今日の日付
《サイド:米倉美由紀》
…うぅ~ん。
ここ数日、色々と考えることが多すぎて仕事が溜まりつつあるわね。
天城総魔に関してもまだまだやらなければいけないことがあるんだけど。
それ以前に知事としての業務も無視できないわ。
…一応、沙織の説得は出来たわけだし。
天城総魔のことだけを考えているわけにはいかないのよ。
そろそろ本業もやらないと、
学園の運営どころか町の発展が止まってしまうわね。
もちろん代表としての仕事も後回しには出来ないわ。
…はあ。
やらなければいけないことが多すぎて、
とても全てに手が回らない状況なのよ。
まずは優先順位を考えて仕事を振り分けないといけないんだけど。
机の上に溜まった書類を見るだけで溜息が止まらないわ。
それでも放置はできないから、
必要な書類を分類するために手を伸ばしてみる。
そうして書類に目を通そうとしたところで、
不意に『コンコン』と扉が叩かれたのよ。
「誰?」
「俺だ。黒柳だ」
誰が来たのかを問いかけてみると、
すぐに聞き覚えのある声が聞こえたわ。
…大悟ね。
それなら手を止める必要はないかしら。
「どうぞ、鍵なら開いてるわよ」
入室を促したことで扉が開かれる。
部屋の外にいた黒柳の姿が確認出来たわ。
「ここに来るなんて珍しいわね。どうかしたの?」
何か理由でもない限り、
なかなか研究所から出てこないのよ。
そんな大悟が自分から出てきたことに驚きながらも書類の整理を続けていたら、
室内に入ってきた大悟は歩み寄ってからすぐに一束にまとめられた報告書を差し出してきたわ。
「とりあえずこれを渡しておく。」
「ん?これは何?」
書類の見出しには
『拘束結界報告書』と記されているわね。
昨日研究所で受け取ったものと比較して、
それほど違わないように思えるんだけど。
…何か変わったのかしら?
よく見てみると作成日時の日付は今日に変わってるみたい。
だとしたら、今日作成した書類よね?
…ということは。
必然的に昨日見た報告書とは別物ということになるはず。
「何か変化があったの?」
直接天城総魔を実験台にしたとはいえ、
すぐに研究が完成するとは思っていなかったのよ。
だから。
次の大悟の言葉によって驚くことになってしまったの。
「実験が完成した。」
「…えっ!?」
突然の報告に驚いてしまったわ。
絶対に間に合わないと思っていたからよ。
それなのに。
突然完成したって言われたら驚くに決まってるじゃない。
「か、完成したのっ!?」
予想外に好転した事態によって自然と表情が緩んでしまったわ。
これまでは失敗続きだったけれど。
ついに運が向いてきたって思えたのよ。
「ついに拘束結界が完成したのね!」
「ああ。まだ多少の改善の余地はあるだろうが、大まかには完成したと言えるだろう」
大悟が説明を終えるよりも先に書類を奪うように手に取って、
一字一句漏らさないように全ての内容に目を通してみたわ。
…まあ、私は研究者でもなんでもないから。
書類を見ただけで全てを理解することはできないんだけどね。
それでも大体の概要くらいなら十分に理解できる、はず。
…で、まあ。
書類を読んでみた感想なんだけど。
確かに、これならって、私でも納得できる内容だったわ。
実験結果から導き出される結論として、
ほぼ100%と言ってもいいほどの効果が認められていたからよ。
そして対天城総魔用の拘束結界として使用可能であると書類には書かれているの。
「本当に通用するのね?」
確かめるように問いかけてみると。
「ああ、もちろんだ。」
笑顔を崩すことなく、
自信たっぷりに頷いてくれたわ。




