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THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
175/185

未知のまま

《サイド:美袋翔子》



試合開始まで、あと1時間になったわ。


私は今、医務室にいるわけだけど。


時刻はすでに午後6時を過ぎてる。



「残り60分を切っちゃったわね~。」



もうすぐ最後の試合が始まるのよ。



「…どっちが勝つのかな?」



小さな声で呟いてみた。


別に誰かに返事をしてもらいたいわけじゃないんだけどね。


ただ、なんとなく言葉にしたい気分だったのよ。



「…もうすぐ、ね。」



時計から視線を逸らして、

眠っている真哉の様子を眺めてみる。



…う~ん。



相変わらず真哉は眠ったままで、

目覚める気配はなかったわ。



ず〜っと眠ったままなのよ。



…まあ、仕方がないのかな?



総魔との試合で全ての魔力を失っちゃったわけだしね。



自然回復を待つしかない状態だから、

今日や明日で目を覚ますことはないのかもしれないわ。



「こればっかりはね~。」



どうしようもないと思う。


他の生徒達と真哉は決定的な違いがあるからよ。


魔力の総量が桁違いだから。



私と比べたらそれほど大差はないかもしれないし。


沙織と比べたら劣るとは思うけどね。



それでも並みの生徒とは桁が違うわ。



一度失った魔力が完全に戻るまでにかかる時間は他の誰よりも長いはずなのよ。



だから真哉は目覚めない。


これから始まる試合を真哉だけは見れないのよ。



「…ねえ、それでいいの?」



真哉が知らない間に結果が出ちゃうのよ?



目覚めない真哉の寝顔を眺めながら独りで呟く。



「もうすぐ終わっちゃうのよ?」



この5日間、あっという間に過ぎていった気がするわ。



「…色々あったよね。」



眠る真哉に語りかける。


だけどそれは話を聞いてほしいわけじゃなくて、

ただ言葉にしたかっただけ。



「…ねえ。真哉ならどう思う?」



たった5日間の出来事だったけれど。



その間に総魔と出会って。


観察して。


話し合って。


戦ったのよ。



私も、沙織も、真哉も、そして龍馬もそう。



これから戦うことになるわけだしね。



長いようで短かった総魔の戦いがあと1時間程度で終わってしまうのよ。



思い返せばあっという間の出来事だったわ。



…まだ終わったわけじゃないけど。



それでも、ね。


それでも思うの。



間違いなく総魔が勝つって。


信じてる。



…ううん。



少し違うかな?



言い換えるなら、

総魔が敗北する姿が想像出来ないって言うべきかもしれないわね。



もちろん龍馬の実力は十分過ぎるほど

解してるつもりよ。



学園2位の真哉でさえ霞むくらいの実力の持ち主なんだから。


だから龍馬が弱いなんて思わない。



だけどね。


それほどの実力を持つ龍馬を知っているからこそ思うの。



それでも『総魔には届かない』って。



私からすれば圧倒的って言えるくらいの実力を持つ龍馬だけど。


龍馬が対するのは圧倒的どころか実力の全貌すら見えない総魔なのよ?



龍馬の実力は理解してるけれど。


総魔の実力は未知のまま。


それだけでも大きな違いがあると思ってしまうわ。



…それにね。



ルーンや吸収がどうこうという話ではなくて、

魔法を使いこなせるという事実が重要だと思うの。



沙織との試合で実証された魔法。


あれだけは誰にも真似できないわ。



私も、沙織も、龍馬でさえも、

まだまだ魔法は使いこなせないからよ。



はっきり言うなら不得意って言っても良いと思う。



魔術と魔法は根本的に違うものだから。



出来なくはないけれど、

出来るとは言えないって感じかな。



私も沙織も真哉も龍馬も、

みんなルーンは扱えるわ。



そしてルーンの力は魔法そのものと言えると思う。



込めた魔力によって威力が変動する力は魔法と言えるからよ。



魔術とは一定の魔力を消費して一定の効果を生み出す力だから、

これは誰が使用しても同じ結果になるけれど。


魔法は違うの。



込めた魔力の量や術者の能力によって大きく変化するから。


だから術者次第によって効果が上昇する事もあれば、

効果が低下する事もありえるのが魔法なのよ。



それでもルーンを『媒体』として魔術を発動した場合に限り、

私や沙織も魔術を魔法として発現する事が出来るのよ。



得意とする能力を持つルーンの力は当然、

術者にとって扱いやすい能力だしね。


得意な魔術であればルーンを媒体とする事で魔術を魔法として使用出来るの。



もちろん魔術のままで発動させる事も出来るけど。


それは術者の意志に応じてどちらにでも対応出来るということよ。



私で言えば金色の弓パルティアによって放つことの出来る光の矢は魔術でもあるし、魔法でもあるわ。



発動の手順はどちらも同じで『魔術』として使用してるだけ。


だけど、その結果が変わるのが魔法なの。



意識的に切り替えることでどちらとしても発動出来るけどね。



沙織の場合で言うと、

あらゆる魔術が適応されるんだけど。


ルーンを通して発動した場合のみ魔法と言えるわ。



だからルーンの力を借りなければ、

沙織といえども魔法を使えないのよ。



それは真哉や龍馬にしても同じ。



だけど、総魔だけは違うわ。



ルーンを媒体としなくても。


自分の意志で魔法を使用出来ているの。



これが私達との決定的な違い。


総魔だけは媒体に頼らないっていうこと。



それは試合以外でも実証しているわ。



私と沙織の怪我を治療した魔術。


あれもただの魔術ではなくて、

魔法として発動した力のはずよ。



本来なら蘇生魔術なんて存在しないから。



…まあ、さすがに死者を蘇らせることはできないとしても。



副作用を抑えて怪我の治療を行えるあの力は確実に魔法と言えるでしょうね。



魔術と魔法の違いは効果が変動するかどうかだから、

必ず同じ結果になる魔術と違って魔法は術者の能力に依存してしまうのよ。



だから私達には魔法が使いこなせない。


なのに。


総魔だけは自在に魔法を使いこなせてる。



その決定的な差。



それだけを見ても技術面においてはすでに龍馬を凌いでいると言えるわ。



だからこそ思うのよ。



…総魔は絶対に勝つ。



そして同時に目の前で眠り続けている真哉を見て思うの。



私にしても。


沙織にしても。


真哉にしても。



総魔に攻撃する事は出来たわ。



だけど、ただそれだけでしかないのよ。



総魔に攻撃することはできても、

総魔を追い込むことは出来なかったんじゃないかなって思ってしまうの。



…総魔は本当に全力を見せていたのかな?



隠していた力は全て見せたと思う。



でも、ね。



だからと言ってそれが全力であるとは限らないわよね?



ギリギリまで追い込まれた時にどんな戦いを見せるのかな。


そこまで実力を引き出せた人はまだ誰もいないんじゃないかな?



そう思うから、考えたくなるの。



次で最後になる龍馬との試合。


その戦いの中で総魔は全力を見せてくれるのかな?



龍馬の力がそこまで及ばなければ、

試合の結果は総魔の圧勝になってしまうわ。



でももしも龍馬の実力が総魔に迫るものだとしたら?


その時こそ。


総魔の真の実力が示されるのかもしれないのよ。



「…ねえ、真哉。あなたならどう思う?」



問い掛けてみたけれど。


質問に対して返ってくる言葉は、

いつまで待ってもなかったわ。



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