正反対
《サイド:常盤成美》
………。
ん~?
どうしてでしょうか?
どうしてかは分かりませんけど。
翔子さんから物凄い気迫が伝わってきたような気がします。
なんとなく。
ちょっぴり怖い気もしましたけど。
それは一瞬だけでした。
翔子さんが手を繋いでくれただけで。
ただそれだけで私の心は安らぎで満たされていくような感じがしたからです。
目が見えなくても、何も怖くありません。
目が見えなくても、不安なんてありません。
翔子さんが傍にいてくれるだけで、
私はとても幸せだからです。
もちろん私は翔子さんがどんな人なのか知りません。
目が見えないから。
翔子さんがどんな人なのか分からないんです。
…ですが。
声や話を聞いていれば分かることはあります。
いつも明るくて。
元気いっぱいで。
誰からも好かれるような。
そんな素敵な人だと私は思っています。
…だから。
私とは正反対ですね。
いつも静かで。
臆病で。
みんなに迷惑ばかりかけている私とは正反対だと思います。
だから、でしょうか?
私とは正反対の翔子さんだから。
好きになったのかもしれません。
翔子さんのようになりたいって思うからです。
もしも目が見えるようになったら。
私は翔子さんのような人になりたいです。
いつでも明るくて優しくて。
そんな翔子さんのような人に、
私はなりたいです。
「成美ちゃん、行くよ~?」
翔子さんの温かな手を繋いでもらいながら歩く家の中。
この瞬間だけは全ての不安が消えてしまうくらい安心することが出来ます。
翔子さんはとても優しくて、
私が転ぶようなことはさせません。
つまずくことも、
何かにぶつかることもありません。
翔子さんに導かれて歩くこと。
それは私にとって『絶対』と言えるほど安全な一時なんです。
…あっ、でも。
もちろん、お姉ちゃんもとても優しいです。
いつも、いつだって。
私のことを気にかけてくれていますから。
その優しさが重荷に感じた時期があったことも事実ですが、
今では素直に受け入れることが出来ていると思います。
今ならちゃんと分かるからです。
お姉ちゃんと翔子さんに守られているんだって実感する時があるからです。
それはとても些細なことだったり。
とても大切なことだったりしますが。
その全てが今の私の支えなんです。
…だから。
だから私は全てを受け入れました。
目が見えない運命も。
外を出歩くことさえ出来ない日々も。
全てを受け入れて。
生きていこうと思っています。
絶望して諦めるのではなくて。
明るく元気に生きることだけが。
二人に出来る恩返しだと思っているからです。
…そう思えるようになったから。
私は自分がすごく幸せなんだって思えるようにもなりました。
障害を抱えていても、
私を支えてくれる人がいるんです。
それがどれだけ素晴らしくて。
どれだけ幸せなことかを。
私は知っています。
そしてそれがどれほど奇跡的なことなのかを。
私はちゃんと、知っています。




