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THE WORLD  作者: SEASONS
4月7日
267/1390

何日ぶり?

「………。」



結局、ね。


不安そうなまま試合場に入った優奈ちゃんの表情は誰の目にもはっきりと分かるくらい怯えていたわ。



…大丈夫なの?



本当に試合できるの?



…って言うか。



泣いちゃうんじゃないかな?



色々な意味で不安を感じるんだけど。


一応、逃げるつもりはないみたい。



「頑張れ優奈〜!!」


「う、うん。頑張るよ、悠理ちゃん」



応援してくれる女の子に向けて、

優奈ちゃんはグッと気合を入れながら笑顔を返していたわ。



…ちゃんと笑えるのね〜。



微笑ましいというか、

癒されるというか。


初心者らしくて可愛らしいわ。



少しだけ見せた笑顔は、

とても魅力的な輝きをもっているように思えたからよ。



何て言うのかな?


花開くっていうのかな?



とっっっても可愛く見えたのよ。



まあ、そんなことはどうでもいいんだけど。



試合場で向かい合う私と優奈ちゃんの間にある空気は微妙な感じなのよね。



もうちょっとこう前向きな感じになってくれるとありがたいんだけど。


現状は私が優奈ちゃんを虐めてるような雰囲気になっちゃってるわ。



…うぅ~ん。



こういう雰囲気は苦手なのよね〜。


一方的な展開を望んで試合を組んだわけじゃないのよ。



準備運動って言うのかな?


軽い練習くらいの気持ちで試合に来たのに、

対戦相手の優奈ちゃんはいまにも泣き出しそうな感じなのよ?



ものすごくやりにくいわよね?



ちょっぴりため息を吐きながら試合開始を待っていたら。


ようやく審判員が中央に歩みを進めてきたわ。



そして試合が始まるという緊張感の中で、

可哀相なくらい体が硬くなってしまってる優奈ちゃんの姿が何故だか少しだけ懐かしく思えるわね。



…私にもね〜。



こういう時期があったのよ。


今ではもう覚えてないけどね。



誰だって初めてなら緊張して当然なの。


優奈ちゃんだけを責めることは出来ないわ。



だからちゃんと試合を経験させてあげないといけないのよ。



今後のために。


優奈ちゃんにとっても良い経験になるように。



…そうじゃないと。



ただの弱いものイジメになってしまうから。



…そんなくだらないことのためにここに来たわけじゃないんだから。



一度だけ深く深呼吸してから、

優奈ちゃんをまっすぐに見つめてみる。



気持ちを切り替えて真剣に試合に挑むためよ。



…って言っても。



もちろん全くの初心者相手に全力を出すつもりなんてないわよ?



彼女には悪いけれど。


限界まで手加減して軽く勝利するつもりでいるわ。



ただ、ね。



こうして総魔以外の生徒と試合をするのは何日ぶりだっけ?



…なんてね。



何気なくそんなことも考えちゃったの。



だけど今は優奈ちゃんを泣かせないことが最優先なのよ。



決して負けるはずのない試合なんだから、

一瞬で試合を終わらせるつもりでいるわ。



「準備はいいですか?」



審判員の質問に私は黙って頷くだけなんだけど。



「…あ、は、はい。大丈夫、です」



優奈ちゃんはオドオドとしながら小さく返事をしていたわ。



かすれるような声ね。


成美ちゃんと良い勝負かも?


もしかしたら私が思う以上に緊張してるのかもしれないわ。



「頑張れ~!!」


「う、ぁぅ…。」



悠理と呼ばれていた女の子の声援に対して、

ぎこちない微笑みを返す優奈ちゃん。


もうすでに笑顔を見せる余裕すらないみたい。



本当に大丈夫なのかな?



なんだかね。


見てるこっちの方が不安になってくるのよ。



試合が終わったあとで泣かれでもしたら、

とてつもなく気まずい感じがすると思うわ。



…はぁ。



本気でやめとけばよかったかも?


自然と出るため息が止まらないわ。



それでもね。


ここまで来た以上は後戻りなんて出来ないのよ。



諦めにも似た心境で試合に臨むしかないの。



ある意味、とてもむなしい試合が始まってしまったわ。


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