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THE WORLD  作者: SEASONS
4月7日
266/1378

深海優奈

で、手続きを終えてからたどり着いたのは試合場Hー2番よ。



ここが今回の私の試合場なんだけど。


対戦相手の姿はまだ見えないわね。



審判の人に少し待つように言われたから、

総魔と一緒に対戦相手が来るのを待つことにしたわ。



…って言ってもまあ。



相変わらず私が一方的に総魔に話しかけてるだけなんだけどね。



そんなふうに時間を潰していると。


しばらくしてから、

一人の女の子が試合場に近付いてきたの。



…ん?


…あれ?



どこかで見た覚えのある女の子なのよ。


髪を『ポニーテール』にまとめてる女の子。



う~ん。


どこで見たんだっけ?



すぐに忘れちゃうのが私の悪いところなのよね~。



自分でも分かってるんだけど、

忘れちゃうものは仕方がないわよね?



「あの子が対戦相手ですか?」



彼女が対戦相手かな?って思ったんだけど。



「いえ、違いますよ。」



審判は首を横に振ってた。


どうも違うみたいね。



だとしたら観客か迷子かな?


そんなふうに思っていると。


別の女の子がポニーテールの子に歩み寄ってきたわ。



ん?


あれれ~?


あの子も見覚えがあるわね。



何となく二人一緒だったような気が…。



って!?


あぁぁ~!!!



そうそう!


確か昨日よ。



図書館だったと思うわ。



いつも総魔が使っていた席にいた子よ!



そこまで思い出した時に、

あとから来た女の子が私に歩み寄ってきたのよ。



「あ、あの…。深海ふかみ優奈ゆうなと言います。よろしくお願いします。」



控え目に挨拶をしてきたこの子が私の対戦相手みたいね。



「私は美袋翔子みなぎしょうこよ。よろしくね♪」



握手をしようと思って、

笑顔で挨拶をしながら右手を差し出してみると。



「は、はい。よろしくお願いします…っ。」



遠慮がちに手を差し出した優奈ちゃんが優しく握手を交わしてくれたわ。



うんうん。


見た感じ、良い子なのよね~。



少し幼い感じもするけどね。



そこが可愛らしさを引き立てていて、

すっっっごく可愛い子だと思うわ。



それにね。


どことなくだけどね。


雰囲気が成美ちゃんに近いものを感じるかも。



大人しくて、可憐な美少女って感じ?



沙織みたいな清楚せいそな感じとはまたちょっと違うのよね~。



何て言うのかな?


こう…。


守ってあげたいって思うような子なのよ。



母性本能をくすぐる感じ?



う~ん。


ちょっと違うかな?



でも、似たようなものだと思うわ。



「お互いに頑張りましょ」


「は、はいっ」



微笑む私を見て緊張する優奈ちゃん。


そんな不安そうな表情が気になったのかな?



「ちょっと優奈~?そんなに緊張しなくても大丈夫だって言ったでしょ?」



ポニーテールの女の子が話し掛けていたわ。



「だいじょぶ、だいじょぶ。」


「…で、でも~」



応援してくれてる女の子に優奈ちゃんは助けを求めるような視線を向けているわね。



その態度を見て少し気になったんだけど。



…もしかして?



これってそういうことなのかしら?



だとしたら。


ちょぴり可哀想なことをしたかもしれないわね。



実際にどうかは知らないけど。


ひとまず確認のために、

何気なく感じた疑問を聞いてみることにしたわ。



「えっと〜。もしかして、優奈ちゃんって試合が初めてなの?」



たぶんそうだろうな~なんて思いながら訊ねてみると。



「あ、はい、そうです。すみません…。」



不安げな表情で頷いていたのよ。


そして何故か謝られてしまったの。



別に謝ってもらう理由なんてないんだけどね~。



…だけど、そっか。



まだ試合は未経験みたい。



でもね?



入学してからまだ一週間しか経ってないんだから、

試合が未経験でも別におかしくはないと思うわ。



たぶん…おかしくない、はずよ。



だって総魔みたいにいまだに講義を受けたことがない生徒だっているわけだし。



試合をしたことがない生徒がいたとしても別に良いと思うのよね。



ただ。



優奈ちゃんとしては初めて挑戦されたことで不安で一杯なのかもしれないわ。



「う~ん。無理そうなら他の人を探すけど?」



初心者を虐めても仕方がないから遠慮しようかな?って思ったんだけどね。



「優奈!どうせいつかはやらなきゃいけないことなんだから、ここは思いきって試合をしてみるべきよ!」



ポニーテールの女の子が私の言葉を遮ってくれたのよ。



…別に良いんだけどね。



こんなことで怒ったりしないわよ?


ホントよ?



「それにこの人なら良い人っぽいし。きっと大丈夫!」



ちょっと、ちょっと。


この人扱いはひどくない?



これでも一応、先輩なわけだし。


もうちょっと別の言い方があるんじゃないかな〜?



ってまあ、目の前の女の子達がその事実に気付いているかどうかは知らないけどね。



う~ん。



なんだかちょっぴり面倒臭くなってきたかも。



試合経験がないような子と戦っても意味はなさそうだし。



今回は止めとこうかな?



ここで試合中止を宣言すると黒星が一つ増えちゃうけれど。



別に無敗記録を作りたいわけでもないし。



今更記録に興味もないしね。



「どうしよっか?」



さりげなく総魔に視線を向けてみる。


だけど総魔もこの子達には興味がなさそうな感じだったわ。



「翔子の好きにすればいい。」



特に気にした様子もないまま周囲の試合場に視線を向けてるのよ。



…うぅ~ん。



本当にどうしよう?



とりあえず、二人に視線を戻してみる。



緊張から抜け出せる様子が全く感じられない優奈ちゃん。



その隣で全力で応援する女の子。


優奈ちゃんは不安そうな表情のまま、

私と向き合っているわ。



「あ、あの…っ。」


「ん?」


「私でも、いいんですか?」


「え?あ、うん。私は別に誰でも良いのよ」



というか、わりと本気で誰でもいいと思ってるわ。


それこそ総魔と龍馬以外ならこの会場にいる全生徒と戦っても勝てちゃう自信があるしね。



「どうする?試合する?しない?」


「えっと、その…。『ご迷惑』をおかけするかも知れませんけれど、それでもよければ…」



ん?


迷惑?



どういうこと?



よく分からないけど。


試合をする気にはなったみたいね。



「試合を受けるっていうことでいいのね?」


「あ、はい。精一杯頑張ります…っ。」



申し訳なさそうに頭を下げる優奈ちゃんだけど。


その行動の意味がよくわからないわ。



そして何だかよく分からないまま。


とりあえず試合場へと足を進めることになったのよ。



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