諦めない
《サイド:御堂龍馬》
…逆転、不可能?
その宣告が心の中を何度も巡る。
…確かに。
もう打つ手がないのかもしれない。
これまでの攻防によってかなりの魔力を奪われた実感があった。
そして今も聖剣からは魔力が奪われ続けている。
一度、均衡が崩れた以上。
ここから巻き返すのは難しい。
試合前の状態から考慮しても、
今の僕の魔力量はすでに半分を下回っているはず。
対する彼の魔力はそれなりの消費が感じられるけれど、
全体の3割も消費していないように見える。
…いや、違う。
今現在も吸収されている魔力を考慮すれば、
彼の魔力はほとんど変化していないのかもしれない。
場合によっては魔力の総量は万全な状態に近い可能性がある。
ここへきて圧倒的なほど魔力の量に差がついてしまったんだ。
…このままでは勝ち目がないっ!
とはいえ。
この状況から脱する手段さえない。
徹底的に突撃の姿勢を見せる彼がここで退くとは思えない。
この状態からでも迎撃に成功させない限り距離をとることさえ難しい。
…どうする?
残る魔力を聖剣に込めて、
魔剣との均衡を取り戻す。
その程度の考えしか思い浮かばないけれど。
仮に均衡を取り戻せたとしても、
まともにぶつかり合えばまず勝ち目はない。
…かと言って魔術の効果も期待できない。
地震を止めることさえできず。
攻撃に転じる余裕もない。
もうすでに打つ手がない状況だった。
…悔しいけれど。
翔子や沙織や真哉もこんな気持ちだったのかな?
今まで無敗で勝ち続けてきた自信が崩れ始める。
そして。
初めて『敗北』を実感した。
…いや、まだだっ!!
このままでは終われない。
そんな簡単には諦められない。
…まだだ!
「まだ勝負は決まってない!!!」
自分自身に言い聞かせて聖剣を握る手に力を込める。
最後まで諦めない。
その気持ちだけで無理やり魔剣を押し戻して立ち上がる。
地震の揺れなんて気にしてる場合じゃない。
どんな状況だろうと立ち上がるしかないんだ。
それが僕の役目なんだ!
毅然とした意志を見せつつ。
全力でエンペラーソードを構え直す。
「諦めない!!!」
「…面白い。」
最後に残った意地を見せると彼が微笑んだ。
「ならば見せてもらおう。その意志の力を!」
魔剣に魔力を注ぎ込んでいた彼が最後の力を解放してしまう。
「アルテマ!!」
究極の破壊魔術が放たれた瞬間に。
100を超える魔術の光がきらめいたように見えた。
…まずいっ!?
危機を感じた時にはすでに手遅れだったのかもしれない。
魔剣と聖剣を中心として、
会場全域に届くほどの広範囲に暴虐な爆発が発生したから。
その瞬間に試合場を守る防御結界が完全に吹き飛び。
検定会場の各地が原形を残さないほどに粉砕していく。
そして同時に全ての音が会場から消え去った。
しばらくの間、キーンと鳴り響く耳鳴りだけが残り。
それ以外の一切の音が聞こえなくなってしまったんだ。




