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THE WORLD  作者: SEASONS
4月7日
269/1378

初勝利

《サイド:深海ふかみ優奈ゆうな



「勝者、深海優奈!!」



審判員さんの合図によって試合が終わりました。



…ですが。



まさか私が試合に勝てるなんて思ってもいませんでした。



だから。



だから試合が終わった今でもまだ信じられません。



自分でもどうしてあれほどの魔術が使えたのかが分からないからです。



ただ何となく。


何となく出来るような気がして。


気が付けば詠唱が終わっていたんです。



…そして。



対戦相手だった美袋さんが倒れていました。



何も覚えていないというわけではないのですが、

自分でも何をしたのかが分からなかったんです。



「やったじゃん、優奈!凄いよ!!」



駆け寄ってきてくれた悠理ちゃんが、

戸惑う私にすごく嬉しそうな笑顔を見せてくれました。



「初勝利、おめでとう!!」


「…う、うん。ありがとう。悠理ちゃん」



喜んでくれる悠理ちゃんにお礼を言ってから、

倒れている美袋さんに視線を向けました。



…本当に、勝てたんですよね?



今でもまだ実感はありません。



試合場に倒れている美袋さんに救急班の人達が駆けつけて救助しようとしていたのですが、

その活動を一人の男子が制止していました。



そして救急班の方々を遠ざけてから、

倒れた美袋さんの体を優しく抱き抱えていました。



「…問題ない。翔子の治療は俺が行う。」



救急班の人達に背を向けたあとで、

美袋さんを抱き抱えたまま私達の方へと近付いてきます。



…えっと。


…その。



怒られるのでしょうか?


そんなふうに思ってしまいました。



…ですが。



「よく頑張ったな。」



褒めてもらえたんです。


どうしてかは分かりませんが。


美袋さんに怪我をさせてしまったのに、

怒るどころか褒めてくれたんです。



「す、すみません…。」


「いや、気にする必要はない。」



………。



私に声をかけてくれた男性の表情からは優しさが感じられました。



何となくですが、楽しそうに見えたんです。


だから、怒ってはいないと思います。



むしろ、こんな私を褒めてくれたんです。



不満の言葉なんて何も言わずに、

彼は私を褒めてから背中を向けて歩きだしました。



その後ろ姿を見た瞬間に。



「…あ、あの…っ!」



何故か呼び止めてしまいました。



…ですが。



自分でもどうして呼び止めたのかが分かりません。



だけど。



そうしなければいけない気がして。


気が付けば呼び止めていたんです。



「あ…あの…っ。その…っ。」



何かを言おうと思うんです。



それなのに。


何を言えば良いのか分からなくて。


俯いてしまいました。



「…優奈?」



心配そうに私の顔を覗き込む悠理ちゃんですが、

私は彼に視線を向けるだけで精一杯でした。



「そ、その…」


「何か言いたいことがあるのなら…」



上手く話しかけられない私に彼が話し掛けようとしてくれたのですが、

その途中で別の男性が彼に駆け寄ってきました。



「翔子!?」



急いで駆け寄って来たかたに私達が視線を向けると、

走ってきた男性は彼に話しかけていました。



「一体、何があったんだ!?」


「翔子が負けた。ただ、それだけのことだ」



彼は落ち着いた表情で答えています。


ですが後から来た方は納得できない様子でした。



「だからそれが納得出来ないんだ!?こう言っては悪いけど、こんなところで負けるはずがない!」



…あ、あうぅ。


…そ、そうですよね。



私なんかが勝てるはずないですよね。


私としても勝てるなんて思ってもいませんでした。



ですので。


何を言われても仕方がないと思っていたのですが。



「…あ!ああぁぁ〜~っ!!」



納得できないと言いきっていた男性を見ていた悠理ちゃんが突然声をあげたんです。



「ど、どこかで見たことがあると思ったら!!」


「…ど、どうしたの?悠理ちゃん…。」



何を驚いているのでしょうか?



「知り合いなの?」


「ち、違うわよ!そうじゃなくて!あ~、ったくもう~。優奈は本当に何も知らないの!?あの人、あとから来たあの人が学園最強の御堂龍馬先輩よ!!」



…えっ!?



「えぇぇぇぇぇ~~~?」



驚いてしまいました。


それほど凄い人がここにいるなんて思ってもいなかったからです。



だから本当に驚いてしまったのですが。



そんな私達の会話が聞こえたのでしょうか?



御堂さんは私達に振り向いて話し掛けてきました。



「正確にはそうだった、と言うべきかな?今の僕はきみ達よりも番号が下の一生徒だよ」



今は違うと言ってから心配そうな表情で美袋さんに視線を向ける御堂さん。


その言葉を聞いていた悠理ちゃんが再び声をあげました。



「え?じゃあ、まさか!?…この人が!?」



学園の噂に詳しい悠理ちゃんが彼を指差しました。



「…この人が、御堂先輩に勝ったっていう。あの『天城総魔』なのぉぉぉ!?」



驚く悠理ちゃんの声に驚いた周囲の生徒さん達も彼に視線を向けていました。


悠理ちゃんの発言によって、

かなりの注目を浴びることになってしまったんです。



あううう~。



少し恥ずかしい気がします。


でも今はそんなことを気にしていられません。



目の前の状況を考えないといけないんです。


噂話にはうとい私ですが、

それでも悠理ちゃんが言った噂くらいは知っています。



一昨日おとといの夜に1位の成績が入れ代わったこと。


その勝者が『天城総魔』という名前の人だという話は聞いたことがあるんです。



もちろん情報源は悠理ちゃんですけど。



悠理ちゃんの推測が正しいとすると、

美袋さんを抱きかかえている彼が天城総魔さんということになります。



突然現れた有名人に騒然となる会場。


気まずそうに周囲を見回す御堂さんが、

総魔さんの腕を引いて歩きだしました。



「ひとまず会場を出よう。」


「ああ、そうだな。」



歩きだす御堂さんを追って、

美袋さんを抱き上げたままの総魔さんも歩きだします。



「あ…っ。」



置いていかれそうになったことで、

無意識のうちに一歩を踏み出していました。



…ですが。



追いかけていいのかどうかさえわかりません。



…どうしよう?



少し悩んでしまったのですが。


そんな私の様子を見ていた悠理ちゃんが、

突然私の手を引いて走り出しました。



「話したいことがあるんでしょ?だったら迷ってる場合じゃないわ!」


「で、でも…っ。」


「良いから、良いから!」



いつものように微笑んでくれた悠理ちゃんに手を引かれながら、

総魔さんの後を追いかけることになってしまったんです。



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