大人の女性
《サイド:深海優奈》
…えっと。
悠理ちゃんと別れた後。
私は総魔さんに案内されるまま『ルーン研究所』というところまでやってきました。
とてもとても長い階段を下りた先にある広大な研究所です。
前方と左右に広がる通路の長さが、
地下にあるはずの研究所の広さを物語っているように感じます。
一体、どれくらいの大きさがあるのでしょうか?
はっきりとは分かりませんが、
もしかしたら地上にある魔術研究所の建物より広いかもしれません。
…ですが。
今はそれよりももっと気になることがあります。
それはここへ来た目的です。
どうして私をここに連れてきたのか、
まだ何も聞いていないからです。
総魔さんはここで何をするつもりなのでしょうか?
色々と聞きたいことはあるのですが、
知らない人と話をするのが苦手なのでこれまで何も聞けずにいました。
どうして良いか分からずに戸惑ってしまいます。
そんな私を引き連れながら、
総魔さんは立ち止まることなく受付に向かいました。
「用があるんだが、いいか?」
「ん?」
総魔さんに話し掛けられたことで、
何かの作業中だった様子の一人の女性が振り返ってくれました。
細長い眼鏡が良く似合っていますね。
研究所の制服を完璧に着こなしているとても綺麗な女性です。
私とは全然違っていて、
大人の女性という雰囲気が少し羨ましく思えました。
「あら?また来たの?毎日忙しそうね…って、今日は見慣れない子を連れてるわね。あなたの彼女?」
えっ?
か、か、か、彼女っ!?
『彼女』と言われた瞬間に。
何故かとても恥ずかしくなって、
うつむいてしまいました。
「あらあら…。」
うつむく私を見たお姉さんは楽しそうに笑っています。
「ごめんなさいね。からかうつもりで言ったわけじゃないのよ。」
すぐに謝ってくれたお姉さんは、
私に微笑んでから隣にいる総魔さんに視線を戻しました。
「それで、今日はどんな用件かしら?」
「吸収の実験がしたい。」
「………。………。………。………。えっ?」
数秒間動きを止めてから、
お姉さんは首を傾げてしまいました。
総魔さんの言葉の意味が理解できなかったようです。
さすがに私から見ていても今の説明では言葉が足りなさすぎると思いましたが、
ただただ黙ってついてきただけの私に言えることなんて何もありません。
だから今はこのまま総魔さんにお任せすることにしました。
「詳しい話はあとで話す。今は実験が可能かどうかが知りたい。」
「う〜ん…。実験、ね~。」
一方的に問いかけられたことで、
お姉さんは疑問を浮かべながらも手続きを始めたようでした。
「実験室なら空いてるわよ。何をするつもりかは知らないけど、どの程度の職員を集めればいいのかしら?」
「幾つか試したいことがあるだけだからな。それほど手を煩わせるつもりはない。」
「あら、そうなの?それじゃあ、適当にかき集めておくわね。一応、あなたに関する事は所長に話を通すことになってるんだけど、どうする?直接会いに行く?」
「そうだな。その方が話が早いだろう」
「そう。だったら今は所長室にいるはずだから遠慮なく行っていいわよ。私も準備が整い次第迎えに行くから、それまで適当に話でもしてて。」
「ああ、分かった。」
「ええ。じゃあ、また後でね。」
話を終えたお姉さんは奥の部屋へと消えて行きました。
残されたのは私と総魔さんだけです。
…え〜っと~。
受付を無人にしてしまって良いんでしょうか?
あまり良くないような気がするのですが、
許可を得た総魔さんはためらうことなく歩き出しています。
「こっちだ。」
「あ、はい。」
誰もいなくなった受付を離れる総魔さんに連れられて、
次の場所へと移動することになりました。




