毎日、毎食
《サイド:美袋翔子》
午前8時23分。
…うんうん。
やっぱりこういう時間って大事よね〜。
特別な何かってことはないんだけど。
そういうことじゃなくて。
平穏な日常が幸せなのかもって思うのよ。
まあ、現状を説明するなら。
総魔と一緒に食堂の席に着いて、
朝食の一時を過ごしてる最中になるわ。
総魔は相変わらず格安定食を食べてる。
私はついさっき沙織の家で朝食を食べたばかりだから、
全くお腹が空いてないんだけどね。
だけど何もないっていうのも気が引けるから、
ハーブティーだけ注文して総魔と向かい合って座ってるの。
ちょっぴり甘めのはちみつレモン。
この甘さと優しさが、
食べ過ぎの胃にじんわりと広がっていくのよ。
…癒されるわね。
美味しいし、身体に優しい感じ?
これはこれで良いんだけどね。
そもそも何もせずに待ってるだけっていうのが結構辛いのよ。
間が持たないと言うか、なんて言うか。
だから飲み物だけでもって思って注文したんだけど。
せっかく総魔と一緒にいるのに。
話をしない時間がもったいないとも思っちゃうのよね〜。
だからね。
思い切って総魔に尋ねてみることにしたわ。
まあ、まずは雑談から、だけどね。
「ねえ、総魔。いつも同じ定食で飽きないの?」
内容は毎回違うわよ。
だけどね。
毎日、毎食、格安定食なのよ?
私なら間違いなく飽きて嫌になる自信があるわ。
だから気になったんだけど。
そんな私の些細な質問にもね。
総魔はちゃんと手を止めてから答えてくれるのよ。
「気にしなければ気にならない。」
…うん。
…まあ、ね。
相変わらずの端的な返事だと思うわ。
総魔らしい回答だとも思う。
でも、ね〜。
他にも選択肢があるわけだし。
たまには違うものを食べればいいのにって思うのよね~。
だけど、聞くだけ無駄な気がするわ。
以前、総魔が言っていた言葉を思い出したからよ。
…持ち合わせがないって言ってたわよね?
確かにね〜。
格安定食はお値段的にかなり安いと思うわ。
今、私が手にしてるハーブティーとそれほど変わらないくらい安いのよ。
量的には他の定食とそんなに変わらないけどね。
一種類ごとのおかずの分量は明らかに少ないし。
本当に余りものの詰め合わせっていう感じなのよ。
…一言で言い表すとしたら。
おせちの劣化版?
そんな感じね。
だから安いのは認めるけれど。
何だか見ているだけで可哀相な気持ちになっちゃうのよね~。
何か違う物を注文してきてあげようかな?
なんて。
一瞬考えてみたけど
きっと総魔は喜ばないと思う。
そんなふうに施しを受ける事は望まないと思うのよ。
あくまでも私の予想でしかないけどね。
総魔は笑ってくれない気がするの。
…それにね。
たぶん、だけど。
もしもそうしてしまったらね。
もう二度と「一緒に」って言ってもらえなくなる気がするのよ。
そんな予感があったわ。
だから今はそれ以上何も言えないし出来ないの。
私の自己満足でご飯を買ってあげるよりもね。
総魔自身でお金を稼ぐ方法を考えた方が喜んでくれる気がするのよ。
…うぅ〜ん?
何か私に出来ることがないのかな~?
なんて。
そんな事を考えてる間に、
総魔は食事を終えたみたい。
そっとお箸を置いていたわ。
「あれ?もういいの?」
「ああ。十分だ」
席を立つ総魔が食器を片付け始める。
その様子を見ていた私は慌ててハーブティーを飲み干してから総魔のあとを追って動き出したわ。
「今日はどこに行くの?」
「幾つか調べたい事があるだけだが、ついて来るか?」
「…行ってもいいの?」
「ああ、構わない。」
邪魔になりたくないって戸惑う私に、
また微笑んでくれたのよ。
…はうぅぅぅ~!!
こんなふうに優しくされたら、
行かないなんて言えるわけないじゃない!
「だったら行くわ!」
即座に答えて、
総魔と一緒に行動することにしたの。




