理論の組み直し
どさっ…と、所長さんが倒れた瞬間に。
実験場を包み込んでいた結界が解除されて、
西園寺さん達が所長さんに駆け寄りました。
「所長!?しっかりしてください!」
所長さんの体を抱き起こす西園寺さん達ですが。
所長さんは指一つ動かすこともできずに完全に意識を失っている様子です。
「誰か、医療部門に…っ!」
慌てる西園寺さんが職員の方に救援の指示を出そうとしていたのですが。
「待て」
指示を遮った総魔さんが所長さんに手を伸ばしました。
「問題ない」
声をかけた直後に全員の視線が総魔さんの右手へと集まりました。
その次の瞬間に、小さな光が輝いて。
「…うっ…!?」
所長さんが意識を取り戻したんです。
「…何、が…?」
ゆっくりと体を起こす所長さんはまだ意識がはっきりとしていないようです。
周囲を見渡しながら今の状況を把握しようとしていました。
「俺は、確か…?」
力尽きて倒れたところまでは思い出したようですね。
記憶を取り戻したことで、
ゆっくりと総魔さんに視線を向けています。
「きみが助けてくれたのか?」
「ああ。魔力の供給の理論も組み直すことが出来るようになったからな。」
魔力の供給?
また私の知らない話が出てきました。
色々と聞きたいことが増えすぎて
何から聞けばいいのかさえわからなくなってしまう状況ですが。
立ち上がった総魔さんは座り込んでいる所長さんから視線を逸らして私の側まで戻ってきてくれました。
「怪我はないか?」
穏やかで、とても優しい言葉です。
単なる問いかけというよりも、
温かな気持ちが感じられます。
だから私は慌てて首を縦に振りました。
「は、はい。大丈夫ですっ。」
「そうか、ならいい」
私の確認をしてから背中を向けた総魔さんは、
今度は西園寺さん達に話し掛けていました。
「記録はどうなっている?」
「え?あ、あ~。え、ええ…ちゃんと残っているわ。」
「見れるか?」
「ちょっと、待ってね。」
駆け足で観測所へと戻っていった西園寺さんは、
ごちゃごちゃと資料をかき集めてからまた駆け足で戻ってきました。
「今の実験に関しては整理が出来ていないから、数が多いけど…。」
「構わない。全て見させてもらう」
書類を差し出してくれた西園寺さんから資料を受けとってから、
総魔さんは所長さんに話し掛けました。
「動けるか?」
「ああ、きみのおかげで特に問題はない。」
立ち上がった所長さんはしっかりとした足取りで総魔さんに歩み寄っています。
「結果から言えば実験は成功だと言えるだろう。あとは、記録の検証だが、きみも参加してくれるのか?」
実験記録に視線を向ける所長さんに対して、
総魔さんは小さく頷いてから西園寺さんから受けとった記録を所長さんへと差し出していました。
「じっくり検証させてもらうつもりだ。」
「ふむ。ならばひとまずこれで実験は終了だな。それでいいか?」
「ああ、問題ない」
「うむ。では俺の部屋に戻ることにしよう」
実験を終えたことで、
所長さんが職員の皆さんに解散の指示を出しました。
「実験終了だ!撤収の準備を開始しろ!」
指示を受けてすぐに後片付けを始める職員の皆さん達。
そんな状況の中で。
所長さんを先頭にして、
私と総魔さんと西園寺さんともう一人。
藤沢と呼ばれていた女性の方も一緒に、
所長室に向かうことになりました。




