表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
159/185

制限時間

《サイド:天城総魔》



黒柳と共に行動し、

ルーン研究所の奥にある実験室に移動した。


ここは二日前にも一度訪れた事のある例の大部屋だ。


初めてルーンという物を目にして、

その能力に驚いた場所でもある。



…あの日の出来事は今でもはっきりと覚えている。



名前も知らない人物と、光を放つ聖剣。



あの時に感じた衝撃は今でもまだ忘れることができない。



…そう考えると、ここが始まりの地と言えるのかもしれないな。



ここでの経験が魔剣の誕生に繋がっているからだ。


あの時の驚きがなければ魔剣は作り出せなかっただろう。



それを思えば感慨深いものがある。



…だから、だろうか?



ここに来ようと思ったのは。


本当は実験の協力にするためではなくて、

この場所に来たかっただけなのかもしれない。



そんなふうにも思ってしまう。



…期待していたのは事実だろうな。



出来ることならもう一度、

見てみたいと思っていたからだ。



ここに来れば、

もう一度あの人物に会えるかも知れないと考えていた。



結果から言えば会えそうにはないものの。


それでもここにいるだけであの時のことを思い出すことができる。



…あの力こそ、俺が目指すべき目標だ。



この広大な実験室を破壊しかねない圧倒的な攻撃力。


その力に憧れる想いが確かにあった。



出来ることなら、

もう一度見てみたいと思うほどに。



…今回は無理だったが、いつか会えるだろうか?



出来ることなら全力で戦ってみたいと思う。



魔剣と聖剣。



どちらが上を行くのか。


その答えを知りたいと思っている。



…だが、今は。



ここへ来た目的を果たすことが優先だ。



…随分と集まったな。



現在、俺や黒柳を含めて数多くの人数が集まっている。


つい先程まで研究所には誰もいないのかと思っていたのが嘘のように慌ただしさを増した実験室。


数十人の職員が作業を行う様子をゆっくりと見渡してみた。



状況はあの時と酷似しているだろう。


違うのは今回の主役が名前も知らない人物ではなくて自分だということだ。



…この場所で実験を行うのは俺だからな。



その違いを思うだけで、

例の人物と同じ立場に立てた気がしてくる。


追いついた、と思う気持ちは気のせいではないだろう。



あの時は間違いなく手が届かないと思っていた。


あれほどの才能に勝てるわけがないと感じた瞬間を今でも鮮明に覚えている。



…だが、今なら。



近づけたと思う。



実際に戦ってみなければ答えは出ないが、

手も足も出ないと感じていたあの時とは状況が違うはずだ。



もしも今ここで彼と出会えたとしたら、

今回は迷うことなく勝負を挑むだろう。



…ようやく同じ舞台に立てた。



今なら戦うことに迷いはない。


そんなふうに思いを馳せながらゆっくりと室内を見回していると数多くの職員達が実験の準備を整えていく様子が確認出来た。



あの日と同じように実験の準備が進められている。


そんな職員達の様子を俺と同じように眺めていた黒柳が改めて話しかけてきた。



「さて、まもなく準備が整うだろう。ひとまずこれからの段取りだが、先程の打ち合わせ通りでいいんだな?」


「ああ、それでいい。特に変更はないからな。」



合流した西園寺も含めて、

黒柳と共に実験手順の再確認を行っていく。



「実験の進行は任せる。もちろん指示もそちらに委ねるつもりだ。」



とはいえ。


あまりのんびりはしていられないからな。


出来る限り手短にして欲しいとは思っている。



…一応、約束があるからな。



正確な時間を決めているわけではないが、

翔子と合流する予定があるからだ。


実験に協力するために黒柳達の指示に従うつもりではいるが、

長時間ここにとどまることができないことは前もって伝えておくべきだろう。



「このあと翔子と合流して最後の試合に関する打ち合わせを行う予定があるからな。協力を申し出ておいて途中で離脱するのは申し訳ないと思うが、俺がここにいられるのはせいぜい30分程度だ。その間はそちらの指示に従うつもりでいるが、時間になったら退室させてもらうことになる。」


「………。」



俺の出した条件に対して西園寺が不満気な表情を見せていた。


だが。



「ああ、それは構わない。」



黒柳は即座に了承してくれた。



「こちらとしては魔術の分析さえできれば十分だ。情報さえあればその後の実験は俺達だけで進められるからな。無理に強制するつもりはない。」



実験結果さえ手に入れば良いらしい。


強引に俺を引き止めようとはしなかった。


とはいえ。


黒柳とは違って西園寺は納得できなかったようだ。



「所長、それでは十分な調査結果が得られるとは思えません。魔術の特性と傾向を調べるためにはこちらの指示に最後まで従ってもらうべきです!」



満足できる結果が出るまで徹底的に調査を行いたいのだろう。


その気持ちは理解できなくもないが、

翔子との約束があるからな。


最後までつきあうことはできない。



「悪いが無条件で付き合えるほど時間に余裕がない。」



集合時間を決めているわけではないが、

あまり遅くなると昼食の約束が果たせなくなってしまう。


仮に遅くなったところで文句を言われることはないとは思うが、

一方的に役目を押し付けたうえに迷惑をかけることになってしまうからな。



「ここにいられるのは正午過ぎまでだ。遅くとも13時までには食堂に向かいたい。」



それ以上の妥協は難しいのだが、

西園寺としてはそれでもまだ納得できないらしい。



「それはそちらの都合でしょう?ここまで来て部外秘の情報を耳にした以上は最後まで実験に協力する義務があるはずです。」



どうあっても途中退場は認めたくないようだ。



…まあ、それも当然か。



現状では情報の持ち逃げに等しいからな。


最終的に時間を理由に退出するのは逃亡したと思われても仕方がないだろう。


だが、そう思わせないための方法が一つだけある。



「どうしても気に入らないというのなら、時間内に理論を完成させれば文句はないはずだ。」


「そ、それは、まあ、そうですが…。」



だったら心配する必要はない。


実験はすぐに終わる。



俺が考えた理論がどの程度の効果を発揮できるのか?


その答えはすぐに判明するからだ。



「魔術の証明を行うだけなら30分も必要ない。」



最初から情報を持ち逃げするつもりはないからな。


仮に魔術の証明が時間内に終わらなかったとしても、

最後の試合を行うまでの待ち時間は手が空いている状況だ。



「どうしても必要だと言うのなら昼食後にもう一度ここに来て協力するだけだ。」


「………。」



こちらが協力を約束したことで口論する意味を失ったのだろうか。


まだまだ不満そうな表情のままだったが、

それでも大人しく引き下がってくれた。



「結果さえ出せるなら異論はないわ。」



そういう結論に達したらしい。


そもそもここで口論している時間すら無駄だからな。



「…だそうだ。これで文句はないな?」


「もちろん文句などない。」



念の為に黒柳にも確認してみると、

黒柳は大きく頷いてから笑顔を見せた。



「きみが結果を出せるのなら、という条件はつくがな。」


「それこそ問題はない。」



魔術の展開に失敗するならともかく、

一度でも発動できれば結果は残るからな。


実験そのものは数分で終わるだろう。



「結果はすぐに出る。」


「ははっ。だったらすぐに始めよう。こうしている時間さえももったいないからな。」



ああ、そうだな。


残り時間は少ない。


口論している暇もない。



「それでは実験の主導権は西園寺君に任せる。」


「かしこまりました。」



黒柳が決断したことで西園寺も了承したようだ。



実験前に少々もめたが問題はない。


実験は必ず成功する。


すでに理論は出来上がっているからな。


あとは実際に魔術を展開して証明するだけだ。



…難しいことは何もない。



黒柳が考案した理論を組み直して改良した新理論を基にして魔術を展開する。


そして幾つかの方法を試して拘束結界を完成させる。



ただそれだけだ。


それだけで結界の証明はすぐに終わる。



…実験の内容は簡単だからな。



この場で実践して拘束結界を展開させるだけで良い。


結界の内部で魔術が使えなければ実験は成功となり、

結界の内部でも魔術が使えるようなら実験は失敗になる。


その結果次第で俺の考えた結界の有効性が明らかになるだろう。



「それでは俺達の準備も整えてしまおうか。」


「ああ、そうだな」



黒柳と共に実験場の奥へと向かうことにした。


もちろん西園寺も同行しているのだが、

西園寺は実験の指揮を執るために参加している。



黒柳は実験の指揮をとらない。


今回は黒柳自身が被験者になることが決まっているからな。


直接、指揮を執ることができないという理由がある。



そんな黒柳だが。


今は研究所の職員としての日々を過ごしているものの。


元は一流の魔術師だったそうだ。


自分自身で直接確認した方が話が早いという理由で自ら名乗り出ていた。



「さあ、始めようか。」



かつて光の剣を手にしていた人物が実験を行っていた場所に黒柳が立ち、

俺と向かい合っている。



「きみの成功を祈っている。」



結果を出すことを優先した黒柳がこちらをじっと見つめている。


その表情には恐怖も喜びも感じられない。


ただただ純粋にこちらの行動を見極めようとする研究者としての本能のようなものを感じさせる。



「準備はいいのか?」


「ええ、こちらの準備は整っているわ。」



俺のすぐ傍に控えている西園寺に問いかけてみると西園寺は真剣な表情で頷いていた。



「それなら問題ないな。」



一通りの実験準備が整ったことで黒柳も職員達に最終確認を行っている。



「防御結界の準備はどうだ!?」



即座に職員の一人が答えた。



「すでに完了しています!!万が一失敗して魔力が暴走したとしても、余波が室外に出る事はないと思います!」


「よし!次に観測班はどうだ!?」



次の質問には西園寺が答えた。



「すでに準備は整っています。ただ実験の内容が視覚では判断しづらい為、どこまで正確な観測が出来るのかは多少の疑問が残ります。」


「その辺りに関しては出来る範囲でいい。記録さえ残れば検証はいつでもできるからな。それでは今から実験を開始する!失敗時の危険性を考慮して各自十分に気を付けるように!!」



黒柳が指示を出し終えたことで全ての準備が整ったようだ。



「待たせたな。」


「いや、問題ない。」



残り時間はまだまだある。



「もう少し休んでいてもいいくらいだ。」


「そうか、そう言ってもらえるのはありがたいが、女性を待たせるのも失礼だろう?美袋君が怒り出す前に終わらせてしまうとしよう。」


「ああ、そうだな。」



翔子が怒るかどうかは知らないが、

今までの行動を思えば面倒なことになるのは間違いないだろう。



少なくとも、こちらの要求を叶えるために動いてもらっているからな。


機嫌を損ねるのは得策ではない。


遅くとも12時30分には研究所を出て、

昼食の約束を果たしたい。



「正午までに全てを終わらせる。」



黒柳は魔術を完成させるために。


そして俺は翔子との約束を叶えるために。


互いの目的を叶えるために、

それぞれに意識を集中し始める。



「魔術を展開する。覚悟はいいな?」


「ああ、いつでも構わない。」



…始めよう。



拘束結界を発動する為に、

覚悟を決めた黒柳に右手を向ける。



やるべき事はただ一つ。


黒柳の魔力を撹乱すること。


それだけだ。



黒柳が魔術を発動出来なければ実験は成功となる。


逆に言えば、黒柳の魔術を阻止出来なければ実験は失敗だ。



…問題ない。



魔力に干渉できれば実験は成功する。



それだけを考えながら右手に魔力を集中させると、

職員達の緊張感が実験室内に広がり始めた。



「いくぞ!」



こちらからの最終警告に黒柳は無言で頷いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ