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THE WORLD  作者: SEASONS
4月7日
278/1378

私の1週間

《サイド:近藤悠理》



はぁ~。



何だかややこしいことになった気がするわ。



優奈とはぐれちゃったから御堂先輩と一緒に検定会場に戻ってきたのはいいんだけどね。



…そこまでは良いんだけど。



一緒にいる美袋先輩が何故か尋常じゃないくらいに怖いのよ。



見た感じだと怒っているようには見えないのに、よ?



それなのに。


とてつもない威圧感を感じるの。



なんでかな〜?



さっきまではそんなことなかったのに。



天城総魔と優奈がいなくなってから物凄く雰囲気が変わった気がするのよね~。



…う~ん。



もしかして。


置いて行かれたから怒ってるのかな?



実際にどうかは知らないけど。


必要ないなんて言われたら、

誰だって機嫌が悪くなるとは思うわ。



私だって言われたくないしね。



だから怒るのは当然だと思うんだけど。


そもそも天城総魔と先輩達の関係がよく分からないのよね~。



…だけど、まあ。



いちいち話を聞くつもりはないわ。



興味がないわけじゃないけど。


面倒なことには巻き込まれたくない感じ?



とりあえずはあの天城総魔に負けたことで、

今はライバル関係なんだって思うことにしておこうかな?



そんな感じでいいんじゃない?



だって聞いたところでどうにか出来るわけじゃないし。


最上位の人達の力関係なんて正直どうでもいい話だしね。



そもそも。



…私は先輩達のようにはなれないし。


…私は近藤家の落ちこぼれだから。



実力のある人達の会話になんて入れないの。



学園長を務めているおじいちゃんを筆頭にして、

両親も兄弟もみんな優秀な魔術師だと思ってる。



でも、ね?


私は違うの。



魔術師としての才能はあったけど。


その才能は決して褒められる実力じゃなかったからよ。



魔力、成績、技術、全て最低ランク。



入学試験でも下から数えた方が断然早いってくらいの落ちこぼれ。



同じように下位の成績の優奈と仲良くなるのに時間はかからなかったわ。



入学式でたまたま私の前に座っていたのが優奈だったのよ。



当然、優奈の斜め後ろには天城総魔がいたわけだけど。


大事なのはそこじゃないわ。



大事なのは優奈と知り合って友達になったっていうこと。



それから私は何度も試合を繰り返して、

少しずつ順位を上げていったわ。



もちろん勝った回数よりも負けた回数の方が圧倒的に多いけどね。



それでも諦めないで試合を繰り返し続けたの。



そうして気が付けば。


優奈から100番ほど下にいた私が、

優奈よりも10番ほど上回ったのよ。



それが私の一週間。



たったそれだけの変化だけど。


それでも私にとっては精一杯の結果だったの。



…でもね。



そんな私でも天城総魔の噂くらいは知ってるわ。



次々と検定会場を乗り越えて、

僅か数日で頂点に上り詰めた男だからよ。



その実力は疑いようがないわよね。



当然、最強の座にいた御堂先輩や美袋先輩の実力も私には遠く及ばないほどの高みだと思ってる。



だからね。


どうして今一緒にいるのかが理解出来ないくらい不自然な状況だと思うのよ。



「あ、あの…」



御堂先輩に呼び掛けてみる。


振り返ってくれた先輩は優しく微笑んでくれていたわ。



「ん?どうかしたのかい?」



優しい言葉だと思う。


実力だけじゃなくて、

容姿も他の男と比べれば断トツに飛び抜けているしね。



これで性格も完璧となるともう完全に王子様って感じよね?



今まで噂には聞いてたけど。


確かに憧れの的になるのは必然といえるかもしれないわ。



それくらい学園中の女子から絶大な人気を誇る御堂先輩と肩を並べて歩いてるのよ?



それだけで周りの女子から注目の的になってしまうわね。



…う~ん。



これってどうなのかな?



良いのかな?


悪いのかな?



誇らしい優越感は感じるけれど。


周囲の視線の鬱陶うっとうしさが交わって複雑な気持ちになるかも?



でもまあ、美袋先輩がいるから嫉妬を買うようなことはないと思うけどね。



だけど、このあとがちょっと怖いかな。



変な嫌がらせを受けたりしないよね?



そんなことを考えながらも、

とりあえず御堂先輩に話し掛けてみることにしたの。



「そう言えば、先輩達はどうしてここにいるんですか?」


「うーん。それはまあ、簡単には説明出来ないけど、 僕には必要なことだと思ったから、かな。」



…う〜ん。



聞いても良く分からない。


こんな最下層にどんな価値があるのかなんて分からないからよ。



「必要なことですか?」


「ああ。どんなことでも経験になりえるからね。そういう積み重ねが成長に繋がると思っているんだ。」



ふ〜ん。


成長ね~。



…出来るのかな?



先輩の言葉が私の心に突き刺さる気がしたわ。



私はどうなんだろう?


今よりも成長出来るのかな?



何となく微妙な気分になっちゃったんだけどね。



『近藤家の落ちこぼれ』



その言葉が頭をよぎってしまう瞬間だったのよ。



だから、かな…?



「先輩は良いですね。それだけの力があるんですから…。」



どうしてか分からないけれど。


そんな言葉を口にしてしまったのよ。



別に嫌味を言いたかったわけじゃないわ。


でもね。


羨ましいとも思えなかったの。



ただ単に…。



ひねくれていたんだと思う。



だからかな?



「………。」



先輩の顔がね。


少しだけ真剣な表情に変わったような気がしたの。



もしかして怒らせたのかな?



後悔と不安を感じてしまったんだけど。


だけどそうじゃなかったみたい。



「どんな力があっても、負けることはあるんだよ。」



先輩は教えてくれたの。


先輩の考え方というか。


今の気持ち、かな。



「勝つ自信はあったんだ。だけど、僕は勝てなかった。」



…うぅ~ん。



これって天城総魔に負けたっていう話よね?



先輩のような完璧な人でも負けることがある。



それを認める発言だったと思うわ。



「だからね。僕は思うんだ。」



先輩の表情は真剣そのものだけど。


先輩の目は優しさに満ちてた。



「諦めさえしなければ、前に進む勇気さえ持ち続けていれば、いつか辿り着けるかもしれないってね。」



…勇気、ね。



あるかな?


ないかな?


よく分からない。



だけどね。


先輩だって出来ないことがあるっていう意味だと思う。



それくらいは私にも理解できたわ。


そこまで理解できないほどひねくれてるわけじゃないから。


先輩の気持ちはちゃんと伝わってた。



「先輩でも後悔することがあるんですか?」


「いや、ちょっと違うかな。後悔とかそういうことじゃなくてね。たどり着きたいと思うんだ。僕自身の目的に、ね。」


「目的、ですか?」


「些細なことだよ。だけど僕にとっては大切なことなんだ。悠理。きみは何の為に力を求めるんだい?」



力を求める理由?



「私は…」



なんだろう?


私は何がしたいのかな?



自分でも良く分からない。


考えようともしなかったから、

何を目指せばいいのかもわからなかったわ。



「どうなのかな…?」


「もしも目的があるならその為に努力をすれば良い。だけどね。もしもまだ何もないのなら、これから探せばいいと思うんだ。いつの日か夢は叶う。そう信じることが強くなるための第一歩だと思っているからね。」



強くなるために。


信じる事が大切だって先輩は言ったわ。



だけど。


私は何を信じれば良いのかな?



夢なんて考えたこともないし。


目的なんて何もないのよ。



…だから、なの?



だから私は落ちこぼれなのかな?



分からない。


だけど少しだけ勇気をもらえたような気はするかな。



先輩の言葉のおかげで、

私も前に進めるような気がしたのよ。



「先輩!」



呼びかけてみた私を先輩は不思議そうに見つめてる。



だけどね。


先輩が教えてくれたから。



私はもう一度、頑張ってみようと思えたの。



…だから。



「ごめんなさい!勝手なことばかり言って…ごめんなさい。」



ちゃんと謝ろうと思ったの。



ひねくれていても。


すねていても。


私の現実は変わらないから。



ちゃんと向き合おうと思ったの。



「私も頑張って見ます!どこまで出来るかわからないけど、自分を褒められるように頑張ってみます!」


「ああ、良いんじゃないかな。応援するよ。一緒に頑張ろう。」



頑張るって言った私を先輩は応援してくれたの。


その笑顔が私の心に焼き付いてしまう瞬間だったわ。



…うん。



これはやばいかも。


先輩のことを好きになってしまいそうだったわ。



でもね?



先輩と付き合いたいとかそんな贅沢は思わない。



釣り合わないって分かってるから。


私は私の価値を理解してるから。



今は先輩の笑顔が見られれば、

それで十分だって思ったの。



だからこその『憧れ』なのよ。



他の女子が思うように、

私もそれだけで幸せかな?って思えたの。



…間違いなく、先輩と私では釣り合わない。



ちゃんと自分自身を自覚してるから。



自分で自分を笑いたくなるくらいに、ね。



私は私を低く評価しているの。



そして。


そんなふうに考えながら受付にたどり着いた私達が試合の手続きを始めようとしたその時に。



面倒な事態が起きたのよ。



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