気付かないもの?
《サイド:常盤沙織》
ふふっ。
気合いに燃える翔子を見ていると、
なんだかそれだけで幸せな気持ちになれるのは私だけでしょうか?
本人は隠しているつもりかも知れませんが、
あの子が天城君に好意を持っていることはすぐに気付きました。
最終的にどうなるかは分かりませんが、
上手く行くことを祈る気持ちで翔子を見守っていこうと思います。
…ただ。
肝心の天城君に翔子の気持ちは届くのでしょうか?
正直に言えば、
かなり不安を感じる部分があります。
人との関わりを避ける傾向にある彼が翔子を受け入れる可能性がかなり低く思えてしまうからです。
ですが。
それも含めて翔子の努力次第なのかも知れませんね。
結果がどうなるのかは分かりませんが。
翔子が幸せになってくれるのであれば何も言うことはありません。
…翔子の幸せが私の願いです。
だから翔子のことは今後も応援するつもりでいるのですが。
それよりも今は他に気になることがあります。
あまり他人に興味を示さない天城君が翔子の気持ちに気付かないのは仕方がありません。
そもそもそういった浮ついた気持ちがなさそうなので、
気づかないのは仕方がないと思うのです。
…ですが。
どうしてあの人も気付かないのでしょうか?
少しため息を吐きたくなる心境で龍馬に視線を向けてみました。
「………。」
龍馬が何を考えているのかは分かりません。
ですが。
これだけは間違いなく断言できます。
龍馬もまだ翔子の恋心に気付いていないということです。
男の人って、そういうものなのでしょうか?
私から見れば明らかにそうだと思うことでも、
男の人から見れば気付かないものなのでしょうか?
それが悪いとは言いませんが、
ホンの少しだけ翔子が可哀相な気がします。
ですが。
それも翔子が乗り越えなければいけない『壁』なのかも知れませんね。
出来ることなら翔子に協力してあげたいのですが、
他人の恋心に口出しをしても良い結果は出ないと思いますので今はまだ何も言わないことにしました。
もしも気付いているのが私だけだとしたら、
そっと見守ってあげる方が良いと思うからです。
全ては翔子次第なのですから。
そう結論を出して翔子に話しかけることにしました。
「翔子」
「ん?」
振り返る翔子に聞いてみます。
「今日はもう遅いけど、どうする?」
「あぁ~そっか。もう9時を過ぎてるんだっけ?」
翔子は近くの時計に視線を向けました。
つられて私もそちらに視線を向けます。
時刻はすでに9時50分です。
すでに日は暮れて、
真っ暗な空に数え切れないほどの星がきらめいています。
「まだ大丈夫かな?」
「ええ。大丈夫よ。」
「…そっか。」
翔子は小走りで私に駆け寄ってきて、
私の手をぎゅっと握りました。
「そろそろ帰ろっか?」
「ええ。そうね」
あまりのんびりとはしていられません。
ですから。
私と翔子は龍馬と天城君に振り返って、
お別れの挨拶をすることにしました。
「それでは、また明日。」
「ばいば~い!また明日ね~♪」
私は一礼して、
翔子は元気良く手を振っていました。
「ああ、またね。」
「………。」
龍馬は返事を返してくれましたが、
天城君は目を伏せるだけでした。
…まだまだ時間がかかりそうですね。
翔子の前途は多難そうですが、
今は焦っても仕方ありません。
二人に見送られながら、
翔子と二人で帰宅することにしました。
「早く帰ろ~!」
笑顔で歩き出す翔子に微笑んでから、
私も歩きだします。
そんな私達に。
「気をつけて帰るんだよ」
心配してくれる龍馬の声が届きました。
「龍馬もね~!」
翔子は後ろを振り返って返事を返しましたが、
私は龍馬に微笑んだだけでひとまずこの場をあとにしました。




