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THE WORLD  作者: SEASONS
4月7日
275/1402

拒絶

《サイド:御堂龍馬》



うぅ~ん。



この微妙な空気はなんだろうか?



どうしてかは分からないけれど。


尋常じゃないくらい居心地が悪い気がするんだ。



理由は分からないけれど。


ものすごく重苦しい雰囲気を翔子から感じてしまう。



どうかしたんだろうか?


何かあったんだろうか?



怒っているようには見えないんだけど。


何故か強烈な威圧感を放っているような気がする。



…どうしたのかな?



聞いてみたい気がするけれど。



今は話し掛けることさえも許されないような、

そんな異様な圧迫感があった。



…上手く言葉では表現出来ないけれど。



近づけない雰囲気っていうのかな?



下手に話し掛けて翔子と視線を合わせようものなら、

命に関わるような危険すら感じるんだ。



きっとそうなるって。


そう思ったんだ。



こういう気配を殺気と言うんだろうか?



実際にどうかは知らないけれど。


話しかけるのは止めておこうと思う。



…そもそも。



今は彼に確認することが先決だからね。



翔子に関してはこのままそっとしておくことにしよう。



「確認なんだけど、彼女は本当に吸収の能力を持っているのかい?」


「ああ、間違いない。」



僕の問い掛けに頷いてから、

彼は説明を始めてくれたんだ。



「俺もこの目で確認したからな。疑うつもりはない。吸収の力が働いていたはずだ。ただ…」



…ただ?



彼は一呼吸の間を置いてから言葉を続けた。



「俺と同じとは言えないだろうな。」



ん?


同じじゃない?



彼の発言に疑問を感じた瞬間に。



「え…っ!?」



翔子も同じ疑問を感じたのかな?


慌てて彼に振り返っていた。



「どういうことなの!?」



戸惑う翔子だけど、その気持ちは僕も同じだ。


同じ吸収の力を持っているはずなのに、

同じ能力じゃない?



一体、どういう意味なんだろうか?



彼の説明を聞きたくて、

言葉の続きを待つことにした。


そんな僕達に彼は理由を教えてくれたんだ。



「俺が扱える吸収は、あくまでも魔術としての能力だ。分かりやすく言えば補助系統の属性だな。身体強化の反対となる弱体化と言っても良い。だが、深海優奈は違う。確認した吸収の能力は『特性』に近い。」



ん?


特性?


彼は属性で、彼女は特性?



その違い?



だとすれば余計に分からなくなってしまう。


この違いはどういうことなんだろうか?



「全然、分かんないんだけど?」


「俺の吸収の能力は魔術によって起こせる現象でしかない。」



悩む翔子にも分かるように、

彼は説明を続けてくれたんだ。



「ホワイト・アウトかルーンを使用しなければ吸収の能力は発動しないからな。だが、深海優奈の吸収には魔術が関与していなかった。」


「あ…っ!」



彼の言葉を聞いた瞬間に。


何かを思い出した様子の翔子が深海さんに振り返った。



「確かに…優奈ちゃんは魔術を使ってなかったわ。それは断言出来る!」


「…あ、はい。すみません。」



翔子に見つめられたことで、

深海さんが即座に謝っている。



話しかけられるのが苦手なのかな?


それとも翔子が怖いのかな?



うーん。


どうだろう?



あるいはその両方かな?



特に謝る必要はないんだけど。


反射的に謝ってしまったようだね。



そんな深海さんを翔子がまじまじと見つめてる。



ただそれだけのことで縮こまってしまう深海さんは、

このまま放っておくと緊張しすぎて倒れてしまうんじゃないかな?



…色々と心配になってくるけれど。



僕達はまだ初対面だからね。


あまり性格に関しては聞かない方がいいと思う。



それよりも今は彼に確認することが先決だ。



「きみと彼女の違いは何となく理解出来る。だけど、もしも本当に別のものだとしたら、彼女の力は何なんだ?」


「………。」



最も核心となる部分を尋ねてみたことで、

彼は深海さんを眺めながら答えようとしていた。



「おそらくは…いや、止めておこう。」



はっきりとした答えは出さなかったんだ。



「確証のないことは言わないほうがいいだろうからな。」



答えを避けて口を閉ざしてしまった。



だけど。


それでも。



今の発言を考慮すれば何らかの仮説を立てているのは間違いないはずだ。



ただその仮説を実証するだけの根拠がないことで、

勝手なことは言えないという考えのようだね。



…それはまあ、良いんだけど。



その結果として。


彼が口を閉ざした為に、

話が止まってしまったんだ。



無理に聞き出すことは出来そうにない。


その権限が僕にはないからね。



そもそも誰の指示も受けそうにないけれど。


彼に強制はできない。



だけど今回は僕達が問いかける前に、

彼が今後の方針を教えてくれた。



「現段階ではまだ確実なことは言えないが、ある程度の実験を重ねれば確証は得られるはずだ。」



…実験、か。



まあ、確かめなければ分からないというのは当然の判断だと思う。



「どうする?」



彼が深海さんに問い掛けている。



「自分の力が何なのか、知りたいと思うか?」



彼からの問い掛けに、

深海さんは戸惑いながらも小さく頷いていた。



「…は、はい。もしも、出来るのなら…。」



知りたいと願うようだ。


控えめに願う深海さんの言葉を聞いたことで、

彼は静かに立ち上がった。



「良いだろう。その気があるのなら力を貸そう。」


「…え?本当ですか!?」



期待の眼差しを向ける深海さん。


その直後に。


再び強烈な威圧感が翔子から放たれ始めた。



…うわぁ。



再び訪れた重苦しい雰囲気。



こういう時にどうすればいいのかなんて僕にも分からない。



翔子に話しかけるべきだろうか?


それともそっとしておくべきだろうか?



どちらが正解なのかわからないけれど。


ひとまず僕は話の流れを変えるために、

彼に話し掛けることにした。



「手を貸すと言っても、どうするつもりなんだい?」


「研究所で実験をする。おそらくそれだけで優奈の特性が判明するはずだ。」


「…と言うことは、きみにはもう彼女の答えが分かっているのかい?」


「ああ。今はまだ仮説でしかないが、核心に近いとは思っている。」



…なるほど。



やっぱりすでに答えは出ているようだね。



だとすれば。


実際に調査をして確信を得たい、という感じかな?



「これからすぐに行くのかい?」


「ああ、そのつもりだ。」



僕の質問に答えてから、

彼は早々に歩きだしてしまった。



「行くぞ。」


「…あっ、はいっ!」



彼に呼ばれたことで、

深海さんが慌てて後を追い掛けていく。



そして。



「だったら、私も…っ!」



急いで駆け寄ろうとした翔子だったけど。



「必要ない。」



その前に彼が拒絶してしまったんだ。



「…ぇ…っ!?」



戸惑う翔子の動きが止まる。


そんな翔子に振り返ることさえせずに彼は言葉を続けていた。



「今から行うのは吸収の実験だ。翔子がついて来ても時間の無駄でしかない。」



…い、いや。



それは、どうなのかな?



言い方の問題もあるとは思うけれど。


ついて行くくらいは自由じゃないかな?



そもそもの前提としてついていかないことに無駄がないとも言い切れないよね?



僕としてはそう思うんだけど。



…まあ、考え方は人それぞれだからね。



僕が口出しすることではないとも思う。



「翔子は翔子のやるべきことをすればいい。」


「………。」



簡潔に答えた彼の発言によって、

翔子は完全に動きを止めてしまっている。



その間にも歩き続ける彼と深海さん。


そんな二人の背中を見送る僕と近藤さん。



…なんだろう?



この状況で恐れることなんて何もないはずだ。



…それなのに。



どうしてだろうか?



何故かさっきよりも強烈な威圧感が翔子から放たれているような気がしてしまう。



僕の頬を流れ落ちる汗が正体不明の恐怖を物語っているかのように、ね。



「し…翔、子?」



声をかけてみた僕に、

翔子がゆっくりと振り返った。



「…ん、なになに?どうかしたの?りょうま。」



必要以上に滑舌よく答える翔子の表情には一切の感情が感じられなかった。



そのせいだろうか?



翔子の瞳に恐ろしいほどの『怒り』が込められているような気がしたんだ。



「え、あ、い、いや!?な、なんでもないよ…。」



あまりの迫力に負けてしまった。


これ以上翔子に話し掛けることが出来なくなってしまったんだ。



翔子を見ていてこれほどの恐怖を感じたのはこれが初めてかもしれない。



だから、というわけではないけれど。


何気なく視線を逸らしてみると。



やはり怯えた雰囲気で翔子から視線を逸らす近藤さんが見えた。


どうやら翔子が怖いと思ったのは僕だけじゃなかったらしい。



深海優奈さんがいなくなったことで、

一人残されてしまった近藤さんも居心地が悪そうに視線をさ迷わせている。



…うーん。



どうしようか?



翔子を放置するわけにはいかないし。


かと言って話し掛けられる雰囲気でもないし。



それに近藤さんをこれ以上この場に留まらせるのも可哀相な気がするよね?



「えーっと。近藤悠理さん、だったかな?深海さんは行ってしまったけど、きみはこれからどうするんだい?」


「ぇ?私?あ、あ~。まあ、適当に…?」



返事に困る様子で言葉を濁している。


だけどしばらく考えてから僕に話し掛けてきたんだ。



「とりあえず悠理でいいよ。先輩から悠理さんって呼ばれると何だか変な感じがするし」


「あ、ああ、わかったよ。悠理と呼ばせてもらうね。まあそれはそれとして、このあとに予定はあるのかい?」


「え?…ううん。別に何も…。」



悠理は首を左右に振っていた。



特に予定はないようだ。



僕としてはここで別れてしまってもいいんだけど。


深海さんが同行しているのなら彼が帰ってくる頃にまた悠理とも合流するような気がするからね。


ここで一つ提案をしてみることにした。



「それなら僕達と一緒に会場に戻らないかい?彼の実験がいつ終わるのかは分からないけれど、深海さんも一緒にいるのなら、僕達と一緒にいればあとで合流出来るだろうからね。」


「…あ~、うん。そうかも…ね。」



どうやら納得してくれたようだね。


しっかりと頷いてくれたんだ。



「…じゃあ、そうしようかな?」


「ああ、よろしくね。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


「うん。」



こうして残された僕達はひとまず検定会場に戻ることになったんだ。


今もまだ危険な空気を放ち続けている翔子を引き連れながら…ね。



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