寝不足
《サイド:黒柳大悟》
…はぁ。
まさか、という展開だな。
こんな朝早くから彼らが来るとは予想していなかったからなのだが。
…いや。
予想外というよりは単に疲労のせいで頭が上手く回転していないのかもしれないな。
個人的にはそんな状況だろうか?
もちろんそんなくだらない言い訳を彼らにはできないのだが。
激しく疲れているのは事実だ。
昨日の夜に。
いや、夜と言うか、もはや朝と言うべきか?
とにかく俺は検定会場の後処理の為にせっせと補修部分の測定を繰り返していたのだが、
その作業が終わったのがほんの2時間ほど前だ。
もっと言うなら。
朝日を眺めながら仕事を終えた実感ってやつを感じて、
ため息を吐いていた覚えがあるからな。
それくらい長時間の労働だったのは間違いない。
まさしく徹夜だな。
それらを終えて報告書にまとめ終えたのがついさっきになる。
ほんの5分ほど前だ。
一通りの段取りを終えたことで、
やっと眠れると思った矢先に。
彼等がここへ来てしまったというのが現状になる。
もちろんそれ自体は責めることではないだろう。
決して悪いことをしている訳ではないからな。
不満を言うわけにはいかない。
…ただ、な。
ほんの少しだけで良いんだ。
もしもわがままを言わせてもらえるのなら、
せめて午後から来てほしかった。
そうすれば多少なりとも睡眠時間がとれたはずだからな。
ただでさえ色々あって寝不足気味だったのに、
完全に徹夜明けで書類の作成までしていたのだ。
現時点での俺の心境は「眠い」の一言に尽きる。
それはもう意識を保てないほどの限界だ。
眠い。
とにかく眠い。
なんなら30分だけでもいい。
ホンの少しだけでも仮眠が取れれば、
少しはまともな思考能力を取り戻せるだろう。
そう願いはするのだが、
せっかく来た客人を追い返す訳には行かないとも思う。
まあ、会いに来たのが『彼』でなければあとにしてくれと言って断っていた可能性も多大にあるのだが。
彼の来訪だけは断るわけにはいかないだろう。
ひとまず今は止まらない欠伸を気合いで噛み殺しながら、
正面に座る二人に視線を向けてみる。
目の前にいるのは二人の人物だ。
相変わらず何を考えているのかさっぱり読めない表情の少年と、
不安気な表情でそわそわと視線を泳がせる少女の二人だ。
どちらも顔見知りだが、
この二人が揃ってここへ来るのは初めてだな。
『天城総魔』と『美袋翔子』
どういうつもりでここへ来たのかは知らないが、
話を聞く価値は十分にあるだろう。
「…さて、話を聞こうか。」
俺に会いに来た理由を問いかけることにした。




