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THE WORLD  作者: SEASONS
4月7日
297/1390

記録更新中

《サイド:美袋翔子》



う~ん。


遅いわね~。



すでに時計の針は12時30分を指しているわ。


もうお昼を過ぎているのよ。



だけど待ち人きたらず、って感じなの。



私と龍馬と悠理ちゃんの3人で食堂の前で総魔が来るのを待ってるんだけど。



肝心の総魔が来ないのよね~。



そもそもここに来るかどうかさえ知らないけれど。


優奈ちゃんが一緒にいるのなら、

ご飯くらいはちゃんと食べようと思うはずだし。



いくら実験が忙しくても、

お昼くらいは食べるんじゃないかな~?



そう思って、すでに30分ほど待ってるの。



だけど。



全然来る気配がないのよね~。



「…なかなか来ないですね。」



呟いたのは悠理ちゃんよ。


問題児の『武藤慎吾』はまだ検定会場にいるらしいわ。



やる気満々の彼を置いて、

龍馬は一人で私達のところに戻ってきてる。



ずっと一緒にいるわけじゃないみたい

ね。



そのせいか、

今の悠理ちゃんには心の余裕が見えるわ。



「それで?どうだったの?」



問題児の様子を尋ねてたんだけど。


龍馬は静かに首を横に振っていたのよ。



…あ~、うん。



これはあれよね?


ダメだったってことよね。



あれから一時間ほど試合をしてたにもかかわらず。


結果は散々だったみたい。



「現在進行系で、大絶賛全敗記録更新中だよ。」



うわ~。



結局一勝も上げられないまま。


龍馬は休憩の為に問題児と別れたらしいわ。



「そんなにひどいの?」



たいして興味もないけど。


一応、話を聞いてみると。



「もっと基礎からやり直さないとダメだね。根本的な部分から問題が山積みだったよ」



龍馬はため息まじりに答えてくれたわ。



「例えば?」


「戦術の基本とかかな?問題が多すぎて上手く説明できないけど。彼の場合、根が真面目すぎて真正面からの突撃以外の戦闘方法

が皆無だったからね。そういう性格的な部分が最大の問題だと思うよ。」



あ〜、なるほどね。


私の身近にもいるわ。



そういうたぐいのバカが…ね。



「つまり、真哉の同類なのね?」


「あー、うん。まあ、そんな感じかな?ただ、残念なことに正面から戦えるだけの実力がないのが致命的なんだけどね。」



ふ~ん。



「大変ね~」



口では会話を続けながらも、

実はあまり興味がないからほとんど聞き流していたわ。



最弱争いなんて、

聞いていても面白くないしね。



だから悠理ちゃんに視線を向けて様子を見たりしてるの。



まあ、今は退屈そうにしてるけど。



だけど悠理ちゃんは悠理ちゃんなりに頑張ってたんじゃないかな?



私と二人で行動してからの悠理ちゃんは予想以上の勢いで試合に勝ち進んでいたからよ。



たぶん。


よっぽど彼に追いつかれるのが嫌だったんでしょうね。



対戦成績は7戦5勝で試合に勝った回数の方が多かったのよ。


その結果として更に伸ばした成績によって、

現在あの会場では上位に位置しているわ。


悠理ちゃんの現在の生徒番号は10135番よ。


ほとんどの試合は新入生の初心者が相手だからそれほど驚く結果ではないけどね。


それでも少しずつ成長してることを考えれば十分に意味のある試合だったと思うわ。



「どう悠理ちゃん?疲れた?」


「あ、はい。ちょっとは…。あ、でも、まだまだ大丈夫です!」



私に気を使って笑顔を見せてくれてる。


こういう態度は健気だと思うわ。



最初の頃の強気な態度には困ったけれど、

こうして普通に話していればちゃんとした子に思えるのよね~。



成美ちゃんほどじゃないけれど。


いい友達にはなれると思うわ。



個人的にね。


健気な子が好きなのよ。



「こうして待つのは嫌いじゃないけど、さすがに暇よね~」


「…そうですね。」



悠理ちゃんは退屈を紛らわせるかのように周囲を見渡してる。


優奈ちゃんを捜してるのかな?



やることがないままのんびりとした時間を過ごす隣で…


私はあまりの退屈さに欠伸が出そうになっていたわ。



う~ん。



ちょっぴり眠たくなってきたかな~?



何もしない時間って結構眠くなるのよね。


そんなふうに思った瞬間に。



「あっ!」



突然、悠理ちゃんが声を上げたのよ。



「優奈ぁ~!」



元気良く手を振り出した悠理ちゃんの視線を先を追ってみると。



…むむぅ!!



二人で仲良く並んで歩く総魔と優奈ちゃんの姿が見えたわ。



再び燃え上がる嫉妬の炎。


だけど今回は理性の力で感情を押さえ込む。



何をしてたのかは知らないけどね。


総魔の前で不機嫌な顔は見せられないのよ。



その一心だけで、無理やり心を落ち着かせたの。



「おかえり~優奈~!」


「悠理ちゃん。ただいま!」



総魔から離れて駆け足で進む優奈ちゃん。


逆に私は総魔に歩みを進めたわ。



「お帰り、総魔!実験はどうだったの?」



きわめて平静を装いながら尋ねる私に、

総魔はいつものように感情の見えない表情で答えてくれる。



「幾つか収穫はあった。あとは実験を重ねるだけだ。」



実験?


それが何か分からないけれど。


総魔がそんなふうに言うっていうことは、

すでに確信として考えてることがあるっていうことよ。



「聞いたら教えてくれる?」



前もって確認してみる。



断られたらそれはそれ。


緊張しながら問いかけてみた私に。



「ああ」



総魔はごくごく自然に頷いてくれたわ。



やった!



総魔の返事を聞けたことで、

心の中で思いっきり喜んだわ。



どうしてって?


まだまだ大丈夫だからよ。



色んな意味で不安だったけどね。


話を聞けるだけで少しは安心できるの。



付いてこなくていいって言われちゃったけど。


完全な部外者扱いじゃないって思えたからよ。



そんなことを考えながらも、

問題の優奈ちゃんに視線を向けてみる。



ん~。



今朝とは違うわね。


今の優奈ちゃんは緊張から解放されて普通に振る舞ってるように見えるわ。



まあ。


緊張どうこう以前に、

優奈ちゃんと悠理ちゃんの二人が揃ってるからかも知れないけどね。



数時間ぶりに再開した二人。



悠理ちゃんは帰ってきた優奈ちゃんに自慢げに生徒番号を見せてる。



「見てみて、優奈!」


「え?うわ~、すご~い!悠理ちゃん凄く頑張ったんだね!」



素直に喜ぶ優奈ちゃんも可愛いわね~。


これが普段の優奈ちゃんの姿なのかな?



そう思うと自然と笑みがこぼれてくるわ。


別にバカにしてるわけじゃないわよ?



こういうほのぼのとした光景を見てると、

一人で勝手に嫉妬に燃えてた自分が馬鹿馬鹿しく思えるからよ。



気にしすぎだったのかな?ってね。


自分に問いかけてみたりするわ。



もちろん返事は返って来ないけどね。


それでもなんとなく安心する自分がいるの。



もう少し気楽に考えてもいいのかもね。



まあ、その油断が絶望に変わらないように努力は続けるとして。



ひとまず嫉妬は控えようと思うわ。



そんなふうに考えていると。


さらにもう一人、

私達の側に歩み寄ってきたのよ。



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