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THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
178/185

最終決戦

《サイド:天城総魔》



ついに現れたか。



「初めまして、と言うのは変な感じだけど。改めまして、僕が御堂龍馬みどうりょうまです。」



…やはり、そうだったか。



自ら名乗りあげた人物を見て密かに微笑んでしまう。


おそらくそうだろうと思っていたからだ。



そして実際にこうして出会えたことで目の前に立つ人物こそが最後の生徒だったと確信できた。



「こうして直接向かい合うのは初めてだな。」



目の前に現れたのはルーン研究所で実験を行っていた人物だ。


実験室を破壊できるほどの実力を持つ生徒でありながら、

今まで一度も出会う事がなかった人物でもある。



…そもそも一度も名前を聞かなかったことが不自然だったからな。



誰もが御堂の名前を秘匿していた。


その理由が意図的なものか、

単なる偶然かはわからないが、

誰一人として御堂の名を出さなかった。



だからこそ。


実験室にいた人物こそが、

学園最強の生徒ではないかと密かに予想していた。



実験を見ていたのはほんの数分だけだったが、

驚くべき能力を見せてくれたからな。



だからこそ目の前にいる男が頂点に君臨する生徒だろうと考えていた。



そしてその予想は的中したらしい。


予想通り彼こそが学園1位の生徒だったからだ。



「俺は天城総魔だ」


「よろしくね」


「ああ」



挨拶をしながら右手を差し出してきた御堂の手を握り返す。


そして軽く握手を交わすと、

御堂は笑顔を浮かべながら話を続けてきた。



「お互いに相手のことは知ってるつもりだけど、こうして話をするのは初めてだね。」


「ああ、そうだな」


「きみの噂は色々と聞いてるよ。僅か数日でここまで来れたことは尊敬に価すると思ってる。」



…尊敬、か。



嫌味で言っているわけではないだろう。


沙織と同様に中立という雰囲気が感じられる。


悪意が感じられないということもあるが、

むしろ本心で褒めてくれているように思えるからだ。


だが今は、御堂の謙虚な発言を首を小さく横に振って否定しておくことにした。



「いや、運が良かっただけだ。」



もちろん運だけではないが、

そういう一面もあったのは事実だ。



実際問題として吸収という能力がなかった場合、

ここまで来れたかどうかはわからないからな。



自らの能力に気づいて才能を伸ばすことができたのは幸運といってもいいだろう。



「尊敬されるようなことは何もない。」



それが本心だったのだが、

御堂はそう思わなかったらしい。



「なるほど、噂通りの性格なようだね。」



…また噂か。



どういう噂かは知らないが、

翔子や沙織から聞いた話で判断しているのだろう。



「どんな噂かは知らないが、自分自身で判断したほうがいい。」


「もちろんそのつもりだよ。ちゃんと自分の目で判断するつもりでいるからね。」



噂を丸呑みにするほど短絡的ではないと言いたいのだろうか。


こちらに対して探るような視線を向けつつ。


御堂はたわいのない会話を続けてきた。



「とりあえず、翔子はまだ来ていないようだね。」


「ああ、そうだな。」



会話の流れで俺達の視線が会場の入口へと向いたが、

いまだに翔子の姿は見えない。


すでに約束の時間は過ぎているのだが、

それでも翔子は姿を見せなかった。



とはいえ。


このまま来ないということはないだろう。


何らかの事情で遅れているのかもしれない。


あるいは、わざと時間をずらしているのかもしれないな。



どこかで黒柳達の行動を警戒しているのか?


もしくは黒幕の動きを探っているのか?



そういった事情も考えられる。



もともと翔子は偵察を得意としている人物だからな。



戦闘よりも情報収集能力を重視している翔子なら、

会場周辺で暗躍していても不思議ではないと思う。



そんなふうに判断していると、

視線を戻した御堂と再び向かい合う形になった。



「それより、きみの準備はどうかな?」


「問題ない」


「そう?まあ、僕も特に何もないけどね」



こちらの状況を探るためだろうか?


俺の全身を眺めてくる御堂だが、

感じ取れる魔力の総量はかつて研究所で感じた時よりも数倍に膨らんでいるはずだ。


今の俺の魔力は御堂と同等か僅差で負けているかどうかという程度だろう。



さすがに魔力が最大値まで回復しなかったことが原因だが、

北条と戦った時に比べれば余裕がある状況だとは思っている。



「以前よりもかなり魔力が上昇したようだね。」



御堂も同じように判断したようだ。


魔力の総量だけでは実力は判断出来ないが、

それでも考慮する必要はあるからな。



…こちらからしてみれば。



俺の方が僅かに下回っているように感じている。



そのため。


北条との試合のように慎重に試合を進める必要があると考えているのだが、

それでも数日で追いつかれた事実には御堂としても思うことがあるらしい。



「さすがは吸収の能力者、というところかな?」


「…どうだろうな。」



否定はしないが、

現在の魔力が俺自身の総量というわけではない。


今日一日で大部分が回復したのは間違いないのだが、

研究所で大規模魔術を使ったことによって魔力を消費してしまったからな。



万全な状態とは言えないのが実情だ。



だからこそ沙織に劣る魔力の持ち主である御堂にも現時点では魔力の総量で負けているのだが、

本来の魔力が戻れば御堂を上回ることは出来るだろう。



…とはいえ。



魔力さえあれば試合に勝てるというものではないからな。


あくまでも目安でしかない。



「噂に惑わされないようにするんだな。」


「それは警告かい?」


「忠告だ。」


「なるほどね、ありがたく聞き入れておくよ。」



互いに本心を見せない駆け引き。


そんなふうに二人で話し合う最中に、

不意に沙織が声をあげた。



「あれ?翔子?」



呟く沙織の声を聞いて入口へと視線を向けて見ると翔子は受付付近にいた。


だが、そこまでだ。


受付からこちらに来る様子はない。



「どうしてこないのかしら?」



翔子の行動に疑問を感じた沙織が手を振って呼び掛けようとするのを御堂が遮る。



「いいんだよ、沙織。翔子には翔子のやるべき事があるんだ。今は自由にさせてあげよう。」


「…やるべき事って?」



沙織は試合後に倒れていたから知らないだろう。


北条の時にはその必要さえなかったからな。


翔子の行動の意味を知らないようだ。



…教えるべきだろうか?



その必要はないかもしれないが、

疑問を感じている沙織に伝えておくことにした。



「おそらく翔子の目的は受付の妨害だろう。」



俺達はまだ今日一度も格下からの挑戦を受けていない。


そしてここには数多くの生徒達が集まっている。



「試合の決着後に格下からの試合の申し込みが起きないように、受付で監視するつもりなのだろう。」



負けた側は戦闘不能で試合が組める状態ではないとしても、

勝った側は意識を失っていない限り試合を受ける義務がある。



そうなればどちらが勝ったとしても1位を死守するのは難しいだろう。


俺もそうだが、

御堂も挑戦から逃げるつもりはないだろうからな。


申請があれば受けるはずだ。


例え俺からの挑戦によってすでに強制力がないとしても、だ。



「俺達を守るために受付を封鎖しているということだ。」


「………。」



翔子の目的を知ったことで、

沙織は翔子へと視線を向けた。


そして。


何かを考え始めた。



「…翔子。」



本当なら間近で試合を観戦したいはずだが翔子にはそれが出来ない。


おそらく沙織が代わると言っても受け入れないだろう。


そんな翔子の気持ちを察したのだろうか。


沙織は御堂に話し掛けていた。



「…ねえ、龍馬。」


「ああ、行ってあげて。」



ただ呼びかけただけの行動だったが、

御堂も沙織の気持ちを察したようだ。


沙織は小さくお辞儀をしてから翔子に向かって駆け出していった。



「仲がいいことだな。」


「お互い大切な親友だからね。」


「なるほど。」



御堂も理解しているようだ。


翔子が我慢しているのに自分だけが留まる事は出来なかったのだろう。


覚悟を決めた沙織も試合場を離れた。


そして沙織と翔子の二人は受付の封鎖という強行手段の為に、

試合場から遠く離れた会場の入口から試合を観戦する事になった。



その結果として。



試合場に残されたのは御堂と俺だけだ。


作業を完了させた研究所の職員達も今は完全に姿を消している。



受付周辺にはいるようだが、

黒柳も含めた全ての職員達が入口付近にまで後退していた。



この広大な検定会場において、

会場内にいるのは俺と御堂の二人だけだ。


他には誰もいない。


すでに入口は解放されている為に帰る事が自由になったはずだが、

それでも誰一人として帰ろうとはしないようだな。



ここまで待たされた以上。


最後まで見届けるつもりなのだろうか。



多くの観戦者達の視線を浴びながら、

二人で試合場に足を踏み入れる。



今回も審判はいないらしい。


それどころか試合場周辺には誰もいない状況だからな。



試合の開始は二人の気持ち次第になるだろう。


試合開始の合図は互いの呼吸になる。



…最終決戦にはふさわしいかもしれないな。



それぞれに立ち位置を決めて向かい合う。


その瞬間に緊迫した雰囲気が会場内を埋め尽くしていく。



寒気さえ感じるほどの圧迫感が周囲に広がっていき。


静かな試合場にさらなる静寂が訪れる。



遠く離れた場所から試合を眺める観戦者達。


それぞれが試合開始を待ちわびる中、

試合場が防御結界に包まれた。



ここまで準備が整えばあとは戦うだけだ。


そしてそれは御堂も同じことを考えているだろう。



互いに口を閉ざし。


緊張すら感じる二人の手にルーンが現れる。



「さて、これから試合を始めるわけだけど、きみのこれまでの報告は受けているから魔剣の力も知ってる。だけどそれだと公平とは言えないからね。僕の力も紹介しておくよ。この剣の名はエンペラーソード。全てを『支配』する聖剣だ。」



俺の手には魔剣ソウルイーター。


対する御堂の聖剣はエンペラーソード。



…魔剣と聖剣か。



対極とも言える力だが。


だからこそ最終決戦にふさわしい戦いに思える。



「全てを支配する剣か、面白い。それが事実ならその剣で俺の魔剣もねじ伏せて見せろ」


「ああ、もちろんそのつもりだよ。」



互いに信じる武器を手に、

相手を制する戦いに身を投じる。



「行くぞ!」


「ああ、受けて立つよ。」



武器を構えて、

それぞれに最初の一歩を踏み出す。



「その力、見せてもらおう!!」



二つの剣による戦いが、ついに始まった。




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