連絡手段
《サイド:常盤沙織》
突然の出来事だったので驚きました。
食堂の中を歩いていたら、
突然光が指してきたんですから。
驚かないはずがありません。
ですがその光が魔術によるものだとすぐに気付けましたので、
必要以上に慌てることはありませんでした。
…と、言うよりも。
検定試験会場以外での戦闘は禁止されていますからね。
食堂でいきなり襲われるとは思えません。
だから落ち着いて行動できただけなのですが、
誰が何の目的でこんなことをしているのかまでは分かりませんでした。
ですので。
驚きながら辺りを見渡してみました。
どうやら周囲の生徒達も困惑しているようですね。
だとしたら。
この光はどこから指しているのでしょうか?
光の先を視線で追ってみると。
あの二人が私を見ていることに気付きました。
翔子と天城君です。
この光は彼の手から放たれているものだったようです。
そして同時に私に呼び掛けているのだと気付けました。
声を出しても聞こえない距離ですから。
おそらく自分達の居場所を伝える為に魔術を使ったのだと思います。
そう思えたことで、安心して息を吐きました。
これが嫌がらせではなかったからです。
というよりも。
基本的に魔術の使用が禁止されている場所ですので、
魔術が使われているという事実そのものに危機感を感じていたのですが、
術者が彼だと分かれば恐れる理由は何もありません。
すぐ側に翔子もいるわけですし。
私と連絡が取りたかっただけなのはすぐに理解できました。
ただ…この方法は素直に驚きましたね。
光を放つだけの魔術は他にもあるのですが、
明かりを灯すのではなくて連絡手段として使う方法は初めて経験したからです。
覚えれば便利かも知れないと素直に思えたほどです。
そんなことを考えながら、
二人に向かって歩きだしました。
だから、でしょうか?
彼は私が歩きだしたことを確認してからすぐに魔術を解除しました。
どうやら私の到着を待つつもりのようですね。
翔子は私と彼に交互に視線を向けながら、
私が歩み寄るのを待っています。
下手に動いてはぐれてしまう危険性を考慮しているのでしょうか?
おそらくそうだと思いますので、
私から向かうことにしました。




