ごく一部
《サイド:常盤沙織》
ふう。
一通りの説明を聞き終えたあとで、
密かにため息を吐きました。
思っていたほど深刻な状況ではない気がしたからです。
特に理由があるわけではないのですが、
何となくそう思えたことで安堵のため息を吐いていました。
…もう大丈夫そうね。
天城君から色々と話を聞きましたが、
ひとまず一通りの質問は終えられたと思います。
少し難しい話もありましたが、
重要なことは一つだけですね。
潜在能力に気付けるかどうか?
ただそれだけのことなんです。
もちろんそれがとても難しいことなのはわかっています。
誰しも自分の才能に気付くことが出来ずに挫折していく人の方が多いからです。
むしろ。
自分の才能がわからずに悩み苦しんでいる人の方が大多数ではないでしょうか?
実際に才能を伸ばせる人というのは本当にごく一部の人だけだと思います。
ですが。
それでも私はみんなを信じています。
必ずたどり着けると信じているのです。
天城君が前を見据えて歩みを止めないのと同じように、
翔子だって努力を続ければいつかは自分の力に気付くことが出来るはずです。
そう信じています。
そして、龍馬も。
本当の力にたどり着くことが出来ると信じています。
これから3人はどんな成長を見せるのでしょうか?
今はまだ予想も出来ませんが。
いつの日かもう一度。
最強の座を争うような、
そんな力を手に入れて欲しいと思っています。
今はただ、それだけを願っています。
…どうか3人とも頑張ってください。
そんなふうに願いを込めながら、
ゆっくりとみんなの表情を眺めてみました。
天城君が何を考えているのかは分かりませんが、
龍馬と翔子は少し疲れているように見えますね。
私にとっては楽観できる状況でも、
二人にとってはそうではないでしょうから、
その反応は当然かもしれません。
「お茶でも入れて来るわね。」
「あ、待って!私も手伝うわ。」
少し休憩をはさもうと思って席を立つ私を見て翔子も席を立ちました。
急ぎ足で追い掛けて来るのですが、
少しの休息を得たことで落ち着いたのでしょうか。
いつも通りの笑顔を見せてくれました。
普段あまり難しい話に参加しない翔子にしてみれば、
今回のように延々(えんえん)と話し合うのは苦手なのかもしれません。
ですが。
一旦会話が途切れた事もあって、
緊張から解放された翔子はどことなく気持ちが軽くなったように見えます。
「ありがとう、翔子。」
翔子に微笑んでから、
二人でお茶の準備を始めました。




