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THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
199/1390

ことごとく

《サイド:美袋翔子》



理事長室を出たあと。


私達は4人揃って校舎を出たわ。


そして学園の中庭にたどり着いたの。



「ん~!やっと終わったわね~♪」



精一杯の背伸びをしてからため息を吐いてみると。



「ふふっ。そうね。」



私の行動を見ていた沙織がいつものように微笑んでくれていたわ。



「何だかあっという間だった気がするけど、とても長かった気もするわね。」



…う~ん。



確かに?



でもね。


こうして終わって見れば、あっという間だったかな?



まあ、どっちでも良いけどね。



だけど個人的にはあっという間だったと思う。



こんなにも時間の流れが早く感じたのは初めてかも?



…色々と思うことはあるけどね。



時間の流れが早く感じた一番の理由は、

総魔が私のところまで予想以上の速さで迫ってきたからかな?



あの時ほど時間の流れが怖いって思ったことなんて今までの人生で一度もなかったわ。



…でもね~。



それもまあ、今となっては良い思い出かな?



試合があったから総魔と仲良くなれたのよ。



もしもあの試合で逃げ出していたら?


総魔と向き合うことを諦めていたら?



きっと総魔に冷たい目で見られてたと思う。



たぶん。



試合の後に治療してもらうこともなかったんじゃないかな?


むしろ魔力を全て奪われて終わってたと思う。


そのあとの試合でもきっと。


沙織や真哉も容赦なく魔力を奪われてたんじゃないかな?



実際にどうだったかはわからないけれど。



もしもあの試合で逃げ出していたら、

今の私達は全く違う状況にいたんじゃないかなって思うの。



きっと総魔と対立する関係で、

総魔を困らせてたんじゃないかな?って思うの。



それでも総魔は気にせずに勝ち続けると思うけどね。



だけど。


それはそれでちょっぴり寂しい展開よね?



総魔と対立する関係なんて考えたくもないわ。


だけど、そう思うのはね。


命を助けられた恩があるからとか、

そんな理由じゃないわよ?



それも理由の一つではあるんだけど。


総魔に憧れてるから。


総魔と仲良くなりたいって思うの。



だから対立する関係にならなくて良かったって心から思ってる。



…それにね。



試合のあとも。


総魔のためにって考えて努力していたことが、

時間が過ぎるのが早かった理由かもしれないわ。



何気に結構忙しかったのよ?



一々説明して総魔に恩を着せるつもりはないけどね。



…でも。



総魔はどう思ってるのかな?


この5日間をどう感じてるのかな?



こっそり総魔の顔を覗き込んでみる。



実際には入学式当日は何もしてなかったから、

事実上たったの4日で頂点まで上り詰めたことになるのよ。



それがとっっても凄いことだと思うんだけど。


総魔の表情からは何も分からない。



総魔は何を考えてるのかな?



気になっちゃうわね。



だけど。



…どう話しかければいいのかも分からないのよね~。



ずばっと聞いちゃえれば話が早いんだけど。


否定的な発言を聞きたくないって思う気持ちもあって上手く話を切り出せないのよ。



嫌われたくないって思う気持ちがあるせいで色々と考え過ぎちゃうの。



だからかな?



どうしようか迷っていると。


総魔は私の視線に気付いてくれたみたいで、

ホンの少しだけ微笑んでくれたわ。



「…そうだな。僅か数日だったが良い経験が出来たのは確かだ。それだけでも学園に来た価値はあったと思う。」



うんうん。


端的な感想よね。


総魔らしい発言だとは思うわ。



だけど、ね?


そういう意見を聞きたいわけじゃないのよ。



別に間違ってはないけど、

もう少し私達の事にも触れてほしいなって思うの。


だから、一応、確認してみることにしたわ。



「それだけ?」



他にないか聞いてみる。


だけどなかなか思うようにいかないみたい。



「今はそれだけだ。色々と思うことはあるが、俺の目的はまだ果たされていないからな。全てが終わるまで過去を振り返るつもりはない。」



…ううぅぅ~。



そういうことを聞いてるわけでもないのよね~。



最初から気付いてはいたけど。


やっぱり期待した答えは返って来なかったわ。



でもでもっ。



それを言い出すのなら、

そもそも総魔の目的って何なの?って感じよね。



総魔が何を目的にしてるのかを私達は知らないのよ。



さっき理事長の質問に対して『復讐』って言ってたことは覚えてるけど。


だけどきっとそれも聞いちゃダメなんだよね?



聞いても何も答えてくれないんだよね?



多くを語らない性格とかそういうことじゃなくて。


多分、誰にも話さないんだと思う。



それでもね。



総魔の過去に何があったのかを知りたいって思うの。



…でもね。



聞いてはいけないことなんだって思うの。



誰にだって話したくないことはあるだろうし。


無理に触れればきっと、

総魔は私達から離れて行ってしまう気がするから。



…だからかな?



私だけじゃなくて、

沙織も龍馬も何も聞かなかったわ。


多分、二人も私と同じ事を考えてるんだと思う。



決して触れてはいけない話。


それは総魔の本当の目的。



知りたいという気持ちは大きいけれど。


決して聞いてはいけない話だと思うから、

だから私も我慢したの。



本当はどうしようもなく聞きたいけどね。


理性を振り絞って我慢したわ。



「…ねえ、総魔?」



話しかける私に総魔は視線を向けてくれる。


今はまだ、ちゃんと私を見てくれてる。



ただそれだけのことが嬉しいと思えるから、

これからもこういう関係でいたいと思うの。



「これからも総魔は学園に居るんだよね?」


「ああ、そうだな。そのつもりではいる。力を失ったということもあるが、それ以上に自分自身の本当の力を知りたいと思う気持ちもあるからな。」



…う〜ん。



その返事も私の期待とは違うけれど。


それでも今は良いと思えるかな?



だって総魔は学園にいるんだから。


どこにもいかないんだから。



「そっか♪それじゃあ、これからも一緒に居られるんだよね?」



期待を込めて尋ねてみたんだけど。



「…どうだろうな?」



私の期待にことごとく反して、

総魔はとても簡単な疑問を言葉にしてしまうのよ。



「今でこそ番号は近いが、それぞれに勝ち進めば進むべき会場は変わってしまうはずだ。」



わりと本気で聞きたくない言葉なのに。


あっさりと言っちゃうのよね~。



「今後も一緒ということはないだろう」



…うぅ~。


…それはそうなんだけど~。



そうなんだけど〜。


そんなの分かってるんだけど〜!


そういう話を聞きたいわけじゃないのよっ!



…うぅ~ん?



どう説明すれば良いのかな?


本気で悩んじゃうわね。



だからかどうかは分からないけれど。


悩む私の代わりに龍馬が総魔に話しかけてくれたわ。



「翔子が聞きたいのは番号がどうこうじゃなくて、こうしてみんなで集まって話をすることが出来るかどうか?っていうことだよ。」


「…ああ、そういうことか。」



総魔は私に視線を向けてくれてる。


だけどその目は何の感情も感じさせなかったわ。



優しさも、冷たさもないの。



「何も変わりはしない。今までと何もな。」



龍馬の質問に答えた総魔の言葉が何を意味するのかなんて、正直私には分からない。


今までと何も変わらないっていう言葉には

『どちらの意味』も含まれてる気がするから。



だから私にはどちらが正しいのかなんて分からなかったわ。



あまり人と関わる事を望まない総魔。


それでも時々、私達に微笑みかけてくれる総魔。



総魔はどっちの意味で、その言葉を口にしたのかな?



色々なことに疑問を感じるけれど。


視線を合わせるだけで何も言えなくなっちゃうの。



聞きたいけれど。


本当の事を聞くのが怖い気がするの。



だから今度はさりげなく沙織に視線を向けてみたわ。



沙織から聞いてくれないかな?って、

そんなふうに助けを求める視線を向けてみると。



「…大丈夫よ。」



私の気持ちに気付いてくれた沙織が、

私の代わりに総魔に話しかけてくれたのよ。



「ねえ、天城君。これからも…」



話しかける沙織に振り返る総魔。


その総魔に沙織は笑顔で問い掛ける。



「これからも、お友達でいられるかしら?」



仲良くなりたいと願う沙織の問い掛けに。



「どうだろうな…。」



総魔は少しだけ返事に悩むような表情を見せていたわ。



「俺には俺のやるべきことがある。友達かどうかは知らないが、進むべき道が同じであれば共に歩むこともあるだろう。」



相変わらず遠回しな表現だけど。


それが総魔の本当の気持ちなんだと思う。



残念だけど。


今はまだ友達って呼んでいいほど心を開いてないっていうこと。



総魔の言葉からはそんなふうに感じてしまったわ。



だけど。


だけどね。



一緒にいることを拒むつもりもないと思うの。


だって、今までの総魔なら遠慮の欠片もなく『迷惑だ』って言い切ってたはずなのよ。


だけど今は違う。


私達がいることを拒絶もしなかったの。



だから。


だからね。



こうなったら頑張るしかないよね?



気合いを込めて。


心の中で誓ったわ。



…私の目標は総魔の心を開かせることよ!



総魔に心から友達だって言わせたいし。


ちゃんと私達の事を見てもらえるようになりたいの。



そしてこれからも私達と一緒にいる事が楽しいって思ってもらえるようになってほしいの。



…そんなふうになれればいいな〜。



それが今の私の正直な気持ち。


だからその為に頑張ってみようと思うの。



そして。


そして、いつか。



いつかは『総魔の彼女に〜♪』



なんていう気持ちが…ね。



無い事も、無い事も、無い事も、無い事も、無い事も、無い事も、無い事も…。



…無いんだけどね~。



だけど、そこまでは望まないわ。



…というか、今はまだ望めないよね?



魔術師としての実力だけは総魔に認めてもらってるけれど。


一人の女性としては全っ然見てくれてないと思うから。



だからまずは…『お友達』から!!



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