心の底から
《サイド:近藤悠理》
…はあ。
これで何度目のため息かすら分からないわね。
試合場で馬鹿と向かい合う私。
今日で一週間連続なのよ?
さすがに飽き飽きしてきたわ。
「…いい加減、諦めたら?」
「いいや!今日こそ勝つ!!」
う~ん。
気合い十分の馬鹿だけど。
私にそんな元気はないわ。
馬鹿の発言をいちいち気にしてたらキリがないからよ。
「寝言は寝てから言いなさい。」
この台詞も何度目なのかな?
何だかもう、考えるのも面倒になってきたわね。
「準備は良いですか?」
尋ねる審判に無言で頷いてみる。
「やるぜ!!」
やる気満々の馬鹿の態度は変わらない。
あの元気はどこからくるの?
そんな疑問だけが浮かぶわ。
「それでは、試合始めっ!!」
「行くぜぇー!!」
試合開始と共に馬鹿が魔術の詠唱を開始してる。
まあ、悪くはないんじゃないかな?
決して早くはないけれど。
優奈に比べれば断然早いわ。
でもね?
そこまでは認めるけれど。
あくまでも優奈と比べてであって、
いくら落ちこぼれの私でも馬鹿に負けるつもりなんてないのよ。
「さっさと寝なさい。ファイアー・ボールっ!!」
詠唱が終わると同時に私の両手に炎の球が現れる。
そして炎の球を馬鹿に向かって解き放つ。
ただそれだけ。
燃え上がる真っ赤な炎の球が馬鹿の足元に着弾した次の瞬間に。
立ち上る猛火が馬鹿の体を飲み込んだわ。
「う…あああああっ!?」
体をまるごと包み込む炎の柱の中で、
馬鹿が全力で叫んでる。
「くっそおおおおおおおおーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
検定会場全域に響き渡るほどの叫び声。
その絶叫に驚いた周囲の生徒達の視線を集めながら、
馬鹿は一歩も動けないまま雄叫びだけを残してあっさりと力尽きたのよ。
試合時間は僅か18秒。
呆気ないほどあっさりと、
馬鹿が7度目の敗北を重ねて終わったわ。
「試合終了!!」
…はあ。
本当に無駄な時間だったわね。
審判の合図と共にさっさと試合場を離れることにしたわ。
「くっ…次こそ、は…」
はいつくばりながら何かを呟いていたけれど。
馬鹿の言葉は無視しておくのが一番よね?
気にしてたら余計に調子に乗るだけなんだから。
考えるだけ時間の無駄なのよ。
救急班の的確な治療を受けながら、
会場から運び出されていく馬鹿の様子を眺めつつ。
もう一度ため息を吐いてみる。
…お願いだからもう二度と来ないで。
そんな切実な願いが叶うことを心の底から祈りながら。
先輩達の傍に戻ることにしたの。




