表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
第1部 <A Love Story> : Prologue
2/185

魔導共和国

極力、誤字脱字が起きないように心がけているつもりなのですが、

もしも読み難い部分があったらごめんなさいです。

さてさて。


まずは挨拶からかしら。



色々と気になることはあるかもしれないけれど、

先に自己紹介をしておくわね。



私の名前は米倉美由紀よねくら みゆき


年齢は24歳。


2月14日生まれの水瓶座みずがめざよ。


職業はまあ、国家公務員って思ってもらえばいいわ。


魔導共和国まどうきょうわこくの代表を務めているから。



…え?



魔導共和国が何かって?


それは今から説明するわね。



まず、この世界には7つの大陸があると言われているんだけど。


その中の一つ。


アステカと呼ばれる大陸の南部に魔導共和国があるの。


世界地図の中心に位置する広大な大陸で、

主に3つの地域に分けられているわ。



雪原地帯と呼ばれる北部。

湿原地帯と呼ばれる中部。

山岳地帯と呼ばれる南部。



こんな感じで3つの地域に大別されていて、

大小合わせて26もの国が存在しているのよ。


その中の一つに。


私が代表として活動している《ファンテリナ魔導共和国》と呼ばれる魔術師の国があるの。



詳細な説明はあとでするけれど。


地図上では大陸南部の山岳地帯。


その中でも最南東に位置しているわ。



広大な大陸の片隅だから、

一言でいうなら辺境ね。


もしくは秘境とも言えるかしら。



前人未踏とまでは言わないけれど。


国土の大半が荒地か山脈という極端な立地のせいで、

長年放置されていた地域だったのよ。



だから、というわけでもないんだけど。


良い意味で言えば自然豊かな大地で、

悪く言えば田舎を通り越した僻地って言う感じでもあるわ。



…でもね。



それでも大陸の最南東というだけあって、

東側と南側は雄大な海に面しているから利便性はそこまで悪くないはずなのよ。


しっかり港を整備してるから漁も出来るし、

物資の運搬も出来る。


まあ、西側と北側は他国との国境になる険しい山脈に囲まれているから、

徒歩で隣国に行くのはなかなか大変なんだけどね。



そのせいもあって他国との繋がりが少なくて、

閉鎖的な国になってしまっているのは事実でしょうね。



と言っても、別に鎖国してるわけじゃないわよ。


したいとも思わないけど。


単に周りの国に相手にしてもらえないくらい小さな国なのよ。



仮にも国家の代表である私がこういう言い方をするのはどうかとも思うけれど。


周辺のどの国も興味を持たないくらい僻地の秘境と言えばわかってもらえるかしら?



領土的価値は下の下。


わざわざ実効支配するほどの価値がないと思われてしまうような土地なのよ。


そういう場所だから。


発展途上国と言うことさえおこがましく感じてしまうくらい超弱小国家なのは認めるわ。



…だけど。



ほとんど人の手が加えられていなかった辺境だからこそ、

自然が豊かでとても穏やかな国でもあるの。



長い年月をかけて地道に開拓してきたおかげで今では自給自足ができる程度には安定しているし、

比較的温暖な気候と手つかずだった資源のおかげで少しずつではあるけれど着実に発展もしているわ。



まあ、まだまだ国家としての規模が小さいうえに他国との繋がりが薄いこともあって成長の遅さが欠点ではあるんだけど…。



それでもね!



特筆すべき点が一つだけあるの。


これこそが唯一の自慢と言っても良いくらいよ。



…それはね。



『魔導共和国』の名前が示す通り、

この国は魔術師が治める国家であるということよ。



もちろん魔術師は世界中にいるんだけど。


魔術師の国はここにしかないわ。



私がいるファンテリナ魔導共和国以外に、

魔術師が統治する国は存在しないの。



他にはないのよ。


だからこその自慢なの。



『魔術』



それは心の思うままに奇跡を起こし。


戦闘能力にも優れ。


あらゆる怪我を治療できる。



そんな才能を持つ魔術師達が自らの才能を発揮するために国家として独立を宣言したのが魔導共和国なのよ。



…なんだけど、ね。



さっきも言ったけど。


残念なことに魔術師の国は他には存在していないの。



魔術の歴史はまだまだ浅くて、

世界全体で見てもほとんど浸透してないっていうのが現状だからよ。



…え?



どうして、魔術が普及してないのかって?



その理由は様々あるんだけど。


最も大きな理由は『魔力の有無』という点でしょうね。



魔力がなければ魔術は使えないわ。


魔力がなければ魔術師になれないの。



それなのに。



魔力を持って生まれてくる子供の数はごく少数でしかないのよ。


両親が魔術師同士であれば、

生まれてくる子供が魔力を持ってる可能性は高いんだけど。



そうでなければ数百人に一人って感じかしら?



千人に一人…まではいかないにしても、

それに近い数字ではあるでしょうね。


小さな町や村なら魔力を持って生まれる子供は一人いるかどうか、

と言えばどれくらい少ないか分かってもらえるかしら?



もちろん魔力を持つ人達の存在は遥か昔から確認されていたわ。



だけど、ね。



魔力持ちが魔術師として認識されて世間一般に広まってきたのはここ50年程度の話でしかないのよ。



だからそれ以前のことはまあ、

あまり言いたくはないけれど。


悪魔付きと呼ばれたり、

化け物扱いされてきたっていう悲しい歴史があるの。



そしてそれは決して過去の話というわけではないわ。


今でもまだそういった風習が残っているからよ。



そういう悲しい事情があってね。


魔術はまだまだ歴史が浅いの。



今はまだ一般的には普及してないし、

世界中の人々に受け入れてもらえるようになるまでには長い時間がかかるかもしれないわ。



まあ、誰だってそうでしょうけど。


知らないものを受け入れるのって難しいことなのよ。


その気持ちは私だってわかるわ。


誰だって『知らない』ものは怖いの。



でもね。


それでも魔術が便利なのは間違いないと思ってる。



土地の開拓はさくさく進むし。


怪我をしてもすぐに治せる。



それは間違いないからよ。


間違いないんだけど…ね。



だけど、魔力はそれ自体が他者を殺せる力を持っていることも事実なのよ。



例え魔術としての形を持たせなくても、

魔力自体が人を殺せるほどの力を持っているの。



願うだけで人を殺せる力。


そんな力を持つ存在がすぐ近くにいるとしたら?


誰だって恐怖を感じるでしょうし、

近づきたくないって思うはずよね。



だからこそ『魔力』という名前が付けられたのかもしれないわ。



…だから。



だからかつて魔術師という名前が浸透していなかった時代。


魔力を持つ人達は悪魔の子や忌み子と呼ばれて、

多くの人々から呪われた存在として扱われてきたのよ。



そういう扱いもあってね。


悪魔払いを生業とする人達が次々と世界中に現れたの。


教会の聖職者はもちろんのこと。


風水師や祈祷師を含む陰陽師(おんみょうじ)と呼ばれる能力者を抱える国が圧倒的に増えてしまったのよ。


そうしなければ対応できないと思われてしまうくらい、

魔術と呼ばれる力は未知の存在として恐れられてきたということでしょうね。



そしてその流れが現在でもまだ受け継がれているわ。


魔術は悪魔の呪いだと信じている人達が、

今でもまだ世界中にいるからよ。



それを仕方がないとは言いたくないけれど。


一度広がってしまった負の印象はなかなか消えないわよね。



多くの人々に受け入れてもらえないという悲しみが今もまだ続いてるの。


そういう歴史的な流れこそが、

魔術が普及しなかった最大の原因かもしれないわ。



…だから、だからね。



そういった経緯があるせいで、ね。



事実がどうかには関係なく。


呪われた存在だと思われてしまった魔術師達は今も各地で迫害を受けているのよ。



誰にも受け入れてもらえずに。


住む場所も。


生きる権利すらも奪われてしまっているの。



ただ魔力を持っているというだけの、

それだけの理由で悪魔とみなされてしまったから。



それだけの理由で、ね。


人として受け入れてもらえなくなってしまったの。



その結果として。



世界中で行き場をなくした魔術師達が各地から逃げるように寄り集まって出来たのが、

この国の原型となる魔術師の村だったというわけ。



だから当初はね。


本当に小さな小さな集落から始まったらしいわ。



この地に流れ着いた数組の家族が寄り添いあい。


各地から徐々に寄り集まり。


いつしか集落になったそうよ。



それからも少しずつ人口が増えて。


集落から村へ。


村から町へ。


時間をかけて規模を大きくしていったらしいわ。



そうして十数年にも及ぶ長い年月をかけて辺境を開拓し続けるうちに、

国と呼べるくらい大きく成長していったのよ。



世界各国からの難民。


その集団が流れ着いた辺境。


それがこの国の始まりなの。



もちろん私はまだ生まれてなかったから、

どんな苦労があったのかなんて知らないけどね。



まあ、詳しいことは知らないけれど。


それでも住む場所も何もない辺境を一から開拓するのはとんでもなく大変だったと思うわ。



その苦労だけは心から賞賛したいと思ってる。


少なくとも私なら面倒でやりたくない…って、

まあ、そんな個人的な感想なんてどうでもいいわよね。



…私の意見は置いておくとして。



小さな集落から始まり。


約50年の月日をかけて大きくなったこの国にはね。


現在では数え切れないほど多くの魔術師が在住しているわ。



その数は推定で30万人って言われているそうよ。


国全体の総人口は100万に届かないくらいかしら?


常に難民の流入が起きているから、

正確な数字は分からないんだけど。


各町の戸籍情報からその程度の人数が集まってると考えられてるみたい。



もちろん全国民が魔術師というわけじゃないわよ。


誰もが魔力を持ってるわけじゃないから一般人のほうが多いの。



さすがにね。


難民として流れ着く魔術師が多いとは言っても、

その家族まで全員が魔術師というわけじゃないからよ。


だから魔術を使えない一般の人も沢山いるの。



そもそもこの国で生まれた子供だって全員が魔力を持ってるわけじゃないし。


結果的に魔術を使えない人のほうが多くなるのは仕方がないわよね。



それに魔術師としての実力には個人差があるから、

全ての魔術師が優秀と言えるわけではないわ。



例え魔力を持って生まれたとしても、

ちょっとした炎や軽微な風しか生み出せない魔術師も数多く存在しているからよ。



それでも数だけでいえば一国の軍隊と争える戦力なのは間違いないでしょうね。



一応、数よりも質で絞るなら2、3万ってところかしら?



全体の1割程度でしかないけれど。


実際に他国の軍隊と衝突して撃退に成功したっていう戦歴もあるそうよ。



私はまだ経験してないけどね。


お父さんがまだ若かった時代にはそういうことがあったって聞いてるわ。



大体、今から30年くらい昔の話らしいけどね。


その当時もまだ生まれてなかったから詳しいことは知らないけれど。


周辺国と結構大きな戦いがあったそうよ。



まあ、はっきり言えば戦争ね。



数か月に及ぶ争いだったらしいけど。


お互いに大きな被害が出てしまったことで一時休戦になって、

そのまま現在まで睨み合ってるっていう状況みたい。


そのなごりで今でも隣国とは仲が良くないんだけどね。


ひとまず今は無理に戦争を続けるつもりはない様子だから不干渉状態になっているわ。



単に無視されてるだけかもしれないけれど。



…って、こんな暗い話はもういいわよね。



今はこの国の説明よ。



およそ50年の年月をかけて。


徐々にではあるけれど。


多くの魔術師が国内に定住し始めたことによって人口は激増。


日夜蓄積されていく魔術の知識や技術を後世に伝えることで魔術そのものも発展してきたわ。


おかげで今ではどの町でもそれなりの防衛力を誇れる状況にまで至っているのよ。



実際に戦争を経験してる町は少ないけどね。


それくらい強力な戦力を抱えることによって、

周辺諸国からの侵略や圧力を防ぐことが可能になっているのも事実なのよ。



まあ、力には力を、って感じではあるけれど。


戦える力があるからこそ、守り抜けるものもあるの。



…残念だけど、どうしてもね。



綺麗ごとだけじゃ、片づけられない問題ってあるのよ。


話し合いだけじゃ解決できない問題なんて山のようにあるの。



決して望ましいことだとは思わないけれど。


武力でしか語り合えない状況だってあるのよ。


そんな状況だからね。


なかなか周辺国との関係が改善出来ずにいるんだけど。


こればっかりはどちらが悪いとは言えないわ。



戦争なんて起きないのが一番なんだから。


平和でいられるのなら軍事力も必要なのよ。



実際問題。


現時点で大きな争いはないし、

戦争に発展する様子もないわ。



…まあ、今は、だけど。



あくまでも現時点での話に過ぎにないし、

これから先がどうなるかなんて誰にも分からない。


独立を宣言して魔導共和国と名乗ってはいるけれど。


まだまだ『国』とは名ばかりでしかないし、

そもそも周辺諸国からは国家として認めてもらえてないしね。



元々、行き場のない魔術師達が寄り集まって生活していただけの小さな村だったのよ?



そんな小さな村落を周辺の国の人々が皮肉を込めて魔術師の国と蔑んだことが始まりにすぎないの。


そういった経緯があるから最初から国家として活動してたわけじゃないわ。


だけど周辺各国から目をつけられてしまった以上は仕方がないわよね。


何もしなければ滅ぼされてしまうから。


自分達の身を守るためには立ち上がるしかなかったのよ。



自分達の住処を守るために。


魔術師としての尊厳を守るために。


各国との話し合いのために『共和国』として独立を宣言することにしたの。


そうしなければ交渉にならないからよ。


他国と交渉するにあたって、

村や町単位では話にならないわ。


対等な関係による交渉を求めるためには同じ舞台に立たなければ話にならないから。



だから数週間に及ぶ協議によって共和国に相応しい国名として『独立』という意味を持つ古語であるファンテリナと名付けて、

新興国『ファンテリナ魔導共和国』として名乗りをあげたのよ。



そうして独立宣言をしてからおよそ40年。


様々な外交問題はあったみたいだけど。


共和国は今でもまだ存続しているわ。


滅びることなく続いているのよ。



まあ、魔術師の国という根本的な問題によって問題は山積みなんだけどね。



残念ながら隣国との国境は封鎖されてしまっているし、

無理に山脈を越えようとすれば領土侵犯と判断されて拘束されてしまう。


だからと言って海を越えて渡航しようとすれば海賊行為とみなされて攻撃を受けてしまうわ。


そういう現実もあって、

実際には独立というよりも隔離された感じすらあるんだけど。



それでもね。


国家として認めてもらえない状況が続いていたとしても。


みんなで必死に国内を開拓して。


少しずつ生活範囲を広げて。


農業や漁業によって最低限の生活を維持する日々を続けているの。



だからまあ。


他国に対して不満を感じる部分はあるけれど、

今はそれでも仕方がないと思うのが実情かしら?



国家としての独立を宣言したとしても、

本質的には難民の寄せ集めにすぎないから仕方がないわよね。


そもそも政治に関しての知識や才能を持つような優秀な人材なんているはずがないし。


言い訳に聞こえるかもしれないけれど。


知識も経験もない状況で国造りをしようと思ったら並大抵の努力では難しいと思うわ。


はっきり言って失敗することのほうが多いはずよ。



だけど失敗を責めることなんてできないわよね?


みんな初心者なんだから。


最初から上手くいくはずがないし、

失敗を重ねて経験を積んで少しずつ成長するしかないわ。



だから時間はかかってしまったけれど。


独立を宣言してからおよそ10年。



国内の町と村の数が20を超えるくらい人口が増加してきた頃になって、

ようやく指導力に優れる人達が出てきたのよ。



その時に選ばれた人物が初代魔導共和国代表となる鞍馬宗久くらま むねひさという男性で、

軍人としては突出した才能を持っていて、

戦闘能力や指揮官としての才能は誰よりも優れていたみたい。


共和国が誇る優秀な指導者としてその名を馳せたそうよ。



…あっ、先に言っておくけど。



当時、私はまだ生まれてないからね?



だから具体的な説明は出来ないわよ。


あくまでも伝え聞いた話しか出来ないわ。



だからまあ、細かい説明は省力するとして。



国家として不安定な状態にあった共和国の政治体制を磐石なものとするために。


軍律を定めて国境の防衛能力を高めつつ、

国内の発展に尽力を注いだ実績からこの国の守護神とも称されるほどの人物なの。



それくらい優秀な人だったんだけど。


15年間ほど代表として活動した後に、

軍の指導を目的として表舞台から身を退く道を選んだらしいわ。



言うなれば引退ね。


勇退とも言えるけれど。


代表として活躍するよりも、

軍人として活動したかったみたい。



その辺りの理由に関してはそうせざるを得ない事情があったと思ってくれればいいわ。


ちょっと色々と問題があってね。



政治よりも軍の強化が最優先となる案件があったのよ。


そのころ私はまだ生まれたばかりの赤ん坊だったから、

最終的にどうなったのかは知っていても当時どうだったのかまでは知らないわ。



ただ、その問題は今でもまだ続いているからいずれ説明する時が来るでしょうね。



…今はまあ、止めておくわ。



話し出すと長くなるから。



とりあえず鞍馬宗久が引退したことで後継者として2代目に選ばれたのが新堂兼成しんどうかねなりという老人よ。


彼は判断力と決断力に優れる人物で、

鞍馬宗久の参謀として長年活躍していたという実績もあったみたい。



ただ、私が物心つく頃にはすでに亡くなっていたからどういう人なのかは全く知らないわ。



一応、伝え聞いた話だと魔術師としての実力は鞍馬元代表に比べて劣るものの。


政治面においては他の追随を許さないほど優秀な人物だったそうよ。



彼の功績によって国内の各町はさらなる発展を遂げて、

自給自足率が100%を超えるという政治手腕を発揮してみせたらしいわ。



…って、100%超えなのよ!



これって本当に凄いと思わない!?


だって、元々が未開の辺境だったのよ?



開拓するだけでも一苦労なのに、

年間を通して食料を安定させるなんて神業としか思えないわ。



なのに。


彼が代表として活躍した期間は短かったの。


たった5年の活動の末、

年齢による引退を表明してしまったからよ。



才能があっても年齢には勝てないっていうのはもったいないわよね。


まあ、人生ってそういうものなのかもしれないけれど。



惜しまれながらも次の代表が選出されて、

3代目の代表になったのが米倉宗一郎よねくらそういちろうという人物。



まあ、私のお父さんなんだけどね。


父さんの魔術師としての実力は歴代最強と称されるほどだったわ。



娘の私が言うのも恥ずかしいけれど。


史上最強と言っても過言ではないでしょうね。



戦闘に関する実力は他を圧倒的に凌駕しているし、

天才っていう言葉は父さんのためにある言葉だと思ってる。



全戦全勝、無敗の戦鬼。



その上、政治手腕も有能で、

若い頃に大陸中を旅したという経験から外交手腕は誰もが感嘆するほどだったわ。



娘である私から見ても自慢できる父さんだと思ってるし、本当にすごい人なのよ。



実績面で言えば、険悪と言えるくらい対立関係にある周辺諸国と停戦協定を結ぶことに成功しているし。


大陸中の魔術師達を保護して国内に避難させるために、

非公式ながらも各国に魔術師ギルドを設置して共和国の活動地域を少しずつ拡大していったの。



そういう下地があるからこそ、

共和国は存続してると言えるでしょうね。



だから、もしも父さんがいなかったとしたら…。



たぶん今頃、共和国は戦火に見舞われてたかもしれないって、本気でそう思っているわ。



そんなふうに思ってしまうくらい、

父さんの存在は大きかったのよ。



…出来ることならね。



1日でも長く代表を続けていて欲しかった。


だけどね。


残念なことに、

それができなくなってしまったのよ。



原因不明の病によって体調を崩してしまったせいで、

寝込んでしまう日々が多くなってしまったの。


病気のせいで、

まともに動けなくなってしまったのよ。


その結果として、

父さんも引退を余儀なくされてしまったわ。



多くの人々に惜しまれていたけれど。


病気を理由に引退してしまったのよ。



娘の立場としてもね。


心配だったし悲しいことばかりだったけれど。


それでも。


今すぐに命がどうこうという危険性がなさそうなのは唯一の救いだと思っているわ。


父子家庭だったっていうのもあるけどね。


たった一人の家族だから、

少しでも長生きしてほしいと願っているのよ。


だけど、薬も魔術も効かないせいで体調は悪化する一方なの。


日常生活はなんとかなるとしても、

激しい運動は医者に止められているし、

旅行や戦闘なんて到底無理な状態になってしまっているわ。


もちろん今でも国中の医師が治療方法を研究してくれているし、

どうにかできないかと思って私だって調べ続けてる。



それでもね。


どれだけ調べても病名すら特定できないの。



そういう事情もあってね。


約10年の活動を終えた父さんは4代目に後を託したのよ。



…って、言っても私なんだけどね。



様々な諸事情によって共和国の代表は入れ替わりを繰り返してきたんだけど。


現在では私が4代目の代表として奮闘しているところなの。



これでも代表になる以前から国内最大の港町の代表として活動してたから、

政治とは全くの無関係というわけではないわ。



ひとまず3代目として活躍したお父さんの娘であることと、

魔術師としては引退したお父さんに次ぐ実力者という理由で私が4代目に選ばれたのよ。



一応、歴代の代表者の中で最年少の就任だったりするわ。



それでもね。


ちゃんと周りからは駆け引きに優れた有能な人物だと認めてもらっているのよ。



まあ、良くも悪くも策士(詐欺師)って言われるんだけど。



持って生まれた話術という才能によって、

私の残した功績は非常に大きいって高く評価してもらっているの。



そんな私のこれまでの功績をざっと説明するならこんな感じかしら。



1・優秀な人材を的確に配備して未開地域の開拓を短期間で完了させたこと。


これによって国内全域の探索が完了したわ。


そして共和国の完全な地図が完成したのよ。



2・鉱石の発掘や海山物の採取を安定させたこと。


このおかげで素材関係が安定して供給出来るようになったわ。


何をするにも物資は大事なのよ。



3・僅かながらも周辺諸国との貿易を行えるように知略の限りを尽くしたこと。


特にここが重要になるわ。


父さんのおかげで停戦協定を結んでいるとは言え、

敵対関係にある他国と貿易が出来るようになったという事実は非常に重要なのよ。



国内で手に入らない物資が貿易で手に入るようになったわけだから、

この功績は歴代最高の評価を受けているわ。



まあ、私としては両国の利益が出るように話を進めただけなんだけどね。



最終的には何故か共和国側のほうが有益な形で交渉がまとまったことが私の才能(詐欺?)という評価みたい。



…これって喜んでいいのかしら?



微妙なところよね。



でもまあ、こんな感じで代表として活動してるわけなんだけど。


ここで重要なのは国王ではなくて代表という部分かしら。



国王じゃなくて代表と名乗っている理由は共和国のほとんどの国民が他国からの難民だからよ。



この国で生まれて、この国を故郷として過ごす人達も今では数多くいるけれど。


もともとこの国は無人未開の辺境だったの。


最初からこの地に人が住んでいたわけじゃないから王族も貴族も存在しないわ。


もちろん階級という差別も存在しない。



これは当然のことよね。


元々が難民なんだから。


上下関係なんて存在するわけがないわ。



だから階級制度を否定している共和国では王制を認めていないの。



歴代の代表にしても、もちろん私もそうだけど。


あくまでも共和国の『外交代表』という一種の役職でしかないと定めているのよ。



だからこそ年齢よりも実力が優先されているんだけどね。



ただまあ、残念なことに共和国の代表と名乗っても若さのせいで他国のお偉いさん達には信じてもらえないことが多かったわ。


各国との対話において、若さを理由に見下されることが多かったのも事実なのよ。



それでもね。


私は結果を出し続けたわ。



お父さんを凌ぐ天性の話術(聞き飽きるほど詐欺師ってよく言われる)で、

共和国の名を広めて各国と交易が行えるように話をつけたの。


その政治手腕こそが私の実績であり、

現在でもまだ代表として活動し続けられている最大の要因なのよ。



…あ、でも、一応誤解のないように言っておくけれど。



私自身は別の人物を代表に推薦したわよ。



自分で立候補するほど自意識過剰じゃないし、

進んで面倒な役職を受けようとは思わないしね。



それでも多数決の結果によって選ばれたことと。


特に断る理由もなかったから気楽な気持ちで引き受けたの。



その結果として。


寝る暇もないくらい膨大な量の事務処理や、

他国との利益関係をめぐる駆け引き等々。


色々と面倒な仕事を引き継ぐ事になってしまったけれど。


今のところ他の人に代われなんて言われたことは一度もないわ。



ちゃんと今も代表として頑張っているのよ。



そんな感じでね。


私が受け持つ国内での主な活動の一つとして、

『魔導学園』の理事長としての仕事があるんだけど。



…と、言っても。



これは共和国の代表としての仕事ではなくて、

本業というか港町ジェノスの知事としての職務なんだけどね。



特に外交問題がない限り、

共和国の代表として活動することがないから、

港町の代表という立場も継続しているの。


だから私の本業は知事のままなのよ。


正確に表現するなら知事兼外交代表と名乗るべきかしら。



共和国の代表に就任しても、

町の責任者という役職を失うわけじゃなくて兼任する形になるわ。



だから知事に就任してからはすでに2年の月日が流れているんだけど。


代表としての期間よりも知事としての期間の方が長いから、

一応大まかな要領は心得ているつもりよ。



今日だってね。


決まった時間に挨拶程度に学園に顔を出して、

ざっくりと様子を見るだけでいいはずだったの。



…だけど、ね。



困ったことに今日はそれだけじゃ終われないみたい。



『入学式から始まる新たな物語』



共和国全土を巻き込んで、

周辺各国にまで影響を与えることになる物語の始まりが、

この瞬間から紡がれてしまったから…。



過去の争いに関してもすでに別の物語として完結しているのですが、

この物語の前日譚的なお話になります。

そちらも一から書き直すつもりでいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ