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THE WORLD  作者: SEASONS
4月6日
257/1378

本当に?

《サイド:常盤沙織》



「ふう…。」


午後6時30分になりました。


魔術研究所そのものは24時間運営されているのですが、

私が研究所にいられるのはこの時間までです。



正確に時間が決まっているわけではないのですが、

あくまでも学生の身分なのであまり無理はできません。


職員の皆さんにご迷惑をおかけしないように遅くなる前に退出するよう心がけています。



だから今日はここまでです。



日課の研究を終えた私は研究資料の片付けを終えてから、

室長である神崎さんに歩み寄ることにしました。



「ありがとうございます。今日もお世話になりました。」


「いやいや、大したことはしていないさ。それはともかく、研究の方は進んでいるか?」


「いえ、あまり進んでいません。ですが、幾つか気になることがありまして、もう少し研究を進めてみようと考えています」


「ほう。私でよければ、相談にのるが?」


「あ、はい。ありがとうございます。これが新しい資料なのですが…」



神崎さんに感謝しつつ、

研究資料を手渡してみました。



「ふむふむ。拝見させてもらおう」



受け取った資料を読み進める神崎さんは、

ざっと書類を眺めてからすぐに私に視線を戻してしまいました。



「これは確か、以前にも読ませてもらったな?」


「あ、はい」



実験名は『光の反射』です。


光を感知できない成美の目に光を当てて、

その反射を確認するという実験でした。



「面白いとは思う」



言葉とは裏腹に神崎さんの表情に笑顔は見えません。



「ただ、この実験はすでに失敗したのではなかったかな?」


「は、はい。ただ、気になるのはそのあとなのですが…。」



書類をめくってから、

別の一文を指差しました。



実験内容は『映像の反射』です。



簡単に言えば湖面に景色が映り込むような状況を再現できないかという考えです。



水溜まりに自分の姿が映るような、

そんな方法で間接的に成美に景色を見せることが出来ないかという実験を考えたのです。



ですが。


私の論文を見た神崎さんは再び難しい表情を浮かべていました。



「理論としては可能な範囲かもしれないが、実際にどこまで出来るかが疑問だな。そもそもどう認識させるのかが問題だ。瞳に映像を送り込むまでなら出来そうな気がするが、その映像を理解できるかどうかは別問題だからな。着眼点は良いかもしれないが、色々と課題が多そうに思える。」


「ええ、問題が多くて、あまり進んでいません…。」


「いやまあ、疑問はあるが、考え方自体は面白い。私も時間があれば考えておこう。」


「本当ですか!?ありがとうございます」


「いやいや、気にすることはない。職員の研究に手を貸すのも私の職務の一つだからな。どこまで出来るかは分からないが、出来る限り考えておこう。」


「ありがとうございます!」


「ははっ。礼は治療が成功した時で良いさ」



少し照れくさそうな表情で優しく微笑んでくれました。



「気をつけて帰るようにな」


「はい。お疲れ様でした」



神崎さんに頭を下げてから。



「また明日もお願いします」



職員の皆さんにも挨拶をして研究室をあとにしました。


時刻はすでに7時に迫ろうとしています。


そろそろ翔子が待っている時間帯ですね。


少し急ぎながら受付に向かってみると、

予想通り、翔子が入口付近で待ってくれていました。



「おかえり~!」



すでに待っていてくれた翔子に急いで駆け寄ります。



「ごめんね、遅くなって…」


「ん~?そうでもないよ。私もさっき着いたところだし」


「そうなの?」


「うん!」



笑顔で出迎えてくれた翔子ですが、

本当に来たばかりなのでしょうか?


私には事実を確かめる方法はありませんが、

実際には待たせてしまっていたのではないでしょうか?


そんなふうに思うのですが、

正直に「待たされた」と言われてもそれはそれで困ってしまいますね。



「ありがとう、翔子」


「ん?何が?」


「ううん。何でもないの」


「そう?」


「ええ」



いつも笑顔で出迎えてくれる翔子に感謝しつつ。


二人で研究所を離れることにしました。


このあとの行き先は決まっています。




今日も翔子と一緒に私の家に向かうつもりでいます。


きっと成美が待ってくれているからです。



私と翔子が帰ってくることを。



ずっと、待ってくれているからです。



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