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THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
181/185

互角

《サイド:天城総魔》



『ガキイイン!!!!!!!!』



一際大きな斬撃音が試合場に響き渡り、

俺達はそのまま静止した。



…やはり、何かがおかしい。



この状況は不自然に思えるからだ。


試合前に想定していた状況からは僅かにだが外れている。



…どういう事だ?



なぜこの状況が起きているのかが理解できない。


当初の予想とはかけ離れた現象が起きているからだ。



…何故だ?



この状況は想定外だ。


圧倒的と思わせるほど格上の御堂龍馬と打ち合うことができている。


この事実が理解できなかった。



…やはり、何かがおかしい。



強引に魔剣を叩き付けて御堂の攻撃を押さえ込むことに成功している。


この状況には違和感しか感じない。



「どうした?徐々に動きが鈍くなっているぞ?」


「くっ!まだこれほどの力が残っているのか…。」



強引に押さえ込まれたことで焦りを感じる様子の御堂だが、

俺の目的はこのまま切り伏せることではない。


その前にどうしても確認したいことがあるからだ。


だから剣をぶつけ合う体勢のまま、

もう一度だけ御堂に話しかてみけることにした。



「一つ、聞きたい事がある。」


「…な、なんだい…っ?」



突然の質問に驚いた様子の御堂だったが、

そこで気を抜くようなことはせずに必死に押し返そうとしながら聞き返してくる。



あまり余裕があるようには見えないが、

ひとまず会話の意思を見せた御堂に問いかけてみることにした。



「…大したことではないが、少し気になっただけだ。」



かつて研究所で御堂の剣を見た時。


俺は正直に言って驚いた。


これほどの力が存在するのか?と。



そして同時に思った。


俺では到底敵わない力だと。


だが、今は違う。



「その剣からは研究所で見たの時ほどの威圧感が感じられない。まさかとは思うが、まだ手加減しているつもりか?」



この場において、

御堂の聖剣からは研究所で見ていた時ほどの

威圧感を感じなかった。



決して弱いとは思わないが、

恐れるほどには思えなかったからだ。



だから、一つの可能性として様子見で戦い続けているのかと考えた。



そしてその事実を確認するために問いかけてみたのだが、

どうやらその考えは間違いだったらしい。



「………。」



御堂が唇を噛み締めているのが見えてしまった。


こちらの問い掛けに対して、

はっきりとは答えないものの。


驚きと同時に屈辱を感じているような表情だったように思う。



…これは、つまり。



御堂は手加減していないということだ。


本人としては全力と言ってもいい攻撃をしているつもりだったのかもしれない。



だが、俺はそんなふうに感じなかった。



…だとすれば。



考えられる理由は一つしかない。



御堂が手加減しているのではなく、

俺が強くなったということだ。



実感はないがすでに学園1位の御堂龍馬に匹敵するだけの力を手に入れていたということだろう。


自他ともに認める最強の地位にいる御堂だが、

その地位にまで近付いていたのかもしれない。



その事実に御堂も気付いたのだろうか?



真剣な瞳で俺に視線を向けている。


そして悔しさをあらわにしながら、

ようやく口を開いた。



「悔しいけど、手加減なんてしてないよ。全力で攻撃してるつもりだからね。だけどそれが脅威だと感じられないのだとしたら、それはきみがあの時よりも強くなったということだろうね…っ。」



素直に俺の成長を認めてくれていた。


そして大きく息を吐いてから、

勢いよく後退して距離をとった。



「悔しいけれど。僕の力を見ても何も感じないほど、きみが強くなったということだよ」



苦々しげな表情で宣言する御堂の発言が俺の油断を誘うための虚言だとは思えない。


おそらく互いの実力を理解した上で認めてくれているのだろう。



「今の発言で確信したよ。確かに噂できみは測れないようだ。もう今のきみは噂以上だと思うからね。」



剣を構え直し、

互いとの距離を計っている。


これまでの会話によって警戒心を高めたのだろうか。



…情勢が変わったな。



実力はほぼ互角だが、

精神的にはこちらが優勢になったと思うからだ。



「………。」



微かな沈黙が訪れる中で、

今度は御堂から話しかけてきた。



「正直、驚いているよ。まさかこんなにも成長してるなんて思ってなかったからね。」



…それはお互い様だな。



御堂も驚いているようだが、

この流れは俺にとっても予想外だった。



今はまだ俺の方が実力的に劣っていると考えていたからだ。



だが、現実はそうではなかったらしい。



御堂の言葉を信じるのなら、

すでに同程度の力を持っているということになる。



…どうだろうか?



答えはまだ出ていないが可能性はある。


そうでなければこの攻防に納得出来ないからだ。



全てを支配すると宣言していた聖剣と、

あらゆる魔力を吸収する魔剣。



互いに反発する二つの力がぶつかり合ってもどちらの能力も発動しなかったのは互いの力が互角である証だ。



もしもどちらか一方の威力が高ければもう一方の力は飲み込まれてしまうはずだからな。



だがそうならずに斬り合う事が出来ているという事実は、

御堂の実力に追いついているという証にもなる。



「つまり、互角ということか。」


「そうだね。それ以外には考えられないだろうね」



御堂が素直に認めたことで、

魔剣に力を込めて改めて力を解放した。



ルーンの能力は互角らしい。


だとしたら。


決着をつけるためには全力で攻撃するしかないだろう。



…ここからが本番だ。



御堂を制するために圧縮魔術を展開する。



「ホワイト・アウト!エンジェル・ウイング!」



魔術名の宣言と共に二つの魔術を展開した。



俺を包み込むように霧の結界が生まれ、

背後には天使の翼が現れた。



…手加減はしない。



霧の中で魔剣を構える。


攻防一体の構えだ。



「ここからは本気で攻める!」


「…そうはさせないさ!」



俺の姿を見ていた御堂は聖剣を片手に持ち直して、

空いた右手をこちらに向けて突き出してきた。



そして一瞬の輝きが御堂の右手を包み込み。


御堂も圧縮魔術を展開してきた。



「ジャッジメント!!」



圧縮されていた魔術の開放。


初めて目にする魔術は神々しい光を放ち、

右手の先に幾十もの小さな星のきらめきが生まれて円を描くように回り始めた。



…何が起きる?



回転する光は徐々に円の大きさを増していき、

僅か3秒ほどで御堂の体を覆い隠すほどの大きさになった。



…光の奔流?



生み出された光にどのような能力が秘められているのかは分からないが、

意識よりも先に身体が危険を察していた。


直感とも呼ぶべき野生の勘が全力で危機感を訴えているからだ。



…これは、まずいか。



耐えきれるか?


それとも逃げるべきか?



一瞬の迷い。


そのせいで反応が遅れてしまう。



「さあ、準備はいいかな?」



…迎撃は間に合わないか。



尋ねてきた御堂の魔獣を静かに見つめる。


これから何が起こるのか?


予測ができない。



…耐え切るしかない!



魔剣を盾代わりにして防御の姿勢をとる。


その直後の御堂が攻撃を開始した。



「始めるよ。」



御堂の力が解放される。



「裁きの力!!!」



御堂が叫んだ瞬間に、

星のきらめきが一斉に降り注いできた。



…幾百?


…幾千!


…いや、幾万か!?



次々と降り注ぐ星のきらめきは極小ながらも膨大な数の力で降り注ぐ。



…くっ!?



破壊力だけで見れば聖剣の一撃には遠く及ばないだろう。


だが一つ一つの破壊力が上級魔術に匹敵するはずだ。



…弾速が桁違いだっ。



沙織の流星群に翔子の射撃速度を合わせたかのような高威力の物量攻撃。



無限とも思える散弾によって、

霧の結界が力付くで破壊されて吹き飛ばされてしまう。



…捌ききれないっ!!



御堂の攻撃は止まらない。


一瞬で結界を失い。


防御が低下した状態で振り注ぐ星の散弾によって防御が間に合わずに吹き飛ばされてしまった。



「づあああああっ!!!!」



…このままでは押し切られる!



連続でシールドを展開することで被害を最小限に止めようとしてみるものの。


展開と同時に突き破られる結界は全く意味をなさなかった。



…防ぎきれないかっ。



全ての防御結界が破られてしまった結果として試合場の端まで吹き飛ばされてしまった。



「ぐっ!?あああぁ…っ。」



試合場を取り囲む防御結界に激突する。


そして試合場に落ちたところでようやく御堂の魔術が途切れた。



「…くっ!?」



何とか体勢を整えて立ち上がる。


霧の結界によってかろうじて吸収出来ていた魔力を即座に変換して傷の治療を行う。



万が一のために回復魔術も圧縮していたために一瞬で治療を済ませることができたが、

この方法は連続では使えない。



強力な回復魔術を連続使用すればさすがに副作用を完全に押さえ込むことはできないからな。



すでに一度使用した以上。


次に使えるのは数時間後だ。



その時間を無視して使用すれば何らかの副作用によって体は無事でも意識を失ってしまうだろう。



…次はない。



切り札は使い切ってしまった。


圧縮魔術も使い切ってすでにない。



この状況は危険だが、

まだ危険から脱したとは言えないようだな。


御堂へ視線を向けてみると、

進行方向を変えた星のきらめきが再び降り注ごうとしているのが見えたからだ。



…どうやら核を破壊しなければ止まらないようだ。



即座に判断して再び霧の結界を展開する。



そしてもう一度突撃の構えをとる。



今度の霧は限界まで魔力を込めた魔法としての結界だ。



辛うじて消失を免れていた翼に魔術を保管しつつ。


自分自身にヘイストを繰り返す。



複数の魔術の連続展開。


その間に御堂の準備も整ってしまったらしい。



「徹底的に攻めさせてもらうよ!」



…ちっ!



間近に迫る星のきらめきを見つめながらも、

僅かな時間差で全ての準備が整った。



…次は押し切る!!



御堂目掛けて一気に踏み込む。



「行くぞ!」



宣言した直後に。



『ズンッ…』と、試合場の一部が沈み込んだ。



踏み込んだ勢いに負けたのだろう。


床に亀裂が入ったらしい。



それほどの勢いで加速しつつ。


星のきらめきの中を強引に突き進んでいく。



…目標は唯一つ!



御堂の右手で輝く魔術の核だ。


全力で魔剣の刃を突き出して、

星の散弾を突き抜けながら御堂に接近する。


その僅かな時間の間に。


星のきらめきと霧の結界が相殺し合う音が微かに響きわたった。



「…流石にこの勢いは止めきれないかな?」



即座に動き出した御堂が大剣を両手に構え直して接近する俺に刃を向ける。



だが、その程度の牽制で勢いを止めるつもりはない。


星のきらめきを強引に突破して、

魔剣に勢いを乗せたまま、

魔術の核となる光に対して突き立てる。



…一閃!



一撃で切り裂かれた核は小さな音を立てて星のきらめきと共に消滅した。



その直後。


こちらの隙を狙っていた御堂の聖剣が襲いかかってくる。



…上段からの攻撃か。



御堂の大剣が頭上から振り下ろされる。



…くっ!


…まだ間に合うかっ!?



必死に御堂の剣を受け止める。


かろうじて頭上からの一撃を受け止めることには成功したものの。


聖剣の勢いに負けて大きく体勢を崩してしまった。



「ちっ!さすがに重いかっ!!」



もちろん重量という意味ではなく聖剣の威力だ。


御堂の大剣を受け止めることはできたが、

片膝をつく結果になってしまった。



だが接近に成功したことで、

霧の影響下に入った御堂の魔力が急速に流れ込んでくる。


体勢的には不利だが、

魔力が手に入るのは好都合だ。



「逃げないのか?」


「…絶好の機会だからね。このまま押し切るよ。」



霧の結界の影響によって魔力を奪われる事は気にしないようだな。


身動きの取れない俺の隙を突いて、新たな力を発動してくる。



「これが、僕の最高の一撃だ!!!グランド・クロス!!!!」



御堂の言葉の直後に聖剣が光り輝くのが見えた。



…なっ!?


…これは、まずいっ!!



光を見た瞬間に背筋が凍りつくような寒気を感じた。



零距離と言える超至近距離で。


この状況からの回避は不可能だ。



押さえ込まれた状態で抵抗する余裕などあるはずがない。



「これが、僕の力だ!!」



御堂が叫んだ直後。


聖剣の形そのままの十字の光が放たれた。



…っ!


…防御が間に合うかっ!?



全力で防御結界を展開しようとした瞬間。


全身が光に飲み込まれてしまった。



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