神様だって
《サイド:美袋翔子》
『キーン…コーン…カーン…コーン…。』
午後6時のチャイムが学園中に響き渡ったわ。
その音を聞いた私は時計に視線を向けてから小さくため息を吐いたのよ。
その理由?
もちろん絶望しかなかったからよ。
苦手な勉強に何時間費やしたのかのなんて考えたくもないわね。
あまりの苦行に永遠にも等しい時間を感じてしまったわ。
でもね?
だけどね?
総魔と一緒にいられる時間は、
あっという間だったの。
本当にね。
どうしてこうも時間の流れが早いのかしら?
自分でも矛盾してると思うけどね。
それが正直な感想なのよ。
…うぅ〜〜〜〜ん。
神様を怨みたくなる気持ちも感じながら、
精一杯の背伸びをしてみる。
疲れたと言うか、癒された言うか。
難しいところだけど。
それでも今日はもう終わりなのよ。
隣に座ってる総魔はまだ研究資料を読み続けているけどね。
だけど、基本的に図書館は7時までなのよ。
まあ、ちょっとくらいは退出時間の範囲内として認めてくれるけれど。
あまり長くここに留まる事は認められていないの。
だからそろそろ片付けを始めなければいけない時間になるわ。
「総魔。そろそろ時間だから片付けないと、図書委員とかに怒られるわよ。」
「…もうそんな時間なのか?」
時計に視線を向けた総魔は時刻を確認してから席を立ったわ。
「仕方がない。続きはまた今度だな」
調査を諦めたようね。
積み上げられている資料に手を伸ばした総魔が次々と資料を片付けてく。
「待って!私も片づけるわ。」
協力して片付けることにしたのよ。
その作業は10分もかからなかったと思う。
50冊の資料はすぐに片付いたんだけど。
筆記用具類はまだテーブルの上に残っているわね。
「あとはこれだけね~。」
最後に鞄の中に筆記用具を押し込むと、
テーブルの上はゴミ一つ残らずに綺麗になったわ。
「おっけ~。じゃあ帰ろっか?」
「ああ、そうだな」
二人並んで出口を目指す。
5時間近い時間を総魔と二人きりで過ごすことが出来たのよ。
それだけで幸せ一杯だったと思うわ。
まあ、調べ物の途中に何度か見知らぬ人が来たこともあったけどね。
そのたびに全力で睨みつけて追い払ってたのは総魔には内緒よ。
私の幸せに土足で踏み込むような人は例え神様であっても許さないわ!
それだけの気合いを込めて、
二人きりの時間を満喫していたの。
だけどね。
それも時間切れで終わってしまうのよ。
本当にもう。
こういう時には神様に祈りたくなるわよね?
時間が止まれば良いのに!
なんて。
自分でも言ってることが無茶苦茶だって思うけど。
この気持ちはどうしようもないのよ。
だって思っちゃうんだから!
仕方ないでしょ?
…ってまあ。
自分の心に問い掛けてみても、
当然返ってくる答えは私自身の言葉なんだけどね。
都合が良いのは分かるけど。
時と場合によっては神様だって敵だと思うし味方にも思うの。
それが『乙女心』ってやつじゃない?
なんて、心の中で言い訳していても仕方がないんだけどね。
とりあえず今は図書館を出なきゃいけないんだけど。
不意にさっきの席に視線が向いたわ。
だけどさすがに今は誰も座ってないみたい。
さっきの女の子達はもう帰ったようね。
探してみてもその姿はどこにも見えないわ。
まあ、さすがに5時間も図書室に篭る生徒はそうそういないでしょうしね。
いないならいないで別にいいかなって思いながら総魔と二人で歩みを進めてく。
次第に近付いていく出口。
ここを出たら、今日は総魔とお別れなのよ。
それがもどかしく感じるわ。
もっと一緒にいたい!って思うけれど。
沙織との約束もあるのよね〜。
両方を選ぶことは出来ないから、
どちらかを諦めなければいけないのよ。
…はぁぁぁ~。
最高難易度の選択肢だと思うわ。
総魔と沙織。
どっちも大切な時間なのよ。
どうにかして選ばなくてもいい方法があればいいのに。
なんて、悩んでも解決しないけど。
考え事をしてる間に出口にたどり着いてしまっていたわ。
…はあ。
仕方がないわね。
心の中で決心して、
総魔と向き合うことにしたの。
「じゃあ、今日はここでお別れね。沙織も待ってると思うし、私は研究所に行ってくるわ。」
「そうか。気をつけてな」
「うん。ありがとう!総魔も気をつけてね♪」
「ああ」
見送ってくれる総魔に手を振ってから図書館を後にしたのよ。
だけど。
もったいないことをしたかな~?
ちょっぴり後悔を感じるけれど。
今は研究所に向かって走ることにしたの。
今日がダメでも明日があるからよ。
明日は朝からずっと総魔と一緒にいるんだからっ!!
そんなふうに心の中で誓いながら。
沙織に会うために研究所に走り続けたのよ。




