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THE WORLD  作者: SEASONS
4月6日
246/1381

無条件

お茶を用意する作業で5分ほど過ぎたでしょうか?



準備を終えて席に戻ると。


無言のままの二人が私達に視線を向けました。



天城君と龍馬です。


それぞれに微笑みを返してから、

私は龍馬に歩み寄りました。



「はい、龍馬。」


「ありがとう。」



龍馬は笑顔でお茶を受け取ってくれました。


その表情は先程よりも少しだけ元気を取り戻したように見えますね。



ホンの短い時間でしたが、

休憩を挟んだことで気持ちの整理が追いついたのかもしれません。



ですがそんな龍馬を気にする様子もないまま、

天城君は無言で翔子からお茶を受け取っています。



そして静かに…いえ。


一瞬だけでしたが、

笑っていたような、そんな気がしました。



気にしていなければ見逃してしまいそうな、

とても小さな表情の変化です。



ですがそれでも翔子は嬉しそうでした。



…ふふっ。



翔子としては満足できる反応のようですね。


だけど私としてはどうして良いのか分かりませんので黙って席につくことにしました。



ひとまず休憩を挟むことはできましたが。


これからどうすればいいのでしょうか?



会話を切り出すべきでしょうか?


それとも少し様子を見るべきでしょうか?



考え込む私の思考を遮るかのように、

幸せそうな表情の翔子が彼に話しかけています。



「まあまあ、難しい話はとりあえず終わりにして、次はこれからのことを考えない?」


「これからのこと?」



首を傾げてしまいます。


龍馬も不思議そうな表情で翔子に視線を向けていますね。



「そうそう♪これからのことよ。」



翔子は笑顔のまま、彼に質問をぶつけました。



「せっかくこうして話が出来るようになったことだし。どうかな~?総魔も特風に参加してみない?」



…ちょっ!?


…翔子!?



衝撃の発言です。


私だけではなくて、

龍馬も同じように感じたのではないでしょうか?



もちろん私達も彼に呼び掛けるつもりではいました。


ですがこんなにもあっさりと話を切り出すとは思っていなかったのです。



もっと慎重に話を進めて、

誠意を込めて説得するつもりだったからです。



それなのに。


翔子はあっさりと口にしてしまいました。



この状況で私達はどうすればいいのでしょうか?



戸惑いながら彼に視線を向ける私と龍馬。


今の状況で彼に断られたら上手く説得する自信がありません。



ですから。


ここで断られてしまうと非常に困ります。



なんとか彼の協力を得たいのですが。


私達が見つめる中で、

彼は翔子に視線を向けて答えました。



「約束だからな。学園には協力するつもりでいる。だが、どこにも所属するつもりはない。」



彼ははっきりと断言してしまいました。


特風にもどこにも参加しないと言い切ったのです。



もちろんこうなることは話を聞く前から分かっていたことなのですが、

実際に断られてしまうと予想通り説得は難しそうに思えました。



「やっぱりダメか~。でもまあ、協力はしてくれるんでしょ?」



尋ねる翔子に彼は小さく頷いていました。



「ああ、俺に出来ることであれば協力する」


「おっけ~!それでいいわ♪」



いいの?


それで?


良くないわよね?



あっさりと承諾する翔子ですが、

本当にそれで良いのでしょうか?



深々とため息を吐いてしまいます。


ふと横に視線を向けて見れば、

龍馬も同じような表情を浮かべていました。



複雑な心境ですね。



彼の協力は得られそうですが、

結局のところ特風の戦力不足は解決出来そうにないからです。



今後のことを考えれば彼の参加は諦めのつかない話なのですが。


現時点ではこれ以上追求するのは無理な気がしてしまいます。



なにより下手に彼の機嫌を損ねて険悪な雰囲気になってしまうと取り返しのつかないことになってしまいそうですから。


私も龍馬もそれ以上は何も言えなくなってしまいました。



…はあ。



困ったわね。



こうなってしまったことで翔子を責めるということはしませんが、

出来ればもう少し私達と相談してから話を進めてほしかったとは思います。



そんな残念な気持ちを感じながらも、

このまま話し合いを終えるわけにはいきませんので、

ひとまず彼に話しかけてみることにしました。



「特風に関してはともかく、具体的にどの程度まで協力していただけるのでしょうか?」


「詳しいことは知らないが、俺の力が必要ならいつでも手を貸すつもりでいる。」


「それは特に条件を付けない、と、解釈してよろしいのですか?」


「ああ。好きにすれば良い。」



…あぁ。


…良かった。



あっさり答えてくれた彼の言葉を聞けたことで、

私の中の不安が一気に消えました。



特風に参加するつもりはなくても、

私達と行動を共にすることを認めたに等しい発言だからです。



彼の言葉を信じるなら、

すでに十分に仲間と言えるでしょう。



「じゃあ、これからもずっと一緒だよね?」



明るく尋ねる翔子に、彼は小さく頷いています。



「しばらくはそうなるな。」



しばらくと言った彼の本心は知りようもありませんが、

それでも協力を得られるなら心強い存在です。



彼が味方でいてくれる間に龍馬と翔子が力を取り戻して、

北条君が目覚めてくれれば治安維持も何とか出来るでしょう。



その間の短い期間だけでも彼の協力があれば、

それ以上を望むのは贅沢なのかもしれませんね。


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