優奈のような能力さえも。
私にはないの。
…何もないのよ。
どうしてこの4人で行動してるのかが分からなくなるくらい。
私は圧倒的に落ちこぼれなの。
ここまで勝ち進めたこと自体が奇跡的なんだって思えるくらい。
私は私自身の実力を理解しているわ。
明らかに劣る私の実力で。
次の会場を勝ち抜ける自信なんてないの。
…どれだけ願っても。
みんなとは違うから。
だから私はここで脱落するかもしれない。
そんなふうに考えてしまうのよ。
…だから。
私の心は後ろめたい気持ちで一杯になってた。
そもそも住む世界が違うって思えるくらい凄い人達の中で、
ポツンと佇むような感覚って言えばいいのかな?
私はこの中に入れるような人間じゃないってね。
自然と感じていたの。
「ねえ、優奈…?」
「ん?どうかしたの?悠理ちゃん」
思わず呟いてしまったせいで、
優奈は私に振り返って不思議そうに首を傾げていたわ。
だから…言えないの。
「えっ?あ、ううん。何でもないの」
何も言えなかった。
この気持ちは…言えるわけがないから。
「…ごめんね。」
謝ることしかできなかったのよ。
「ちょっと呼んでみただけ。」
「そうなの?」
「うん。ごめんね。」
「ううん。いいよ」
私に疑問を感じながらも優奈は前を向いて歩き続けてる。
…ねえ、優奈。
優奈は今、何を考えてるの?
聞けない質問と言えない言葉。
色々なことを考えている間に、
目的の会場へとたどり着いてしまったわ。
ここにはどんな生徒がいるのかな?
…そして私は。
いつまでみんなと一緒にいられるのかな?
いつか離れることになってしまう恐怖。
みんなに置いて行かれてしまう不安。
そんな絶望的な気持ちを抱えながら。
次の会場へと足を進めたの。




