後悔しないために
《サイド:御堂龍馬》
気がつけば一晩中、考え事をしてたようだ。
考えないようにしようと思っても、
昨日の出来事を考えてしまう。
もやもやとした気持ちのせいで全く眠れなかったんだ。
彼との試合。
そして、そのあとの出来事。
右手の人差し指にある封印の指輪に視線を向けてみる。
原始の瞳と指輪に関する書物は彼が持っているから今は確認する事が出来ないけれど。
それでも確かなことが一つだけある。
『力を失った』ということだ。
これまで追求し続けて、
追い求めてきたはずの支配の能力が失われてしまった。
今まであったはずのものが突然なくなってしまったこと。
たとえそれが自分の意思であったとしても、
喪失感を感じてしまう気持ちはあった。
…だけど。
仮に力を失っていなかったとしても、
僕の力にはそれほど価値がなかったのかもしれない。
彼との試合において僕の能力はほとんど発揮されなかったからね。
僕の能力は本来なら全てを支配して押さえ込む力だったんだ。
どんな能力も僕の前では効果を失うはずだった。
それこそ。
真哉の能力でさえ、
強引に抑え込むことが出来ていた。
だから僕が本気になれば、
あらゆる能力は僕の支配下になって、
術者本人へと牙を向くはずだったんだ。
それなのに。
彼に対して僕の力は一切効果を発揮しなかった。
今までどんな相手でも力付くでねじ伏せてきた力なのに。
支配の特性が彼にだけは通用しなかったんだ。
実力が拮抗しあっていたせいで、
互いの能力が相殺されてしまったことは理解してる。
だけどね。
それでも。
通じなかったという事実が悔しいと思ってしまうんだ。
…こういう気持ちを無力って言うのかな。
自然と込み上げてくる悔しさを押さえ込む為に、
必死に拳を握り込んでしまう。
…だけど今は認めるしかない。
僕は負けたんだ。
結果は完敗。
それは誰の目にも明らかな敗北だった。
彼は実力を発揮したけれど。
僕は実力を発揮できなかった。
その違い。
それこそが僕と彼との決定的な実力差で、
乗り越えなければいけない壁なんだと思ってる。
実力が拮抗しているのなら、
あとは気力の問題なんだ。
諦めないという気持ちが重要になる。
僕の一撃によって、彼も一度は倒れた。
グランド・クロスは防がれてしまったけれど。
ジャッジメントは通じていたんだ。
あの時点では僕はまだ彼を上回っていた。
その後の攻防で失敗してしまったわけだけど。
だからと言って僕が弱いというわけじゃない。
僕の攻撃はちゃんと通用するんだ。
彼を追いこむことはできていた。
…だけど、彼は立ち上がった。
決して諦めることなく。
最後まで戦い抜く覚悟を見せたんだ。
それが。
それこそが彼の強さだと思う。
どれほど追い込まれても。
どれほどの怪我を負っても。
彼は一歩も引かなかった。
その心の強さによって、彼は勝利を勝ち得た。
もちろん僕だって気持ちで負けるつもりはない。
だけど。
結果的に僕は敗北した。
彼を制しきれなかったんだ。
最後の最後で彼の力に飲み込まれてしまった。
その事実は認めるしかない。
だからね。
負けたこと自体に悔いはないんだ。
もしも悔いがあるとすれば。
それは力を出しきれなかった自分自身の弱さに対してだ。
だから僕は出直したいと思えた。
僕自身の心を鍛えるために。
そして再び彼と全力で戦えるように。
出直したいと思ったんだ。
もう一度。
彼に僕の力を認めてもらうこと。
それが今の僕の正直な気持ちなんだと思う。
だから僕は、彼や翔子と同じ道を選んだ。
今ある力を捨ててでも、
新たな力を求めて前に進む道を選んだ。
その過程で、
僕は僕が誇れる本当の強さを手に入れたいと願ってる。
単純な能力ではない強さが欲しい。
魔術の特性や威力なんかじゃなくて。
勝敗さえも関係なく。
悔いのない戦いが出来る。
そんな強さが欲しいんだ。
そう思うからこそ。
今度こそ最後まで諦めないと指輪に誓った。
もう二度と後悔したくないから。
今度こそ僕が勝つ為に。
強くなろうと思うんだ。




