神崎慶一郎
《サイド:常盤沙織》
龍馬と別れたあと。
ほぼ毎日のように通っている研究室へと向かいました。
ここは『治療魔術研究室』と書かれた一室です。
ジェノス魔術研究所において、
ルーン研究所に次ぐ重要な研究室なのですが、
この研究室では主に回復系魔術の研究が行われています。
怪我や病気の治療はもちろん。
身体の異常を正常化する魔術等の数多くの研究が行われている場所なのです。
基本的には生徒の立ち入りは認められていない場所でもあるのですが。
私には叶えたい夢がありますので、
理事長から特別に許可をとって参加させていただいています。
…私が叶えたい『夢』
それは妹の『成美の目を治すこと』です。
この研究室に通うようになってからすでに1年以上になります。
ですがまだ治療法は見つかっていません。
何らかの原因で視力を失った人の治療は何度か成功させた事があるのですが、
生れつき目の見えない成美の治療は全て失敗しました。
今のところは解決の糸口さえ掴めていないというのが現状です。
…一体どうすればいいのでしょうか?
日々疑問を感じながらも、
今日も研究室の扉を開きました。
「おはようございます」
「「「おはようございます。」」」
挨拶をしながら入室すると。
研究所の皆さんはいつものように暖かい笑顔で迎えてくれました。
「おお、今日も来たか!感心感心!」
最後に出迎えてくれたのはこの研究室の代表である『神崎慶一郎』さんです。
ルーン研究所の黒柳所長とはとても仲がいいそうです。
何度か酒飲み仲間だという話を聞いたこともあります。
「おはようございます、神崎室長。」
「ああ、おはよう。調子はどうかね?」
「良好だと思います」
「それは良いことだ。人間、健康が一番だからな」
笑顔を見せる神崎さんは学園でも屈指の魔術医師です。
天城君の回復魔法を例外とすれば、
ジェノス随一の治癒魔術師と言っても過言ではないと思います。
今までに何度も奇跡的な治療を行ってきた実績を持っていて、
私が尊敬する魔術師の一人であり、
私の目標でもありました。
「今日もよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ。一日でも早く目的が叶えられるよう、協力は惜しまないつもりだからな」
挨拶を終えた神崎さんは自分の席へと戻って行きます。
その後ろ姿を見送ってから私も用意された席に向かって自分の研究を始めることにしました。
ここでの時間は『成美の為』に使います。
それだけを思いながら、研究を再開しました。




